121 ユダの回想~ユダとキリスト~
ユダは生前、敬愛してやまないイエス・キリストの使徒として活動を共にしていた頃を回想していた。
思い出されるのは懐かしい日々の記憶。
師や仲間たちと共に笑い合い励まし合いながら過ごしたかけがえのない時間だったと思う。
(主……イエス様……)
◇◆◇◆◇◆
「主。今日はどのようなご予定でしょうか?」
ユダは主に尋ねると彼は優しく微笑んでくれた。
「ユダ、今日は村の人々に福音を伝えるため、私たちは旅に出るよ」
とイエスが答えた。
ユダは胸が高鳴り、喜びを感じる。
彼はイエスの使徒として、人々に愛と救いのメッセージを届けることが使命だと信じていたからだ。
イエスと彼の使徒達は旅の準備を整え、村へと出発した。
道中でイエスは人々に奇跡を起こし、多くの人々が彼に続いていった。
ユダは喜びに溢れ、イエスを支えることに生きがいを感じていた。
しかし、彼の心には時折、疑問や不安がよぎった。
自分が選ばれた使徒であることに誇りと同時に、重い使命感も感じていたからだ。
イエスはユダの不安に気づき、彼の手を取って言った。
「ユダ、私はあなたが私を信じ、私たちの使命に全力で取り組んでいることを知っている。信じる者には報いがあることを忘れないでほしい」
ユダはその言葉に勇気づけられ、再び前を向いた。
(主……貴方のそばにいられることは何て幸せなことなんだろう……!これからも貴方のお役に立ち続けたい!)
その想いが強くなっていった。
◇◆◇◆◇◆
在りし日の回想を終えたユダは目を開く。その瞳からは一筋の涙が流れ落ちた。
(もうあの頃のように貴方にお会いすることは叶わないけれど……)
それでも心の中ではずっと彼を想っていたいと思ったーー
たとえ報われることが無いとしても……。
(もし、再び貴方に相見えることが叶ったらーー)
そんな想いを胸に秘めながら今日も生きる決意をするユダであった。