119 女神の真の狙い
聖書転生者達そして私は、この世界の女神であるセナムーンの眷属として転生していたーーー
そして私達は彼女のものであり、支配されているのだという……
しばらくの間、全員が沈黙し重苦しい空気が流れていた。
だけどみんなのリーダーのアダムが厳かに口を開く。
「皆の者。受け入れがたいがあの女の言うことは真実だろう。私もこの世界に来たばかりの頃、誰かに操られて新興宗教の教祖をさせられていたがあの女の洗脳の力だろう…。そして先程も私の『無効化』は使えなかった。恐らくだが主人であるあの女には逆らえないであろう」
その言葉に聖書転生者達は暗い表情になる。
「くそっ……!どうすれば良いんだ!?」
「このままじゃあいつの支配下に置かれたままじゃないか!」
聖書転生者達はそれぞれ焦りや不安を口にしたり頭を抱えたりしていた。
(私もどうすればいいのか全然わからない……)
私はただ呆然と立ち尽くしていたがふと隣を見るとダビデと目が合ったので慌てて目を逸らす。
すると彼は優しく微笑んでくれた。
「まだ諦めるのは早いのではないか?」
重い空気を変えるようにダビデが皆に語りかけると、その言葉を聞いた仲間達が一斉に顔を上げる。
「……どういうことだ?何か策があるのかい??」
ユダさんが尋ねるとダビデは首を振る。
「済まない。まだそこまではわからない。だが打開策があるかもしれんぞ?我々が団結さえすれば道は開けるはずだ」
ダビデの言葉は力強く説得力があったようで彼の言葉を聞くだけで勇気づけられたような気がした。
(そうだよね……!みんなで力を合わせればきっとなんとかなるはず……!!)
「確かにそうだね。だが……現状では僕たちはあの女神の支配下にあり、そして強制力もある。厳しい状況だが、危惧すべきはそれだけに留まらない」
「……?」
ソロモンさんの発言に疑問を抱いた様子のみんなに彼は説明するように言った。
「ルシファーとの戦いにあの女神が現れた時、奴はこう言っていた。『この世界を支配するのが目的』だとーーーつまり奴は、神の力を取り戻すためだけでなく僕たちを世界征服のための駒と見ているということに他ならない……!」
ソロモンさんの言葉に皆がハッと息を飲む音が聞こえた気がした。確かにそうだと思ったからだ。
私たちは女神セナムーンの眷属であり眷属である以上その命令に従わなければならないのだろう。
それがたとえどんな内容であってもーーいや寧ろだからこそ恐ろしいのだ。
「それに女神という存在は僕達にとって脅威でしかない存在だからね……」
「うむ……」
「なるほどな……」
「確かにその通りだな…」
ソロモンさんの言葉を聞いた聖書転生者達はしばらく考え込んでいたようだがやがて意を決したように顔を上げた。
どうやら考えがまとまったらしい。
「まずは我々聖書転生者が一致団結することが必要だと思う」
「そうだな……」
「うん、僕もそう思うよ」
「俺も賛成だ!」
「異論はない」
こうして話し合いの結果、今はおとなしく従う姿勢を見せながら生活を送り、そして打開策を模索することになった。
この時の彼らは確かに一致団結して行動していたように見えた。
だけど・・・
全てお見通しかのようにセナムーンがある罠を用意していたことを私達は何も知らなかったーーーー