118 服従の定め
女神セナムーンは私達の動きを封じながらある人の方へと目を向ける。
それはソロモンさんだった。
「ソロモン。貴方ならわかるわよね?」
「………」
「貴方もかつて指輪の力で悪魔を配下にして服従させていたでしょう?それと同じことよ♡」
「………」
動きを封じられ言葉を発することもできないソロモンさんは黙って聞いているしかなかったのだけど、それでも諦めることなく必死に抵抗していたようだった。
その様子を見てセナムーンは満足そうに微笑むと言った。
「貴方達は私の支配下にあるのよ。でも安心して頂戴♡酷いようにはしないから。だって私の可愛い申し子だもの。そんなわけで貴方達の信仰心は私の元に集まるようになってるけど貴方達はこれまで通り、貴方達の神を信仰して生活すればいいだけ。自由もあるし楽でしょう?」
そう宣告するセナムーンは少しだけ表情が和らいだ気がする。
聖書転生者達への慈悲も少しはあるんだろうかーー
「では今日のところは退散しようかしら。お楽しみのところ失礼したわね。あ、そうそう。一つ言い忘れてたけどーー貴方達への褒美も用意しているわ。それもとっておきのご褒美をね♡」
セナムーンは意味深なことを匂わせつつその場から姿を消したのであるーーー
***
セナムーンが去った後、私達は体の拘束が解けて動けるようになったことでホッと息をついた。
だけど誰も言葉を発することもできず茫然と立ち尽くすことしかできないでいた。
当然だろう。
まさか自分達が、この世界のかつての神に支配される立場にされていたなんて思いもしなかったのだからーーー
そんな重苦しい空気の中最初に口を開いたのはやはりダビデであった。
彼は怒りに満ちた表情でこう吐き捨てたのだーー!
「……クソッ!!」
普段温厚なダビデからは想像もできないほど荒々しい様子に驚くと同時に彼がここまで感情を露わにするということはそれだけ怒っているということだと理解した。
そして彼の隣に立つカインさんも険しい表情をしており拳を握りしめながら悔しそうに俯いていた。
他のみんなも悔しそうというか悲しそうな顔をしているように見えた。
(どうしてこうなったんだろう……)
私はぼんやりとそんなことを考えていたのだったーー