117 支配
「あらあら。強すぎる信仰心というのも面倒ねぇ。今まで通り信仰するだけで良いと言ってあげてるのに…」
セナムーンは呆れた口調だけど目は笑ってなく、むしろ獲物を狙う肉食獣のような目つきをしていた。
(こ、怖い……!!)
本能的に恐怖を感じた私は無意識のうちに隣にいるダビデの腕を掴んだ。
すると彼はそれに気づいたのか私の手の上に自分の手を重ねてくれたのだった。
(ダビデ……!)
それだけで安心感を覚えた私はほっと息をつくと、改めてセナムーンの方を見る。
セナムーンは相変わらず冷たい目でこちらを見ていたけど、やがてため息をつくとやれやれといった感じで首を横に振ったのだった。
(セナムーンさん……一体何を考えてるの?)
彼女が何を考えているのか全く分からない。
「貴方達に選択権なんてないのよ。だって貴方達は私の眷属なんだから♪」
「っ……!」
聖書転生者達に緊張感が走る。
「眷属だか何だか知らないが抗う権利くらいはあるはずだぞ」
そう言ったのはアダムだった。
他の聖書転生者たちも同意するように頷いている。
(そうだ……!そうだよ!!)
私も彼らに便乗しようと口を開きかけたその時ーー!!
「はぁ〜??」
突然セナムーンが不機嫌そうな声を上げたかと思うと、次の瞬間には彼女の身体から禍々しいオーラが溢れ出した。
(えっ!?何これ!?)
そう、体が動かせない。
前に大天使サリエルさんに邪眼を使われた時みたいにーー
そして体が動かないだけじゃなく口で説明できないような強烈な倦怠感に襲われたのだ。
これは一体……?と思っているうちに意識が朦朧としてくるのを感じたが、ここで倒れるわけにはいかないと思い気力を振り絞りなんとか意識を保つことに成功する。
聖書転生者たちも苦悶の表情を浮かべていた。どうやら彼らも私と同じ状態らしい。
(なんだと…無効化の力が効かぬ!この女が…我々の主人だからか?)
アダムがそう心で呟いているのを誰も知らなかった。
まさにこの女性に自由を握られているーーそう思わざるを得ない状況だったのだ。
「少しはわかったかしら?自分の立場が。貴方達は眷属ーー主人である私の命令に従う運命なのよ。貴方達の自由は私が握ってるの♡」
そう言うと彼女は妖艶な笑みを浮かべたのだったーー