11 ドラゴンとの戦い
冒険の途中、最強種とも言われる魔物ドラゴンと遭遇してしまった私とダビデ。
ダビデは自分が囮になり私を逃がしてくれたけど、ドラゴンに拘束されてしまったーー!!
必死に走っていると背後から激しい衝撃音が聞こえたので振り返るとそこにはーー 拘束され苦しそうにしているダビデの姿が目に映った。
(ダビデ……!!お願い……死なないで……ッ!!!)
ただ祈るしかできない自分の無力さが恨めしい。
ダビデは体中の痛みに耐えながらこう思っていた。
(ここまでか…私はここで死ぬのか…?あの子を1人残して……。いや、あの子はきっと大丈夫だ。生き延びてくれるはずさ……)
ダビデは自身の死を覚悟していた。
(主…イスラエルの神ヤハウェさま…私が唯一信仰している御方…。せめて死ぬまでに貴方にお会いしたかった…。愛する主よ…)
ドラゴンの拘束はさらに強まり激痛に顔を歪める中、彼は思わず心の中で祈っていた。
(ヤハウェさま…主……。助…けて……)
その時だったーー 眩い光が辺り一面を包み込むように輝き出したのだ。
それは暖かく優しい光だった。
そして次の瞬間には信じられないことが起こったのだ。なんとドラゴンが急に苦しみだし、
その巨体を横たえたのだ。そしてそのまま息絶えてしまったのだ。
何が起こったのか分からず唖然とした私だけど我に返って慌てて駆け寄った。
「ダビデ!大丈夫!?」
私の声に反応し目を開けた彼だったが、意識が朦朧としているようだ。
だが、何かに気付いたように目を見開き、慌てて立ち上がった。
(主…主……!)
ダビデは光が注いだ方向を振り返り、そちらへ向かって走っていく。
だがそこには何もなく、ダビデは呆然と立ち尽くしていた。
私はダビデのそんな行動の意味がわからず、彼の胸中を知る由もなかった。
ダビデは空を見つめながらそっと心の中で呼びかけた。
(主よ…貴方が助けてくれたのですか……?)
だが返事はない。
それでもダビデは祈らずにはいられなかった。
(主よ……感謝します……!)
ダビデはそのまま意識を失ってしまったのだった。
***
ダビデが命の危機を乗り越えていた頃、ソロモンはと言うとーーー
(目撃情報がある悪魔、特徴からしてマルファスのことっぽいな。彼ならあり得そうだもんなぁ)
マルファスはソロモン72柱である悪魔だ。
鴉の顔と人間の男の肉体を持った外見をしている悪魔だった。
ソロモンの指輪でソロモン72柱を異世界でも支配できるか実験するため、計画を練っていたのだった。
(目撃情報を分析してみると奴らの出没パターンもある程度予測できるからな)
魔法陣を使って召喚する方が楽だが、ソロモンの指輪の効力がまだ未確定な以上、リスクが高いと考えたのだ。
(あいつらには恨みを買ってる可能性が高いしねぇ。こっそり試させてもらうよ♪)
ソロモンは不敵な笑みを浮かべるのだった。