114 明かされる真実
再び私達の前に姿を現した自称女神セナムーンは、ついに真実を話し始めたのだ。
それは、信じられないような内容だったーー
「ダビデが先程言っていたように私はこの世界の神・・・だった、という方が正しいかしら?この世界は魔物の蹂躙により著しく人類が淘汰され、それに伴い神にとって糧である『信仰心』も失われていったのよ……」
淡々と語るセナムーンの話を私たちは黙って聞いていた。
どうやら彼女によると、この世界ではかつてたくさんの神々が存在し、人々が信仰することで彼らもまた力を蓄えることができたらしい。
しかし信仰心を失った神々は、絶対神ミュトスを除いて衰退しいつしか忘れられていってしまったのだという。
「だけど私は、このまま過去の存在で終わりたくなどなかったーーどうしても再び神としての栄光を取り戻したかった・・・」
そんな彼女にある時転機が訪れたそうだ。
彼女は異界ーーつまり私達が元々いた世界ーーから、この世界に転生させるに相応しい魂を探していたらしい。
そんな彼女の思惑と強く共鳴した魂の持ち主がいたらしい。
そしてそれはーーー
「ソロモンよ」
「僕……だと?」
突然名前を呼ばれソロモンさんは驚いたように目を見開いた。
「貴方は尋常でないほど好奇心旺盛で、そして既存の概念に縛られない類稀な頭脳の持ち主。私が転生させる魂を探していた時、貴方の魂が強く共鳴したの。『異世界に行けるのか。僕をそちらへ連れて行ってくれーー!!』と。転生すると転生前の記憶は忘れるから貴方は何も覚えていなかったみたいだけどね」
ソロモンさんは心当たりがあるのか考え込む素振りを見せたあと、納得したような表情を見せた。
「だ、だが…なぜソロモンだけでなく我々まで?」
ダビデが疑問を口にすると、セナムーンはにっこりと微笑んで答える。
「それはね…貴方達が一際『信仰心』が強いからよ」
「何だと……?」
困惑する彼らに向かってセナムーンはさらに続けた。
ソロモンさんの魂と強く共鳴したセナムーンは、ソロモンさんに興味を持ち、そして彼を通して「聖書」のことを知ったらしい。
セナムーンは聖書に記録されている人物達の、神ヤハウェへの信仰心の強さにそれはいたく感銘を受けたらしい。
そして聖書の人物達の中から転生者を選別しようと考えた結果、彼らが選ばれたのだという。
突然告げられた事実に言葉を失っている様子の聖書転生者達・・・
だけどそんな中でもソロモンさんは冷静に彼女に問いかける。
「なるほどね…。だが、僕たち転生者の条件は信仰心が高いだけではないのではないか?僕の推測では、強い罪悪感を抱えて亡くなった人物が選ばれる傾向にあるようだが……?」
ソロモンさんにそう言われると、セナムーンは少し驚いた様子を見せたがすぐに平静を取り戻して頷いた。
「鋭いわね、さすが私の最初の申し子だわ・・・。その通りよ、罪悪感を持ちながら死んでいった魂、そして信仰心が高い者。その中でも特に有能な者達が選ばれているわ。それが貴方たち聖書転生者というわけよ」
なるほど確かにそう考えると納得できる部分もあるかもしれないと思った。
彼らは生前罪を犯して後悔しながら死んだ人達ばかりだし、何より全員とても真面目で正義感が強くて真っ直ぐな性格をしていると思うからだ。
そんな彼らの心の奥底にはきっと罪に対する贖いの気持ちがあったのかもしれないと思うと胸が締め付けられるような思いになったのだった。
(え…でも私は?何で現代人で神を信仰もしてない私まで…?)
明らかに私だけ部外者感がある。
「僕たちには記憶がないが、おそらく転生前に契約がなされたのだろう。罪悪感を抱えた魂はいわば未練や悔いが残っているから、転生して贖罪のチャンスを与えられることに同意しやすかろうからな……」
ソロモンさんは冷静に分析している。
するとセナムーンはくすくす笑いながら、衝撃的な事実を口にするのだったーー
それは、その場にいる者全員が言葉を失うほど絶望の一言だったーー