112 謎の女の再来
親睦会が終わり、仲間意識を強めた聖書転生者達だけど、彼らはこの世界に自分達の神殿を建造することを決めたらしい。
もちろん彼らが唯一信仰する神ヤハウェさまを祀るためだ。
そのために必要な資材や人材を集めつつ、各自で生活基盤を整えながらこの世界での新たな人生を模索するのだそうだ。
全員で共通の目標ができたことで、より一層団結力が高まったように感じたよ。
(このまま上手くいけば良いなぁ……)
そんな希望を抱いていた私だったけどーー事態は急変することになる。
〜〜〜〜〜〜 それからしばらく経ったある日のことーー
「私は、この世界に来てしまったからには人々の役に立ちたいと思っている。私の力や資質を人々のために使いたいと…」
聖書転生者の仲間達で集まっていた時、ダビデがそう切り出したのだ。
「ったく、お前は真面目な奴だなぁ。でもわかるぜ。俺も、夢があるから」
カインさんは揶揄うように言いつつも共感を示す。
「僕たちは、皆何かしらの異能を持っているしね。僕たちをこの世界に召喚した黒幕の仕業かもしれないが…だが主の思召しでもあるんじゃないかと思う」
ソロモンさんの言葉に皆が頷く中ーー
「僕たちは皆、前の世界で罪の意識を持っていた。特に僕は許されない罪を犯したーー僕にそんな資格があるんだろうか…」
ユダさんだけは俯き加減に呟いていた。
「お前は相変わらず暗いな〜。俺だってまだ自分を許せてなんかいねぇよ。けど過去をどれだけ嘆いても前を向いていかなきゃならねぇんだ」
カインさんは珍しく真面目な顔でそう諭す。その言葉はありきたりだけど彼の言葉には重みがあった。
「カイン殿の言う通りだ。この世界は一見平和だが魔物の脅威に脅かされ、人々は常に死と隣り合わせの生活を強いられている。我々の力だけではどうにもできないかもしれない。だがこの世界を変えるために何ができるか、皆で考えていかぬか?我々には主がついてくださっているのだからーー」
ダビデの言葉は力強くて、そして説得力に満ちていた。さすが古代イスラエルを統一させた王様……!
みんながその言葉に頷いて笑い合っていた。
そんな時だったーーーー!
ドゴォオオンッ!!!! 突然轟音が鳴り響き地面が大きく揺れる。そして地震のように激しい揺れに襲われた!
何事!? まさか敵襲か!!?? 私が慌てていると!!!????
「仲が良いことね、私の可愛い申し子達」
女の声と共に現れたのは妖艶な雰囲気を纏った美女だった!
彼女は紫色の長い髪を揺らし、瞳を妖しく光らせながら私達を見下すように微笑んでいる。
「お前は……!!『この世界の神』と名乗った女……!?」
ダビデが警戒するように女を睨みつけ叫んだ。
ルシファーや堕天使軍団と戦った時に現れた謎の女が、唐突に私達の前に現れたのだったーーー