111 絆を深める聖書転生者達
アダムがリーダー役に決まり、ダビデ達を説教する場面はあったものの。
その後は気を取り直して彼らは交流会を楽しもうとしていたのだったーー!
当面は、彼らをこの世界に召喚した首謀者を突き止めることを目標にし、そしてこの世界に来てしまった以上、ここでの生き方を各々決めていくことーー
そんな方向性が定まったようだ。
そして彼らは1人じゃない。
聖書の登場人物ーー私だけを除いてーーという共通点、そして同じ神を信仰する同士。
そんな彼らが時代を越えてこうして同じ時に集結できたのは、彼らにとって仲間と同義なのだ。
理屈を抜きにして彼らは無条件に互いを仲間だと認め合えたのだろうと思う。
そんな彼らの関係が羨ましいと思ってしまう自分がいることにも気づいてしまっていた……
「良ければ私の竪琴の演奏を聴いてくれないか?」
ダビデがみんなに呼びかけ出した。
きっと音楽で場を盛り上げるためだろう。彼の竪琴の腕前は国認定の音楽家になれるほどだもんなあ。
「おお!お前楽器が弾けるのか?すげぇじゃん!」
真っ先に反応したのはカインさんだった。
「いいな、君の演奏を聴いてみたい」
「私もだ」
イサクとヤコブも興味津々のようだ。
他のみんなも同じ気持ちのようで、期待の眼差しを向けてきている。
そんな彼らに気を良くしたのか自信ありげに微笑むダビデ。
彼は静かに立ち上がると竪琴を手に取りゆっくりと弦を弾き始めた。すると美しい音色が流れ出すと同時に辺り一面に心地よい空気が漂っていく。
これがダビデの実力……やっぱりすごいな……
まるで心が洗われるかのような感覚に襲われる。そんな錯覚さえ覚えるほどだった。
「……ふうっ!」
曲が終わると同時に盛大な拍手が巻き起こる。
「すげー!俺は音楽はよくわからんが凄かったことだけはわかったぜ!!」
興奮気味に感想を言うカインさんに対し、イサクは感動に打ち震えていた様子だった。
一方ユダさんはあまり興味なさそうだったけど(笑)でも満更でもない様子。
やっぱりダビデの音楽の才能はすごいらしく、あっという間に聖書転生者達の一体感が増していったように思う。
これも才能なんだろうね〜感心するよ本当に。
みんなから演奏のリクエストを受けて嬉しそうに笑ってるダビデを、私は遠巻きに眺めていた。
彼と私は不思議な縁で出会い仲間になれたけどーーー
彼は今、こうしてたくさんの仲間ができた。最初の頃より、今の彼は楽しそうだし自然体に見える。
きっと、同じ神を信仰する仲間がたくさんできて孤独ではなくなったからだと思う……
(嬉しいはずなのに……どうしてこんな気持ちになるんだろう……)
1人だけ取り残されてるような気がして寂しい気持ちになる私だった。
この時の彼らは、私を除いて一体感があって、その仲間意識は揺るぎないもののように見えた。
だけどーーー
そんな彼らが分裂してしまうことが起きるなんて、この時私は想像もしなかったのだった・・・