109 聖書転生者達の親睦会
数日後。
聖書転生者達と私は、新たに仲間となったカインさんとユダさんも交えて、交流を深めるために集まっていた。
いわゆる親睦会というやつである。
場所はソロモンさんの屋敷にある広間だ。
前から広い屋敷だと思ってたけどちょっとしたお城みたい。
異世界に来てからも王様みたいだな〜。
「よぉ、嬢ちゃん。前はあんまり話せなかったけど俺らの中で嬢ちゃんしか女がいないからむさ苦しいだろ?何かあったらなんでも言ってくれよな〜」
人懐っこく話しかけてきたのは、カインさんだ。
軽薄そうな見た目とは裏腹に面倒見のいい性格をしているらしく、私に気を遣って話しかけてくれるようだ。
まあ私も前の世界では男だったんだけどね…。心は女だったとはいえ。
しかしそれを知らない人達からすれば今の私は女性に見えることだろうし気を遣わせてしまっているのかもしれないと思うと申し訳ない気持ちになるーーー
だけど聖書転生者達は、さすが聖書に出てくる聖人だけあって皆紳士的というか親切な性格の持ち主ばかりだった。
だから私も安心して楽しむことができていた。
みんなお酒を嗜みつつ談笑している中ーーー
「今日集まったのは交流を深める目的でもあるけど、僕たちの今後の方針について話し合うためでもある。そろそろその話をしたいと思うんだが」
親睦会主催者のソロモンさんが言った。
私たちはその言葉に耳を傾けることにする。
まずはダビデが口を開いた。
「我々は生きた時代は違えど、同じ主を信仰している同胞だ。仲間に違いはないと思っているのだが、どうだろうか?」
彼の言葉に皆が頷く。
私だけ彼らと違うけど・・・ついそんな風に疎外感を感じてしまう。
(だめだめ!せっかくみんなが仲良くなろうとしてくれてるんだから暗い顔しちゃ)
「我々をこの世界に呼んだと思われる例の女ーーこの世界の神だと自称していたあの女の正体、そしてなぜ我々をこの世界に復活させたのかその目的を探らなければならないと思うのだ」
始祖であるアダムの言葉に全員が頷く。
当面はそれを調べることを目標に行動していくことになるらしい。
「そして…ソロモンが言っていたように、我々はこの世界に来てしまった以上、この世界で生きていかなくてはならぬ。今後の人生についても考えなくてはならんだろう」
アダムのその言葉に一同は再び頷き合う。
だけどその時アダムが心の中で思っていた思惑を誰も知る由はなかったーー
「始祖さま。やはり始祖さまが我々の首領となっていただくのが一番良いのではないでしょうか? その方がまとまりやすいと思いますし……」
そう言ったのは、イサクだった。
「私もそう思います。始祖さまこそ我らが首領にふさわしいお方です」
「俺も賛成だぜ!」
「私もです!」
他のメンバーも口々に賛同し始める。
「そうか……ならば引き受けようではないか!」
こうして始祖であるアダムが聖書転生者達のリーダー役を務めることになったのである。
だがその直後ーー思わぬ展開が起きたのだった……!