107 恋する乙女
聖書転生者達、そして1人だけ現代人の私の異世界転生者同士で食事をした数日後。
時代を越えて、こうして未知の世界に結集した縁なのだから、同胞として団結しようと親睦会を開くことになった。
後日、ソロモンさんのところに助手をするため訪問していた私は、彼から思いもよらぬ物を渡されたのだ。
「えっ何ですか?この服…」
それは清楚なワンピースでドレスのようでもあった。袖口は広がっていて、裾も膝下まである。
でも、いかにも女性らしい男受けが良さそうなお洒落な雰囲気のある衣装だと思った。
(こんな服…ずっと着てみたいって思ってた…)
元の世界では男だったから、女の子の服を着ることはできなかったけれど、もし着れる機会があればこんな感じのお洒落な服を着てみたいなって妄想したりしたこともあるんだよねー!
「君にプレゼントだよ。いつも頑張ってるから。悪魔達に調達してもらったんだけど気に入ってくれたかな?」
「そ、そんな!お世話になってるのはこちらなのに…。でも、嬉しいです」
「気にしないで。ねえ、今度一緒に遊びに行く時にその服を着てよ。きっと君なら似合うと思うんだ」
そんなソロモンさんからの誘い文句に、胸がときめいた。
「は、はい」
「やった!約束だよ!」
そう嬉しそうにはしゃぐ彼に、私も嬉しくなってきて思わず笑みがこぼれた。
***
(本当に素敵なワンピース…もし私がこれを着てるのをダビデが見たらどう思うだろう…?)
思わず顔が熱くなってしまう。いけないと思いながらも想像してしまう。
『綺麗だね。似合ってるよ……』
優しく微笑みかけてくるダビデの顔……
(やだ!何考えてるんだ…そんなんじゃないのに)
でも、少しは私のこと意識してくれるかも。そんな淡い期待を抱いてしまう自分に戸惑いつつ、彼のことを考えて胸を高鳴らせてしまうのだった。
私は自分の部屋で、ソロモンさんがくれたワンピースに着替えてみた。
(うわあ、素敵…馬子にも衣装って感じだけど、これはすごく可愛いなぁ……)
自分で言うのもなんだが、似合っている気がする。
鏡を見ながらうっとりしてるとーー
玄関から音がする。ダビデが帰ってきたんだ!
(ど、どうしよう。変かな?でも……どんな反応するか気になる……)
そう思いつつもドキドキして緊張してしまう。
顔が赤いのが自分でもわかる。まるで恋する乙女みたいじゃん、自分・・・
(この格好ならダビデだって少しは私のことを見てくれるかも……いやいや!何考えてるんだ)
そんなことを思い1人で恥ずかしがっていると・・・
「おいヤマト。帰って来てるのか?」
どうしよう、ドア越しにダビデから声をかけられてしまった!!
(も、もうこのまま出るしかないよね!!)
意を決して部屋のドアを開けるとそこにはダビデの姿がーーー