10 ソロモンとソロモン72柱
その夜ーー
ソロモンは部屋で本を読んでいた。
読書をしながら、彼はそっと自分の指に嵌められた10本の指輪の一つに触れた。
(なぜか僕はこの異世界へとやって来た。それも生前の若い姿で。この僕にも解明はできない…。そしてもう一つ重要なことは)
指輪を見つめながら彼は思考を巡らせる。
(この指輪も一緒だったんだよな)
生前、何があっても外さなかったソロモンの指輪。
(こっちの世界でもこの指輪でソロモン72柱を服従させられるのか?やっぱり一度試してみた方が良いよなあ)
ここは異世界なのだ。元の世界と同じように悪魔達を使役できるかは定かではない。
(まあ、とりあえず今度試して見るか……)
そう思い、ソロモンは再び本を読み始めたのだった。
***
ソロモンが異世界でもソロモン72柱を支配下にしようと企んでいた頃、ダビデと主人公ヤマト側はーー
(うーん……やっぱりいつもと変わらない。この前のキスは何だったんだ?)
私は悩んでいた。
先日の出来事があって以来、ダビデとはいつも通りの関係のままだからだ。
あれからキスされるようなこともなく、スキンシップも増えず、ただただ平穏な日々が続いているだけだった。
(別に気にしてるのは僕だけなんだけどさあ……なんか釈然としない。それに、僕はダビデを恋愛対象に見れないし、気を持たせないようにしなきゃ……)
悶々と考えながら歩いていた時だったーー
突然、大きな音がしたと思ったら地面が大きく揺れたのだ。地震かと思ったがそうではないらしい。
轟音と共に現れたのは巨大な怪物だった。
「な、なんだこいつは!?」
『ぐおおおおおおっ!!』
雄叫びを上げる巨大生物を前に私達は驚き戸惑っていた。
「こ、これはドラゴンだね……」
「えっ!?これがドラゴンなのかい?」
「そうだよ!まさかこんなところに現れるなんて……!」
私とダビデの前に現れた生き物の正体はドラゴンだった。
この世界において最強の種族と言われる竜族の頂点に立つ存在であり、最強種とも呼ばれている存在だ。
「ど、どうするのダビデ」
「おそらく今の我々では倒すことは難しいだろう。今は逃げるしかない!」
「わ、わかった!!」
私達は一目散に逃げることにしたのだった。
しかし、そう簡単に逃げさせてくれるような相手ではなかった。
ドラゴンは口から炎を吐き出して攻撃してきたり、尻尾を振って薙ぎ払ったりと私達を追い詰めた。
「くっ……!このままじゃまずいぞ!どうする?何か手はあるのか??」
ドラゴンは本能のままに暴れ回っているように見えるが、知能が高く狡猾だと言われている。
しかしーー
ダビデはドラゴンに向かって挑発するように剣を向けながら叫んだ。
「今の内に早く逃げろ!いいか、振り返らず遠くまで逃げるんだ!」
ダビデの叫びを聞いた私は思わず泣きそうになったが、グッと堪えて走り出した。
(ごめんね……ごめん……ダビデ……!!)
心の中で何度も謝りながら走るしかなかった。
しばらく走った後、ふと後ろを振り返るとそこにはーー
ドラゴンの尻尾に巻きつかれて拘束されているダビデの姿があった。
「そ、そんな……!ダビデ……!!」