104 神ヤハウェとは?(ソロモンの仮説)
今回の内容に出てくる「神とは何か?」はあくまでソロモンの考えや推測です。
この物語において確定している情報や答えではなく可能性の一つです。
この異世界には異世界の神がいるーー
それだけでなくヘラクレスさんを始めとして元の世界の神々ーーダビデ達にとって異教の神まで現れてしまっている現状。
一神教を信仰している彼らにとってこれほど複雑な状況はないだろう。
ここは元の世界と違う異界だから、元の世界の常識は通じないのだと、何とか納得させてきたんだろうけど…。
ソロモンさんの推測とは何なのか?
ソロモンさんが語ってくれたのはこんな内容だった。
「僕たちの信仰では神はヤハウェさま以外いない。他は偶像崇拝でしかないんだ。だが、この世界では他に神々がいる。僕は生前、他の神々の存在についてもよく考えていた。神はヤハウェさましかいないはずなのに他国には他国の神話が存在する。単純に考えればこれは矛盾することだ」
そこで一旦言葉を切ると言葉を続けるソロモンさん。
「そこで僕は仮説を立ててみた。あくまで仮説だがーー。そもそも『神』とは何だろう?一言で神と言っても同じ存在かも不明だ。神という言葉は比喩として用いられることが多いしね。我々が信仰する神ヤハウェさまと、異教の神々は、同じ神という表現をされていても同一や同列の存在なのか?もし違うとしたら……一体何を以てして、神は同じだと、僕らは判断できるんだろうか?」
そう言って言葉を区切るソロモンさん。私たちは誰も何も言わなかった。
いや、言えなかったという方が正しいのかもしれない。
それくらい衝撃的な発言だったからだ。
つまりどういうことだろう……?
「可能性の一つとして、ヤハウェさまは他国の神々より上位の存在であるのではないかと考えたことがある」
え……?それはどういう……? 私が混乱しているとカインさんも疑問を口にする。
「上位の神だって……?おいおい何言ってんだよ?」
「まさかーー主は神々すらも創造されたと?」
「だが、それではなぜ主は異教を偶像崇拝だと罪にしたのだ?」
イサクやヤコブも疑問を挟むのだった。それに対しソロモンさんはーー
「これも仮説に過ぎないが、おそらく人間が作った神ーーつまり偽物のまさに偶像の神や、魔族が神のフリをした類の邪教が僕達の周辺国で増えたことで、偶像崇拝を一切禁止と主はしたのだろう。人間が作った人工的宗教は、人間にとって都合が良い教えだから、主が選んだイスラエルの民には他の神は全て禁止にして制御したんだと思う。実際は正当な神々もいるが、玉石混交で紛い物の神を崇拝する宗教も多かったのだろう」
「な、なるほど・・・。主は全てお見通しというわけか・・・。流石は我らの主だ・・・」
ソロモンさんの言葉に感嘆した表情を見せるイサクたちだった・・・。
(なんかすごい話を聞いちゃったような気がするなあ・・・。)
「つまり、ヤハウェさまだけを信仰する一神教も正当であり、他国の多神教は偶像崇拝も多いが中には正当なものもある・・・つまり矛盾しているようでどちらも間違ってないと、そういうことだな・・・」
アダムがそう言うとソロモンさんは頷いてみせた。
「といってもあくまで仮説であり推測の域は出ないがね。しかし、僕が言いたいことは伝わったかい?」
「・・・ああ」
「なんとなくだけど・・・わかったわ」
カインさんやみんなは頷きながら返事をする。
(あ、あれ・・・?これってもしかしてとんでもないことじゃない!?)
そんなことを考えていた私だったけれどーー ソロモンさんの爆弾発言はまだ続いた。
ーーーそしてその内容は私達に大きな衝撃を与えるものだったーーー