102 人類最初の殺人者
私達を助けた男はアダムの最初の息子カインだった。
カインさんも私達と同じように何故か突然この世界に来て困惑していたのだという。
だけど、自分と同じように突然この世界に召喚されたという男が近くにいて、どうも同じ神を信仰しているらしいことがわかったらしい。
そしてその男と仲間になり、冒険者をしながら生活費を稼いでいたみたい。
(うーん……この人どう見ても人を殺しそうに見えないんだよなあ……爽やか好青年って感じだもん)
カインさんは明るく気さくな性格で、豪快な印象を与える男性だった。実際話してみるとその通りだったから拍子抜けしちゃったくらい。
「ところでカイン。お前の仲間という者とも会わせてもらえるか?我々は同胞を探していてな」
「ああ、俺たち以外に同じ境遇、それも主を信仰してる奴らがいるなら心強い。俺たちも仲間になるぜ」
カインさんはもう1人の仲間を紹介してくれることになった。
***
そこは彼らが泊まっている宿屋の一室だった。私とダビデが最初の頃に宿屋暮らしだったように、彼らも冒険者用の宿で暮らしているようだった。
そこには銀色の長めの髪で一見男性か女性かわからないミステリアスな雰囲気の人がいた。
「順調に貯金が貯まってきているな。だがもっと節約できることがあるとすると…」
机に座りお金を数えながらお金の確認をしているみたいだったけど・・・
「おいユダ。お客さんだぞ」
ユダ……?もしかして…
ユダと呼ばれた人はゆっくりとこちらを振り返る。
男性だと思うけど美人という表現が一番合うような感じで中性的な人だった。
そしてその瞳には冷たい光を孕んでいたのだけど、怖い感じはしない。
どことなく悲しみが瞳の奥にある気がするけど…何でだろう?
「ああ、こいつはちょっと無愛想で暗い奴だけど悪い奴じゃないんだ」
カインさんは豪快に笑いながら言う。するとユダさんはそんなカインさんにクールな口調で反論する。
「……ふん、野蛮人に言われたくないね」
うわあ、顔に似合わず毒舌。
でもカインさんは全く気にしてないみたいで笑っているだけだ。
こういうとこみると本当に明るい人だって思うよねえ。
「ユダ…殿。貴方も我々の同胞なのですか?」
「僕は、主……イエスさまの弟子…使徒をしていた者だ」
!!!
やっぱり…。あの12使徒のユダさんなんだ!
確か…イエス・キリストを裏切ったことで有名な……。
「イエス・キリストの使徒…!貴方はイスカリオテのユダなのか…!!」
聖書を通読してるソロモンさんが驚いたように声をあげるのだったーー