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魔術師の格


「思った以上に効果的ねコレ」


人っ子一人いない長い廊下を駆け抜けるレンの後を追いかけながら私は呟いた。

あの男を先頭に、地下牢にいた囚人を全部解放したが、想像以上に良い目眩ましになった。

暴力を一切振るわない罪人たちに、衛兵たちも武器を振るうことは憚られたのか、数で抑え込むしか無くなった。

戦争に反対した国民は多く、城に配置されていた衛兵の数を遥かに凌いだ。

それを取り押さえるために、ほとんどの衛兵が出払った。


またとない機会だ。

ここを逃せば、ニルは助けられないし、破滅の書も取り戻せなくなる。

そうして見えてきた大きく、威厳のある扉。

玉座の間だ。


「罪人共が脱走しただと!?今すぐ鎮めろ!!最悪殺しても構わん!!」


扉越しに、耳を劈く甲高い声が聞こえた。

広場であっただけだが、忘れようもない程耳障り。

アブソルの声だ。

ガシャガシャと、甲冑の足音が近づいてくる。


隠れてやり過ごしても良いがその場合、目眩ましの罪人達が危ない。

時間稼ぎのためにも、ここは足止めをしておきたい。

柱の影に隠れて、甲冑が現れた。

外で見たのとは違う、豪奢な黄金と白銀の甲冑。

とんだ成金趣味だ。

二人は、私とレンに気づいた様子もない。

背中がガラ空きだ。


私は背後から黄金甲冑の飛び付き、頸を締め上げる。

屈強な鎧にお似合いの重量だ。

これならちょっと体重をかけたくらいじゃ、崩れないだろう。

容赦なく締め上げながら、黄金甲冑を支点に遠心力をフルに活かして地面を蹴る。

白銀甲冑の兜を蹴り上げ、吹き飛ばす。

着地して力の抜けた黄金甲冑を、白銀甲冑に投げつける。

ガチャン!!

派手な音を上げて、重なり合いながら沈黙する甲冑たち。


「邪魔者は居なくなった…。レンは外の見張りを頼める?」

「ガゥ!」


レンの役目は私の道案内だ。

ここから先は私の仕事だ。

相手は、手も足も出せなかった魔術師。

レンの安全までは気が回らない。(私が気を配らなければならない程この狼は弱くないのだが)

レンも返事をしたことだし、ここは任せて問題ないだろう。

じゃれてくるレンを優しく撫でて私は立ち上がる。


「さて、行くか」


深呼吸を一つ。

気合を入れた私は、重たい扉に手をかけた。



「気を取り直して!貴様の処刑と行こうか!!最期に何か言い残すことはあるか!?この天才宮廷魔術師が聞いてやろう!!」


相変わらず声のデカイ男だ。

玉座の間とは名ばかりの、大きな火刑台が置かれた広間。

扉に背を向けた状態で、火刑台に括り付けられているニルに、実に楽しそうに宣言するアブソル。

あ、台上のニルと目があった。


「貴様!!聞いているのか!?全く、どこを見て…ッ!?」

「あ…」


ニルの目線を追いかけたアブソルとも目があった。

アブソルは、私の姿を見て言葉を失っている。

殺したと思った相手が生きていると分かれば、驚くのも無理はない。


「こんな危険な場所までよく来たなステラ」

「助けに来てやったのよ。感謝してよね」

「貴様、何故生きて!!?」

「さあ?取り敢えずソイツを返して」

「な、なっ!なんという奇跡!!」

「……はぁ?」


私の言葉を遮るような音量でアブソルが叫んだ。

まじでうるせぇな、コイツ。

思いがけない言葉に、私は思わず立ち尽くす。

奇跡?


「あの時、死んだはずの美しい獣人が生きていた!!小物魔道士が贄にしたはずだが、そんな事はどうでも良い!!大切なのは事実!!こうして我の前に現れたこと!!それが全て!!これこそが愛!!」


贄?愛?

ギラギラと目を怪しく光らせて、不気味な狂笑を浮かべるアブソル。

なんの話だ?


「よくぞ!我の前に、戻ってきた!!貴様は今まで見てきた獣人の中で群を抜いて美しい!!ぜひ、我の収集品に加えたい!!」

「ッ!?」


何こいつ気持ち悪っ!?

唾を撒き散らしながら、狂ったように早口に捲し立てる姿は悍ましい別の生物に対面しているかのような錯覚を引き起こす。


「あの時は死体でもいいと思ったが、生きているならコレ以上の喜びはない!!不自由はさせぬ!!我と共に永遠を生きよう!!」


不自由はさせない…ね。

こんな熱烈な告白は初めてだ。

アブソルの白くて細い腕が、ヘビのようにウネウネと私に近づいてくる。

だが、残念。


「お生憎様。アンタは趣味じゃないわ」

「なっ!?」

「ブフッ!!」


気味悪くうねる腕がピタリと止まった。

アブソルの顔が凍り付く。

まさか、袖にされるとは夢にも思っていなかったようだ。

それを見て、ニルは縛られたまま吹き出した。


「何故だ…!?我の何が気に食わん!?」

「声がでかい、慎みのかけらもない、あと、押し付けがましい。そもそも、アンタ顔が良くないじゃない?それと大前提、自分の腹に大穴開けてくるような暴力的な奴なんて好きになりようがないわ」

「な……!!」

「君、最高だな…!!ククッ!!」


私の歯に衣着せぬ発言に、アブソルは言葉が出ないようだ。


「私は、契約者のコイツを助けに来たの。邪魔しないでくれる?私をナンパしたかったらコイツよりも良い条件出しなさい?」

「この…アマァ!!付け上がりやがって!!この我に恥をかかせた罪は重いぞ!!貴様は一生飼い殺しにしてやる!!」


熱烈な態度はどこへやら。

憤怒の形相でアブソルが、私を睨みつけてきた。

男の矜持を傷付けられたら、冷静ではいられないだろう。

杖が怪しく光った。

私は素早くその場から飛び退く。

直後、私が経っていた場所が爆発した。


「それは、前も見たのよ!」


懐からナイフを取り出して、アブソル目掛けて投げつける。

ナイフの切っ先は、アブソルに当たる直前で見えない壁に、突き刺さって動きを止めた。


「効かぬわ!!我には如何なる攻撃も魔法も通用しない!!この低能め!!」

「フラレた途端に、口悪いわねアンタ!?」


収集品にするというのは諦めたのか、容赦のない魔法の連続攻撃。

私は足を止めず、玉座の間を走り回る。

私が駆け抜けたところは、ボコボコに凹み瓦礫の大穴がいくつも生まれている。

牽制のためにいくつかナイフを投げてみたが、奴の言う通り全く通用しない。


「アンタ、あの防御突破する方法知らない?」

「残念ながら、そもそもあれ程練度の高い防御魔法を常時展開しながら、魔法攻撃を連発するなど、余程の魔術師でも出来ないぞ」

「役に立たないわね!」


つまるところ、ニルも対抗策無いと。

それ程までに、奴が格のある魔術師ということだろうか。

どうにもそう思えないが…。

どうにかして、ニルを解放したいがアブソルがそれを許してくれないだろう。


「ちょこまかと、小賢しい!!!目障りだ!!!死に晒せ!!!」

「しまった!?」


真っ赤な絨毯を突き破って現れた無数の蔓が私を締め上げた。

それ、屋内でも使えるのかよ…!

手足と頸を締め上げられ、宙吊りにされる。

包帯が内側から破けるほど力を込めて暴れても、蔓はビクともしない。


「キヒヒ!!ようやく捕えたぞ!!我を侮辱した貴様は、楽には殺さん!!徹底的に心をへし折って、悪魔への供物にしてくれる!!」

「ア…ガ、…!」

「まずは手始めに、この生意気な魔道士を目の前で殺してやる!!己の無力に絶望しろ!!」

「やめ、ろ…!!」


アブソルが、乱暴に床を杖で叩いた。

ゴウッ!と、火刑台が勢いよく燃え上がりだした。


「さあ、絶望の断末魔を響かせろ!!この愚かしい獣人の心に一生の傷を残して死んでいけ!!」

「ニル…!!」


アブソルは、気でも触れたかのように狂った笑い声を上げた。

火刑台の上で、ニルは変わらず勝ち気な笑みを浮かべていた。

なんでこんな時まで…笑ってるのよ?

この底の見えない魔術師様は何を考えているのだろう?


分からない。

しかし、諦めた様子は微塵もない。

何か策がある?

だったら、すでに手を打っているはずだ。

私に何か策があると思ってる?

魔法の心得の無い獣人に何を求めている?


分からない。

それとも、気がついているのか?

私の秘策に?

でも、この蔓はいくら力を込めても千切れない。

だから、手足を縛られた私は身動きが取れない…


訳じゃない。


私には、まだ使える"手"がある。

尻の方に意識を集中する。

関節のない腕を伸ばすような感覚。

幸いにも、アブソルはニルが燃える様に夢中で私の行動には気づいていない。

私の"尻尾"が、ポケットの中を探る。

そこに見つけた。

小さな小瓶。

中には液体が揺れている。


引っ張り出したソレを、私は火刑台に向けて投げつけた。

パリンと、音を立てて小瓶が砕け散り、中身をぶち撒ける。

あとは…。

息を吸って、力いっぱい叫ぶ。


「"ぶっ壊せ"!!」

ガシャン!と、派手な音を上げて火刑台が、吹き飛んだ。

爆煙で視界が塞がる。


「どうなった…!?ウグッ!!」

「貴様ァ!!何度我をコケにすれば気がすむ!?」


怒り心頭のアブソルが蔓を締め上げたせいで、息が詰まる。

顔中血管を浮かび上がらせて、私を睨む姿は紛うことなき、恐ろしい魔法使いの形相だった。


「"焼き尽くせ"」


凛とした声が響き、私を縛り上げていた蔓が燃え上がる。


「"吹き飛べ"」

「ムッ!?」


続いて、強風が吹き荒れてアブソルだけが吹き飛んだ。

どうやら、見様見真似の一か八か魔法薬作戦は成功のようだ。


「全く、少しは加減してくれてもいいんじゃないか?ステラ」

「助けてやったんだから文句言わないでよね」

「そうだな。ありがとう」


爆煙の中から姿を現した頼もしい立ち姿に憎まれ口を叩きながら立ち上がる。

ウチの魔術師様のご復活だ。


「貴様らぁ…!!何度も何度も!!」

「貴様の詰めの甘さと、慢心が招いた結果だ」

「この反省を次に活かす時はあるのかしら?」

「自分を天才だと思い上がった愚か者は、真なる天才を前に為すすべもなく倒されてしまいました…。中々いい詩が書けそうだな…」

「昨晩は我に手も足も出なかった塵芥の分際で、図に乗るなぁ!!」


二人の魔術師の間で、大きな音爆音が響いた。



魔法使い同士の本気の戦い。

絶えず、空気が揺れ、魔力が溢れる異次元の戦い。

ただの人間では、その場に立つことも叶わない。

ニルが戦線に復帰したが、それだけでは奴の絶対防御を突き崩すことは出来ない。

アブソルの魔法攻撃は全てニルが相殺してくれているので、負けることはないが勝つことも出来ない千日手。

やはり、あの防御を突破しなくては…。


「無駄だ!どんな魔法も、攻撃も、この我には絶対に届かぬ!!」

「ハァッ!!」


隙を狙って剣で斬りかかるが、目聡く反応して杖を掲げたアブソルには届かない。

構わずに連撃を叩き込むが、全て見切られて杖に阻まれる。

阻まれる…?


「"爆ぜろ"!」


アブソルの背後から巨大な熱の塊が迫る。

それに気づいたアブソルが早口に何かを唱えた。

直後、衝撃波に私は吹き飛ぶ。

アブソルが爆炎に包まれる。

爆炎を掻き消し、無傷のアブソルが姿を現す。

ピンピンしている奴にいい加減、苛立ちが募る。


「……?あ、まさか」

アブソルの防御行動を、見て一つの仮説が私の中に立った。

奴に気取られるわけには行かない。

検証している暇はない。

やるなら、一発勝負だ。


なかなか死なない私達に、アブソルも同様に苛立ってきたのか大掛かりな魔法を仕掛けた。

それにニルは余裕で応戦する。


「消し飛ばせェェ"!!」

「"消し飛ばせ"」


真っ黒い球体が2つ現れ、周囲の景色を飲み込みながらぶつかり合う。

凄まじい衝撃が玉座の間を襲う。

私はアブソルの背後に立っているため、衝撃は届かない。

そして、私の目の前には無防備な背中を晒したアブソルの姿があった。


「ここ!」


背後からの突貫攻撃。

狙いは、アブソルの握る魔法の杖。

伸ばした左手で無理やり奪い取る。


瞬間、見えない防壁が消えて凄まじい轟音が私を襲った。

どうにか、着地を成功させて体制を立て直す。


「貴様!!その杖を返せ!!」


アブソルの慌てた声が聞こえた。

予想は当たった。


「アンタの防御のカラクリはコレね」

「お手柄だ。ステラ」


アブソルは私たちの攻撃を防御する時、必ず杖を掲げて攻撃を受け止める。

最初はただの反射的な行動かと思っていたが、先の剣での連撃と、巨大な火球を防いだ時に確信した。

この杖は自分の正面にしか、防御壁を展開できない。

これで防御のタネは割れた。


「面白いマジックアイテムだが…。これに頼らなきゃ戦えないようなら魔術師は名乗れないな」

「ッ!」


杖を受け取ったニルが、アブソルを煽る。

魔道士扱いされたことをよっぽど根に持っていたらしい。


「そもそも、一流の魔術師ならば己の感情に振り回されず、己の最大の利益を求めて合理的に行動する。怒りに囚われ、報復に固執する貴様は魔道士と名乗るのも烏滸がましい」

「黙れ黙れダマレー!!!!!我は、貴様らのような凡愚とは違うのだ!!!!"あの方"に選ばれた!!天才なのだ!!!」


全ての理性の糸が切れたかのように、アブソルは絶叫する。

その姿は先程までの怒り心頭とは違い、錯乱しているかのようだ。


「まだだ!!まだ!!勝ち誇るには早い!!」


フラフラと、ローブの中に手を突っ込んだアブソルが、取り出したのは一冊の黒い本。

何にも例えられない黒い表紙に踊る文字は奇妙な形をしていて読めない。


「あれって!?」

「"破滅の書"だ。やはり、王城にあったな…」

「こうなれば、この国諸共貴様らを地獄に送ってやる!!」


破滅の書に縋るように手を伸ばすアブソル。

しかし、ニルは慌てた様子もない。

ただ優雅に、本に向けて手を伸ばす。


「"戻れ"」

「なに!?」


アブソルの目の前にあった本はアブソルの伸ばす手をスルリと、躱してニルの手中に収まった。

あっさりとした決着だ。


「返してもらったぞ。これは俺の本だ」

「馬鹿な…。あり得ない…」


アブソルはもう叫ぶ気力もないらしい。

生気を失った表情、細い身体がその場に崩れ落ちる。

この国を乗っ取ろうとしていた邪悪な魔術師の呆気ない最期だ。

そんなの構わずニルは詰め寄った。


「さあ、色々吐いて貰おうか。どこでコレを手に入れた?まさか、貴様のような魔道士が盗んだわけではあるまい?」

「い、言えない…」

「言えないことはないだろう?その口はなんの為についている?」

「無理だ…!!それだけは答えられない!!」


打って変わって弱気なアブソルは、格上の魔術師に詰め寄られても頑なに口を割らない。

この様子からして、何かしらの情報は持っているようだが…。


「言わぬのなら、言いたくなるまで拷問だ。ちょうどいい機会だ。本物の"拷問"を味わってみないか?その身をもって…正直に全部吐けたら生かしてやってもいい」

「い、嫌だ…」

「言うも嫌、拷問も嫌…まるで子供だな?貴様はこの国を混乱に陥れ、戦争まで引き起こしたのだ。表舞台に居ては処刑は免れないぞ?それに比べたら、言う方が得だろう?」

「駄目だ!!言ってもどうせ死ぬ…!!そういう契約だ!!」


アブソルが、裏返った悲鳴のような絶叫を上げた。

契約…?

その言葉には聞き覚えがあった。

ニルも、気が付いたようで舌打ちした。


「悪魔の契約書か。情報を吐けば貴様は消滅する。そういうことだな?」

「あ、ああそうだ…!嫌だ!死にたくない!」


この期に及んで死にたくないとは見苦しいことこの上ない。


「どうすんの?情報は引き出せそうにないわよ?」

「悪魔の契約書は、契約者二人の同意が無いと解除出来ない……。此奴から情報は引き出せない」

「じゃあ、殺す?」

「ヒッ!!」


私の言葉に情けない悲鳴が上がった。

生憎、腹に穴を開けられた恨みはある。

私は教会信者ではないので、慈悲の心など持ち合わせていない。

やられたらやり返す。

こんな薄っぺらい身体、獣人の私が本気で殴れば一撃だ。


「コイツに利用価値はもうない訳?」

「ん?利用価値ならいくらでも見出だせるぞ?」

「そ。だったら使ってあげたら?」


コイツを殺すことなど造作もないが、別に殺しがしたいわけじゃない。

どうでもいいのだ。


私は、人間に戻れさえすれば…それで。

アレ?

なんだか急に力が抜けて…?

私の視界は、二人の魔法使いの間抜けな面を写したのを最期に暗転した。





「ステラ!?どうした!?またどこかやられたのか!?」


突然、前のめりに倒れ込んだステラに、俺は慌てて駆け寄った。

抱き起こすが、既に意識を失っていて返事は帰ってこない。


「こ、これは…」

「なんだ!?貴様…また、あの時みたいに腹に穴でも開けたのか!?今度こそ木っ端微塵にしてやる!!そこを動くなよ!!」


なにか心当たりのある様子のアブソルに掴みかかる。

この男、一度ならず二度までも!

頸を締め上げていた、ガクガク揺さぶる。


「ま、待て!!我は何もしていない!!これはただの貧血だ!!」

「貧血?」


アブソルの頸を締め上げていた手を離して、眠るステラの様子を確認する。

顔色は悪いが息はあるし、目新しい怪我もない。


「我が開けた穴を魔法で塞いだのだろうが…。失われた血までは戻らない。普通なら助からないし、仮に生き残れても療養が必要な重症だ。それを無理して、半日も経たずにここまで来れば、意識も飛ぶだろう」

「冷静に言ってるが、元はと言えば貴様が原因だろうが!!」

「痛い!!悪かった!!もうその娘のことは諦める!!だから辞めろ!!」


元凶のくせに済まし顔のアブソルが気に食わなかったので、一発殴った。

悲鳴を上げて、完全降伏の意を示すように地にひれ伏すアブソル。

相変わらず声がでかい。


「だが、貴様」

「貴様?」

「……アナタはどうやって獣人のその娘を調教したのだ?」

「調教?そんなものした覚えはないが?」

「では、その娘は本心から魔術師を庇ったのか?獣人から見たら、魔法使いなど死んだほうが得だろう?」

「ま、愛されてるということだな!!なんせこの美貌だからな!!」

「……」


アブソルは、何も答えない。

ま、まあ良い…。

本題はここからだ。


「それよりも、アブソルとか言ったな?あの方とやらと契約したらしいが、他者との契約は禁じられていないな?」

「あ?ああ…」

「ならば、貴様には俺と契約してもらう」

「我が生き残るにはそれしか道が無い…そういうことだな?」

「分かっているではないか。少しは魔法使いらしくなったか?」

「抜かせ。で?契約内容は?」

「それはーーーー」

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