第2話…人生の目標?そりゃ女だろ?
クラージュの最初の記憶は空腹と寒さだった。
クラージュの両親が何者で、何故クラージュが貧民窟に1人で居たのかは解らない。
両親の記憶など何もないクラージュの最も古い記憶は、貧民窟の汚い裏路地に座り込み空腹と寒さに震えていた事。
そして…
「貴方は独りぼっちなの?
じゃあ、お姉さんと一緒に行こうか?」
そう言って、手を差しのべてくれた美しい森妖精の笑顔。
クラージュにとって金髪碧眼の美しい森妖精シシリィ・アナスタージア・ルオナヴェーラは全てを与えてくれた女性だった。
温かい食事の美味しさも、柔らかいベッドで眠る安らぎも、誰かに抱きしめられる喜びも、全てシシリィが教えてくれた。
だからクラージュがシシリィに恋をしたのは当然の事だっただろう。
美しく長寿で歳をとらない美女シシリィ。
全てを与えてくれた優しいシシリィ。
恋をしないのが可笑しいだろう。
「僕、大きくなったらシシリィと結婚するー!」
この言葉を言った時、シシリィは寂しそうな悲しそうな曖昧な顔で笑った。
「クラージュが大きくなって、私より強くなったらね」
そう言って、シシリィは顔を見られないようにクラージュを抱きしめた。
その日からクラージュの人生の目標が決まった。
早く大人になって、誰よりも強くなって、大好きなシシリィと結婚するのだと。
最高の女性を妻とする事は、世界中の富を得るのと同じ価値があると言う。
クラージュにとって、シシリィ・アナスタージア・ルオナヴェーラ以上の女性など世界の何処にも存在しなかった。
シシリィと出会った日を誕生日と決めて、15歳になったクラージュは冒険者になる事に決めた。
「必ず一流の冒険者になってシシリィを迎えにくるから!」
そう言って2人で暮らす小さな家から旅立とうとしたクラージュにシシリィは接吻してくれた。
唇が触れるだけの接吻ではなく、お互いの舌を絡めるような大人の接吻 。
思わずシシリィを抱きしめスカートの中に手を入れようとしたクラージュの手をシシリィは掴み。
また寂しそうな悲しそうな曖昧な笑顔を浮かべた。
「それはダメ…」
それ以上顔を見られないように顔を伏せたシシリィにトンっと軽く押されクラージュは小さな家を出た。
目の前で閉じた扉。
「絶対!絶対!シシリィに認められる男なる!」
そう決意を新たにして歩き出したクラージュが…
『クラージュが大きくなって、私より強くなったらね』
その言葉の意味を知るのは、ずっと後の事。
扉を閉めた森妖精の女性が泣き崩れていた事を知るのは、ずっと後の事。
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まあ、愛する女性と結ばれるために旅立った少年は、冒険者としての第一歩目で思いっきり躓いて問題児ばかりの一党の頭目になってしまうわけだが…