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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

仲が良いのか、悪いのか ーOGTNstory

作者: 伊原みい

「二人って仲いいよねー?」

気心知れた仲間に聞かれたら、

「仲良くないよ!」

って、ネタにして答えればいい。笑って、ケンカしてみせれば楽しく流せる。


でも、あまり知らない人に、

「二人って仲いいんですね」

って言われると……、ぼくはどう答えていいかちょっと悩む。仲良いと答えて詮索されるのもいやだし、仲が悪いと答えてノリをわかってもらえずに気まずい空気が流れるのもつらい。答えにちょっと迷ってしまい、ついターの顔を見つめてしまう。


こんなときターは、聞いた人のトーンをうまくキャッチして、まじめに「性格は真逆なのに、面白いですよね」と答えたり、笑いながら「いえ!仲良くないです!」と答えたりする。ぼくはターの答えを聞いて、それに合わせて話せばよい。話のうまいターが上手に話の流れをつくってくれるので、ついつい頼りにしてしまう。


そして今回の返答は、「仲良くないですよ!」と否定した。答えてから二人で仲良くないアピールをして笑っていたのだが。最初、相手はそのノリをわかってくれていそうだったのに、話し終えてみると、ちょっと仲の良さを疑われる結果となった気がする。中々難しいな、と思う。


ぼくはちょっと気まずくなって席を立った。ターにはさっと目配せしたからわかってくれるだろう。そこそこ広い宴会場。飲み物片手にうろうろしていると、少し離れた席で手があがったのがわかった。

「ネオーーー。こっち空いてるからおいでよー!」

ゴマが手をぶんぶん振りながら、こちらに向かって叫んでいる。隣ではオーが笑顔でおいでおいでと手を動かしていた。ぼくは呼ばれるまま、テーブルの隙間をぬって歩いていく。見ると、確かにゴマの隣の席が空いていた。

「座っていいの?」

「もちろん。いいに決まってるじゃん。話せる人が隣にきてほしいから、空けといたんだー」

いやいや。仕事の関係者が多いこの宴会場で席キープするって。ゴマなら、座っていい?って聞く人たちを笑顔で追い払っていそう。本当のところは知らないけど、たぶんその仮説は遠く離れていないはず。いつも通りのゴマのマイペースさが想像できて、ちょっと笑ってしまった。


「あれ? あいつはどうしたの?」

そうオーに聞かれて

「さっきまで一緒にいたよ」

そう正直に答えた。二人は僕たちの仲を知っている数少ない親友たち。特に隠す必要もないし、気兼ねなく話せる貴重な存在だから。


答えてからさっきまでぼくがいたテーブルに視線を移すと、ターがさきほど質問してきた相手と笑顔で話し込んでいるのが見えた。あれ? すごく距離が近い。相手の腕がターの肩にまわった。必然的に、二人の顔が近づく。

あー。もしかして、そういうことだったのか? それであの人はぼくとターの仲を聞いたのかな。ぼくたちが仲良くないと答えたから……。

「ねえ、ネオ、大丈夫? 何かあった?」

ゴマに顔を覗かれて、視線を戻した。


「なんにもないよ」

そう答えた。頭のなかではぐるぐると考える。席を立たなければよかったのかな。仲が悪いアピールなんてやめればよかったのかも。今、歩いていって、ターの手をとってこっちに連れてこようか。ふと、こっちを見つめているオーと目があった。


「オー。ゴマと二人でいるときに、二人って仲良いですね? って言われたらなんて答える?」

「ん? 仲良いでしょう〜、って答えるよ。で、仲の良さを自慢しちゃう」

にっこり答えて、ゴマと微笑み合う。まあ、そうだよね。二人はそれが自然だから。お似合いで、二人で可愛くてかっこいい。自慢されたら、きっと相手はそれ以上、下世話なつっこみはできなくなる。そういうきりっとした世界が二人にはある。それはオーとゴマが作り出す世界観で、きっと誰にも真似できないもの。

「だよね。二人の仲の良さは誰も邪魔できないもんね〜」

そういって二人に笑顔を返す。


うらやましいな。普段はオーとゴマのこと、そんな風に思わないのに。ぼくたちが言い争うのも、ケンカアピールするのも、お互いの信頼があるからこそだと思ってきた。でもこうやって、他人が急に間に割り込んでこようとすると、どうしていいのかわからなくなる。ぼくがターに直接的な愛情表現することはほぼないし、人に自慢したり人前で褒めたりなんてめったにない。だからオーとゴマのようにはいかないのはわかっているけれど。


「おまえらこそ、誰も邪魔できないだろー?」

そうオーに返された。

「ぼくたちは……」

仲が悪いからね! いつもならそう答えるのだが、口籠もってしまって、あいまいに笑ってみせることしかできなかった。


「ぼくたちは何だって?」

振り向くと、後ろにターが立っていた。来るタイミングが悪い。しょうがなく、答える。

「ぼくたちは、仲が悪いからねって言おうとしたとこ」

「なんの話だ? 俺、なんかした? そもそもお前、ここで何してるんだ? 席に戻ってくると思ってたのに。」

何をどういっていいのかわからなくて、ぼくはターを見つめて黙ってしまった。


「ぼくたちとデートしているだけだよねえ?」横からゴマが助けてくれた。ゴマはいつでもぼくにやさしい。

「ターのところにいたくなくなったから、こっちに来たんでしょ〜? だから今は、ネオはぼくたちのものー」そう言って、ゴマはぼくの体にぎゅーっと抱きついた。

「ぼくたちは仲良しだもん」

ゴマはにっこりと笑顔をターに向けた。上目遣いのゴマは可愛い。いつも惜しみない愛情表現をするゴマ。ゴマにつられて、ぼくも表情が緩んだ。


そうか。ターと仲が悪いって言い合うのはいつものことで、普段は冗談として言っているからまったく気にしてないけど。本気にされてしまったから……。


ぼくはゴマの手をゆっくりと外した。座ったまま、隣に立つターの腰に手を回してぎゅっと抱きついた。見上げると、ターのびっくりした顔。目を合わせて、ぼくは言った。

「ぼくらも仲良しだもんね?」


慌てふためくターの顔。ぼくはもう一度、腕できつくぎゅっと抱きしめてから、ぱっと体を離した。


目の前のオーとゴマもきょとんとしている。が、次の瞬間、大笑いされた。

「だから言っただろ。おまえらこそ、邪魔できないって」

そう、オーに言われて、ターの顔を見た。困ったような、やさしい表情でぼくをみているターを見て、やっぱり誰にも渡したくないと思ってしまった。ぼくたちの仲は大丈夫だよね? そう想いをこめて、ターの目をじっと見つめた。

「お前……」

そうつぶやいたターから、両手で頭をぐしゃぐしゃになでられて、ぼくはふふふと声が出た。普段は絶対に言わないけど、たまには声に出して自慢してもいいよね。

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