ある少女が巫女に弟子入りしたい話
六月だというのに、なぜこうも暑いのか。
少女は汗をダラダラと流しながら考える。
丸っこい水色の瞳に、ドレスのような巫女服。腰まである薄い水色の髪は、2つに束ねられている。
同年代と比べても、非常に背は小さく、147センチくらいまでしかない。
「はあああーーーーーーー」
長いため息をつくと同時に、少女は目的地についたことを確認した。
鮮やかな赤の鳥居、鳥居の奥には、小さな神社がポツンと立っている
握る手に力を込め、鳥居を潜ると人の姿が見えてきた。
少し特徴のある動きやすそうな巫女服、背は高く、膝まであろう長い髪は1つに束ねられている。
そして何と言っても、黒く鋭い目。
少女は震えながら、目を瞑り口を開ける
「ああののののののののののの」
「お、落ち着いて?」
震える声でのを連呼した少女に、黒髪の巫女は心配そうな顔で呼びかける。
「あの!私の弟子にしてください!」
「?????」
意味不明な言葉を叫んだ少女に、巫女は目を点にする。
すぐに自分の言葉の誤りに気づいた少女は、顔を赤くし、訂正した。
「ごめ、ごめんなさい。私を弟子にしてください!!」
「無理」
さっきよりも大きな声で言い切った少女に、巫女は即答する。
驚愕と絶望に顔を歪める少女の様子を見て、巫女は呆れたように
「私は依頼の解決や、妖怪退治を主にしているの。妖怪退治なんて下手したら死ぬし、依頼も妖怪のいる危険な山に登った人の捜索とかなの」
それに、と巫女は一息ついて
「あなた・・・・いいえ、お前、妖怪だろう?」
その瞬間心臓が止まったように感じた。
「・・・・・えっ?」
「わかるのよ、その雰囲気で。まあ、危険な感じはしないけれど。妖怪はお断り」
冷たく、突き放すように言い切った彼女に、少女は何か決意したように言い放った
「私を!あなたの弟子にしてくださいっ!」
涙声で同じことを言う少女に、巫女は困惑した
「・・・。あのねえ」
「私は渡り子です」
言い返す巫女の声を遮り、はっきりと、少女は言った
渡り子。色々な世界を行き来できる種族のことで、寿命は人間より10倍ほどあり見た目は人間だが、種族は妖怪なので差別の対象となる。
そして、何か1つ、能力を持っている。
「・・・・・・あなたの能力は?」
「喜怒哀楽を読み取る能力です」
巫女の問いに、少女は間髪入れずに答える
じっと睨みつけるような視線に、少女は見つめ返す
1分はたったというところで、巫女は諦めたように息をつく
「私ね、渡り子って、可哀想だと思うのよ。何千もある世界の中でここを選んでくれる。とても嬉しいことなのに、差別される。私は渡り子だからっていう理由は嫌い。危険で話の通じない妖怪ならまだわかる。でも渡り子って人間じゃない?私だって人間だけど能力は持ってる。渡り子とおんなじだよ」
「じゃあ・・・・・」
ゆっくりと話す巫女に、少女は期待の声をあげる。しかし巫女は首を横に振って
「駄目、妖怪退治は危険。喜怒哀楽を読むなんて妖怪には通用しないよ」
「そんなあ・・・・」
ここまで来て否定的な言葉を述べる巫女に、少女は残念そうな声をあげる
それを聞いた巫女はため息をつくと
「まあ、いくアテがないなら社務所を住処にしていいよ。神社を掃除してもらうけど。妖怪退治について行くだけなら守ってあげるし、ついてきたかったらついて来ていいよ。行くアテがないならだけど!」
口調が柔らかくなった巫女は、早口にいいあげる。明らかなツンデレに、少女は口元が緩み
「それじゃあ、お言葉に甘えて」
と言いながら、微笑んだ。
それを見た巫女は困ったように笑い
「それじゃ、これからよろしく。私は白黒陽『はっこくよう』っていうよ」
「よろしくお願いします。私は優『ゆう』って言います!」
「それじゃ、社務所に行くからついてきて」
「はい!」
元気よく返事をした優は、陽の後についっていった。
白い巫女服に夕日を浴びて進む陽の後ろ姿はとても綺麗だった