壱. 良い予感
「…………えー、、これは…どういう…」
目の前に置かれた罪人の顔写真と、トップの口から出た"罪人更生プログラム"というワードから導かれる話の内容と呼び出された理由。
先程までの様子が嘘のように表情が強ばった彼は、同期の言葉を思い出していた。
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数分前
異能犯罪を取り締まる警察組織"PSJ"
そこのトップである男に呼び出されたとなれば大抵の人は何があるのかと不安で仕方がないはずである。
だが此奴は違った。キリッと上がった眉、希望しか見えていないような輝く瞳、我慢しているのか口角が微妙に上がった口元、大股で1歩を踏み出す度に大きく前後に揺れる両腕。その様子を見た全ての人が、彼に良い事があったか、今から良い事でもあるのか、そのどちらかを想像しただろう。
実際彼もそうだった。
警察学校"PSSC"では在学中何度も優秀だと褒められ噂され、成績は実技座学とも常に首位。当たり前のように首席で卒業した直後、組織のトップに呼び出されたのだ。成績の割に短絡的な思考の彼の頭にはおめでたいことに良い事しか浮かんでこなかった。
「やっぱり即戦力として弌課に配属されるんじゃ、いや…そんな気がする。」
「お前の"良い予感"って大体当たらないだろ。逆にそういう時に限って悪い事ある気がするけど。」
教官に呼び出された事を話したら、同期にそんな事を言われたが今回ばかりは違う気がした。
.コンコン
「失礼します。」
扉に背を向けて立っていたトップが振り向いた途端に向けた笑みに違和感を感じながら、案内されるままソファに腰掛け、今に至る。