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いつの日か君の隣で  作者: 要
春は出会いの季節
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   幕間 〜 速水和繁

 マッチを擦り、ロウソクに火を灯す。

 線香を2本手に取り、揃えて火を着ける。

 線香を立てたら鐘を鳴らし、合掌。

 毎朝日課となっている行為を仏壇の前で終わらせると、私は大きく深呼吸をした。

 目の前にあるのは決して大きいとは言い難いが、黒檀でできた綺麗な木目の仏壇だ。仏壇の中では、妻である速水朋子がいつもと変わらぬ優しい笑顔で微笑んでいる。

「さてと、飯でも作るか。」

 私は両膝を“ポン”と軽く叩いてから立ち上がり、軽く伸びをしてからキッチンへと歩き出した。

 昨日も晃は遅くまでゲームをやっていたようだが、今日は起きてくるのだろうか?

 かつては反抗期だった晃も、朋子が亡くなってからは家事も手伝ってくれるようになって助かっている。とてと本人の前では言えないが、世間一般から見ても『良い息子』なのだろう。

 妻が亡くなったときは途方にくれてしまったが、今の生活にも随分と馴れてきた。このまま穏やかな日々が続くことを願う。

 私はカウンターキッチンの内側に入り、煉瓦色をした大きめの冷蔵庫を開けて中を覗き込んだ。

 中に入っているのは、卵とハム、あとは各種調味料ぐらいだ。以前は頑張って自炊をしていたが、食材を腐らせてしまうことも多く、今では朝食ぐらいしか作らない日々が続いている。

 いつもと同じで良いか。

 フライパンを火にかけ油をしき、卵を落とす。少しだけ水を入れ、蓋をして中火で5分。

 その間に、トースターに食パンをセットしてタイマーを回す。

 いつも通りの朝、いつも通りの行為。

 成功とは毎日の積み重ねの中にある。

 仕事もプライベートも一緒だ。コツコツと積み上げた者が、最後には勝つんだ。

 朝食一つで大袈裟だと思うかもしれないが、人生どこで転機が訪れるかは分からない。

 ん?何だか焦げ臭いぞ。

 振り返ると、フライパンから煙が立ち上がっていた。

 やばっ!焦げてる。

 蓋を開けると、見事に焦げた目玉焼きが4つ姿を現した。

 私もまだまだ未熟者だな。


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