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いつの日か君の隣で  作者: 要
春は出会いの季節
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   幕間 〜 戸田美桜

 武道場に戻ってきた私は袴紐を結び直し、長弓を肩にかけた。

 さっきまでの講堂での雰囲気を払拭するために、大きく息を吸う。

 一度胸に入った空気を下腹部『丹田』に移動するイメージで腹式呼吸し、口を窄め、ゆっくりと吐き出す。

 それを3回繰り返す。

 次に私は扉の前で一礼し、右足から弓道場に入った。

 弓道場内では端を歩き、神棚の前まで移動してさらに一礼。

 私は毎日、この一連の儀式とも呼べる行動を行ってから稽古に入る。

 別にこれが弓道を行う上で欠かせない礼儀でもないし、誰かに強要されてた訳でも無い。

 いつの間にか自分の中で決められた、言わばマイルールだ。

 しかし、この行動が私の集中力を高めてくれることは、紛れもない事実だった。

 振り返り、的に向かって一礼。

 弓を一本取り出して弦に添える。

 的に向かって、前後に足を開く。広さは肩幅。

 一度両手を上げてゆっくりと弦を引き絞る。

 左手と弓、そして右手の肘は一直線。

 雑念は捨てる。

 矢は射るのものではない。自然に手から放たれるものだ。

 空気を引き裂く音とともに、矢が放たれた。

 的までの距離は28メートル。

 矢はその距離を一瞬にして縮め、的に突き刺さった。

「少し右にズレたわね。」

 部活紹介で少し騒ぎすぎたのか。どうも集中力に欠けているらしい。

 時刻は14時を回ろうとしている。そろそろ部員達が集まってくる頃だろう。

「なあ、明日からチャリ通にしない?」

 自転車置き場の方から男子生徒の声が聞こえてきた。

 私はこの声を知っている。

 弓道に興味があるのだろうか。毎日自転車に乗る前に少しだけ弓道部を覗いていく男の子。

 「覗いていく」と言っても、決して他意はないように見えた。この学校は男子弓道部が無いから少し気の毒だ。

「う〜ん、考えとく。」

 珍しく女子生徒と一緒だ。

 誰だろう。一緒にいる子は見たことが無いけど、やけに楽しそう。

 まあいい。

 集中しなくちゃ!

 もう一度両手を上げてゆっくりと弦を引き絞る。

 右手から放たれた矢は的を大きく外れ、音を立てて土に落ちた。


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