9話 試験?で試練?
俺、冴恵先輩、瑛太、ボンちゃん、性徒会長の4人パーティーの俺達は、冒険者ギルドへと向かっている。
俺の前を歩いている瑛太の肩に、鷹が止まっている。
狩人のスキル【テイム】で、出来た相棒だそうで、とりあえずカッコイイ!
本当に、瑛太はちゃんとしているよ。
いいな! いいな! 魔法士ギルドの中に、召喚士という職業があったが、まだちゃんと学んでいないのだ。
俺も何かカッコイイの召喚して自慢したい!
今、現在、俺の職業といえる物は、魔道具士と言うのが正しいかな?
クーラー作って儲けてるしね。
スキルは【玉抜け】【魔力操作】【短剣術】に、【危険察知】【体術】が増えた。
この2つは、盗賊ギルドでシーフの訓練をしていて身に付いたスキルだ。
頑張って身に付いたスキルが、目に見えて分かるっていいよね! やる気に直結する。
流石、異世界!
でも、恐らく地球でも、そう遠くない将来、自分の才能が客観的に分かるようになるんだろうな。
遺伝子情報と、生活環境と、生活習慣を複合的にAIが、才能を判断してくれる世の中になるのを見れないのは残念だ。
いや、もしかしたら、冒険者ギルドにあるスキルを確認する魔道具は、そういう技術の果てに作られた物なのかな?
俺は何にも物を知らない。いや、知ろうとしてこなかった… ちゃんとしてないな…
魔法を使う事が楽しくて、特に【クリエイト】系の魔法で物作りにハマってしまい、いつの間にか1ヶ月経ってしまっていたよ…
他にやれる事あったかもしれないのにね…
まぁ、もう言っても仕方ない。気持ちを切り替えないと…
うん? 俺の中のスキル【危険察知】が働いた。
それも、冒険者ギルドに入る扉の向こうから、ビンビン感じる。
俺は足を止める。
「警戒態勢? 緊急避難? どうするかな?」
ちくしょう! こんな時の合図や行動指針を話し合っていなかった。
俺も、あの、冒険者見習い寮にいる奴らと、そうは変わらないって事ね。 当たり前だ、同じ時代の同じレベルの学校の人間達だ。
「どうする? ソラ?」
狩人の瑛太も、何かを感知したのだろう。
慎重になり、冷や汗をかいている。
「うーん、たぶん大丈夫だよ!」
俺達の緊張を壊したのは、冴恵先輩だった。
彼女は、冒険者ギルドの扉を開けてスタスタと中へ入っていってしまう。
「ちょ、ちょっと待って…」
俺は仕方なく、冴恵先輩に続く。
その瞬間、ゾクッと首筋が凍る気がした。
金属同士がぶつかる鈍いが甲高い「ガッキーン」とした音と共に、「バチバチ」という音が出たのを聞き分けられた者は、朝で混雑している冒険者ギルドの中にいる者達でも何人いた事か。
俺の斜め後ろに人が1人倒れている。
俺の首筋に、短剣を這わせてきた輩だ。
この1ヶ月間、近接戦闘で死ぬ事がないように盗賊ギルドで鍛練をしていた。 スキルだって【危険察知】【体術】が増えるほど、真面目に練習してきたのだよ。
日頃の練習の成果で、身体が勝手に動き、自分の腰にさしている短剣を鞘から抜き、誰かが俺の首筋に這わせてきた短剣を、自分の短剣で抑えられ、相手を倒せたとしたら、カッコイイのだけど…
俺がそれをなし得たのは、自分で作った魔道具のお陰なのだ。
ヘイストの腕輪で自分の行動を早くしたのだ。そして、スタンの短剣でビリビリの電撃を、相手の短剣を通じて感電させた。
【ヘイスト】は自分の行動が早くなったように見えるが、実際は体感時間を変更する時間魔法だったのだ。
周りはゆっくりと時間が進んで行く感覚。面白い。
【スタン】は、地球にもあるスタンガンの役目と同じ効果の魔法。
このビリビリには、大概の人は耐えられないだろうな。 でも、この世界にスキルや魔法があるので、【雷耐性】とかあったりすると想像はしているので、効かない相手も出てくるはず。
俺が今の戦闘をなんとか、くぐり抜けた瞬間。
「おう! おう! お前、今何したよ!?」
俺の目の前に、ボンちゃんよりは大きくはないが、カッチリした男が、いつの間にか立っていた。
あっ、ヤバい…
その男が、剣を振ってきたのだが、【ヘイスト】の効果中なのに、俺には早すぎて目で追えないし、躱す事もできなかった。
と、言う事はだよ… 実際に振るわれたその剣速は、冴恵先輩と同等?
コイツ、ヤバい奴…
だかしかし、俺のパーティーには盾役のスーパータンク、ボンちゃんがいるのさ!
ボンちゃんは俺に振り下ろされた剣を、最新の盾で防いでくれた。
ナイス! ボンちゃん! 俺が反応出来ないあの攻撃を、俺の後ろから出てきて止められるとは、ボンちゃん、アナタどんだけ鍛錬してきたのさ…
才能もあったのだろうが、凄いな… ちゃんとしている…
そして、その男の剣がいくら早くて鋭くても、盾に防がれ、ほんの一瞬だけ停止する。
そのほんの一瞬でいいのだ。
そのほんの一瞬で男の首に、冴恵先輩の刀が当てられ、この騒ぎが終わった。
因みに、瑛太は男の仲間らしき、魔法使いに狙いをつけ、弓を引く姿勢を保っている。
性徒会長に至っては、冒険者ギルドに入りもしていない。 本当に要領がいい奴だ。
恐らく、この男、倒れている人、魔法使い、あと何処にいるか分からないが視線を感じる、この数人編成のパーティーが、指南役なのではないかな?
なんだろ? 試されたって事かな?
「えーと、おはようございます!」
先ずは、挨拶! コミュニケーションの基本だよね。
「お、おう? おはよう?」
大男は、いきなりの俺からの挨拶に、たじろいでいる。
どうだい? この俺のコミュニケーション能力!
ついさっきまで、殺されかけたのを忘れたかのような清々しい挨拶。
あれ? おかしいな? なんだろう? ギルドの中にいる冒険者達全体が、こっちを見ているよ?
この嫌な視線… 値踏みされてる感じかな…
このギルドに入ってから、今までの事は指南役パーティーのお試しテスト、おふざけも混ざってるのかな?
「はぁ、なんか気が削がれちまったな… おい、コラ、起きろ! デポン!」
そう言いながら、俺の横で倒れている人物をコズいている。
「う、うぅぅ… 痛たた… やられちったよ… ごめーんね?」
あー、この子… お胸はぺたんこだが、女の子でござい。 やっちまったね、ゴメンよ…
俺のスタン短剣でやられていた女の子、俺らと歳頃は変わらない様に見える。
その様子を見ていた瑛太は、弓矢を収める。相手の魔法使いの人が近寄ってきた。
「なかなか、良いパーティーだね!? 大金出して指南役とか要らないんじゃない?」
「まぁ、そうだな… このタンクの兄ちゃんと、狩人の兄ちゃんは合格だな! そして及第点でプリーストの兄ちゃん、あそこまで徹底して攻撃に参加しないとは面白い」
「えー、えー、えー、それじゃ、私は? 私は?」
冴恵先輩が、ガッチリ男に向き合って自分をアピールしている。
「おまえは… もう、合格とかのレベルじゃないからな… どこのバケモノだよ…」
「うん、うん、そうだろう! 我がパーティー最強の剣士だからな!【天剣】持ちは伊達じゃないぜ!」
「お、おう、そうか、とりあえず、おまえは… ちゃんとしてねーな… 不合格だ…」
俺、頑張ってたよ? いきなりの不合格発言に焦る俺だった。




