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6話 お金大事 命大事


 早いもので異世界転移にあってから、1ヶ月が経ったある日の事だ。


 俺は最近の日課になっている、盗賊ギルドでの鍛錬をこなしてから、魔法士ギルドへと戻る道すがらに、冴恵先輩に出会った。


 何故、盗賊ギルドにいるかというと、冒険者における職業別、死亡率が1番高い職業が魔法士という事実を蒼炎の魔女メリスに教えてもらったからだ。


 殺傷能力の高い魔法士が、死亡率が高い理由はただ1つ。

 近接戦闘能力の低さによるものである。


 1度に100匹の魔物を倒せる魔法を撃てたとしても、何かの理由で魔物に近寄られた場合。

 近接戦闘の準備がないか、能力の低い魔法士は、それはそれは、呆気なく死ぬそうだ。


 特に下級の魔法士に多い死亡理由だ。


 よって、運良く俺には【短剣術】のスキル持ちだった事もあり、蒼炎の魔女に近接戦闘訓練を命ぜられた次第です。


 生き抜き上級、特級にまで辿り着ける魔法士は凄かった。

 俺は蒼炎の魔女に推薦を貰ったので、弟子扱いになっていたのだが、彼女の特級までいった理由を見せつけられた事がある。


 まず、第1に、魔法陣を描くスピードがハンパない。

 【蒼炎ファイアーボール】の魔法陣なら1秒掛からずに描き発動させられるのだ。

 近くに寄れる気がしない。しかも、彼女は両手で一気に魔法陣を2つ描ける。1秒以内にだよ?

 

 化け物だよ…


 才能の差と努力と経験の差、科学の知識がある俺は特級魔法士、蒼炎の魔女メリスより新しい魔法を創るのに適した人間ではあったが、魔法の才能に至っては雲の上の存在だった。


 別に負けず嫌いで言っている訳ではないが、俺は特級なんて目指していない。

 安全に普通の暮らしを送れるだけの強さがあればいいのだ。


 しかし、俺達が勇者召喚のように、誰かに召喚された可能性がある限り、最低限の強さだけでは、自分の生活どころか、生存の権利さえ、手放さざるえ無くなる場合がある。


 俺達は、いや、俺だけでも、権力に屈しないだけの強さの用意は必要だ。


 この1ヶ月かけて分かった、俺の魔法の才能のレベルから言って、魔法の強さだけで、その強さを手に入れるには時間が掛かりすぎる。


 毎日コツコツと魔法の鍛練を積み上げ、冒険を絶えず行い経験値を上げていっても、蒼炎の魔女メリス姉さんレベルになるのに、数十年の月日が必要になるだろう。

 下手したら数十年、老人になるまで続けても届かない可能性の方が高い。


 それが、才能の違いというものだ。

 別に理不尽だとは思わない。この才能によって優劣が決まる事象は、地球にいた頃から、生まれた頃から、全くかわらずそこら辺に転がっている。


 俺は、そこそこ、中の下くらいでよかったのにな…

 平均点とか普通とか最高だ。


 学校のテストでも、ワザと平均点を狙って取るのが俺の密かな楽しみだったのに…

 こんな異世界に来てしまった事で、普通でいる事が許されなくなってしまった。


 困ったものだ。


 俺は、魔法士以外の方法も使って強くならなければ…


 しかし、その方法にも目処がたってきた。


 その強さとは、金の力だ。


 魔法士ギルドと言っているが、そのギルドの中には色んな職業が入っている。


 魔法攻撃士、魔法付与士、召喚魔法士、魔道具士、魔法薬士、様々な魔法を使う職業の者たちが集まり出来たのが、魔法士ギルドであった。


 魔法で戦う才能が無くとも、強くなる方法はある!


 強さには、色々な物があるのだから。


 俺は、新しい魔法を創るのが得意な事から、目を付けたのは魔道具士と魔法薬士だ。

 まあ、他の職業も試しながら、やっている。

 それに、得意と言っても、その発想は現代地球で学生をして、ある程度の科学の知識があれば、誰でも思いつくくらいの物だけどね…




 今の季節は初夏に入るかどうかといった所らしい、暑いの嫌だ。


 俺は、地球にある歴史上、至高の発明品の1つ、クーラーを作りあげる事に成功した。


 凍らせる、冷やす、その様な魔法は、この街の魔法士ギルドには無かった。


 氷結の魔女の得意分野で、蒼炎の魔女とは犬猿の仲らしく、このギルドには氷属性の魔法は置いていなく、研究もされていない。


 それでは自分で1から作りあげるしかなかったが、俺は基本的に何かを作る行為が好きなようだ。


 地球にいては発見できなかった自分の事だった。


 クーラーをお買い上げになるお客さんは、貴族が8割、後の2割は公共機関と商人が占める。


 最初に、貴族がリビングで使い始め、1度クーラーの有難みを知ってしまうと、もうダメだろう?


 各寝室に1台、置きたくなるよね?


 そして、クーラーの有難みを知ってしまった貴族の出掛け先、公共機関や大商会に置かれ始めていく。


 創った傍から売れていく。魔道具を売るには所属している魔法士ギルドに、上納金を納める必要があるらしく、蒼炎の魔女の弟子というネームバリューで割引される訳もなく、結構なお金を上納したが、着々と金は貯まっていく。


 なんと、クーラー1台、金貨50枚で商業ギルドへ卸しているので、商業ギルドにも上納金が発生してしまう。

 まぁ、俺には貴族関係者に売るコネクションなどある訳もなく、貴族向けの装飾などを職人に作って貰う必要があるので、商業ギルド頼む手間賃だと思っている。


 魔法士ギルドと商業ギルドへの上納金の合計、クーラー1台売るにつれ、金貨20枚、利益は金貨30枚。


 この1ヶ月でクーラーは、100台ほど卸している。【クリエイト】系の魔法様々だよね。


 職人にも仕事が周り、商業ギルドからは感謝され、魔法士ギルドも何もせずに金が入ってくるのだから、魔法士ギルドマスターはホクホク顔だ。


 この街の魔法士ギルドマスターとはメリス姉さんだったんだけどね…


 そんなこんなで、俺は月に、金貨1500枚の収入と、万年筆の特許料が、金貨300枚以上を得る事に至った。

 合計金貨1800枚だよ? 日本円換算、月収約1億8千万円以上。

 

 普通に暮らして行く分には、十分な資金になっていくだろうが、勇者召喚など人が関わった異世界転移となると、国単位の力がないと行う事など出来ないはず。

 そんな相手から、自由と生存の権利を勝ち取る場合、金で取り引きするならば数億円などはした金だろう。 国家予算何年分とかではないと、取り引きにならないと考えるのが普通ではないかな?


 よって、金の力を手に入れる為の努力も惜しまない為に、手っ取り早いのは魔法の力を上げる。

 結局は、そこに戻る気がするな…


「おーい、ソラくん!? ねぇねぇ! 聞いてる?」


 おっと、そうだった、そうだった、久しぶりに冴恵先輩に会っていたのを忘れてた。


「えーと、冴恵先輩! 久しぶりですね! お元気でしたか… うん?」


 あれ? 気の所為かな? なんだろ? 冴恵先輩が汚い…? うん? 臭い?


 不思議だね、あんなに可愛いくて良い匂いを振り撒いていた冴恵先輩に、この1ヶ月で何があったのだろうか?

 あー、そう言えば、この街に着いた日に別行動してから会ってないから、1ヶ月何をしていたとか何も知らん。

 そう言えば、金を貸していたよね!


 どれ程の返却率になっているだろうか?

 1人金貨2枚を貸し与えたのだ。


 地球からきたアドバンテージを発揮しようとしまいと、暮らしていく目処をたてられた事だろう。

 そろそろ金を返却してくる輩もチラホラ現れても良い頃合だろうな。


 そう思い、冴恵先輩を見る… とりあえず、【クリーン】を掛けておくか… くちゃいのは可哀想なり。


 冴恵先輩の身体が光る泡に包まれ、見た目からさっぱり汚れが落ちている。

 うん、うん、石鹸の良い匂いだ。

 匂いなどは、まだ改良の余地がある魔法だよね!


 ポーションとして調薬して、シャンプーや石鹸として売り出せば、良い商売になるかもしれない。


 頭の中でメモをしていると、冴恵先輩が驚きの声を上げた。


「凄い…! なにこれ! 気持ちイイよ!! 久しぶりにお風呂入ったみたいにサッパリしたよ〜〜 ありがとう! ソラくん!!」


 俺の手をとり、喜ぶ冴恵先輩。


 うん? 風呂? 風呂の付いていない宿にでも泊まっているのかな?


 そう言えば、俺はずっと魔法士ギルド職員寮に寝泊まりしていたから、普通の宿屋がどの様なレベルの物なのかは確認していなかった。


 魔法士ギルド職員寮は、地球出身の俺でも驚く設備もあり、不自由感は無かったので、生活環境はギリギリクリアしていたと思う。


 欲を言えば、寝具などとアメニティの改良をはかればもっと快適に過ごせるのではないか?

 言い出せばきりは無いが…


「私達、この1ヶ月… 冒険者ギルドの見習い寮に入っていたから… 井戸の水で、体は拭いたりはしてたんだけどね… 冷たいし… 石鹸なんてないし…」


 あれ? 冴恵先輩が泣き出してしまったよ?

 どうしよ? えっ!? でも、金貨2枚もあれば泊まる所ももう少し、ランクの良い宿に行けるのでは?


 冒険者は見習いの内は、寮に入らないといけない決まりでもあるのかな?


 そんな事、俺は聞いてなかったぞ?


「その… みんな、お金無くて、ちゃんとした宿屋にはなかなか泊まれなくて…」


「はぁ? ちょっと待ってくださいよ!? お金! みんなにちゃんと金貨2枚づつ貸したんですよね?」


「うん… 装備整えたり… 生活必需品揃えたりしてたら… 金貨2枚なんて直ぐに無くなっちゃってね…」


「いや、いや、装備って… 見習いは狩りの依頼なんてないじゃないですか!? 街の中での依頼だけだよね? 装備いらないよね? えっ!? 生活必需品って何? 俺は、この街で何か生活用品買ったのって… 最初にこの服買っただけだし… 他に何か必要な物ってあったっけ…!?」


「え〜! そんな… 女の子は… 色々お洒落したりとか…」


 頭が久しぶりにクラクラしてきたぞ…


「もしかして… お金の返却率ってどうなっていますか?」


「えっ!? あっ、お金は…」


 うん、全く返して貰ってないのね…

 まぁ、既に商業ギルドから融資された金貨300枚は、俺の稼ぎで利子を付けて返却済みだ。


 そんな事を、この人達に言ったら本当に返して貰えなさそう…


 よし、とりあえず、俺はこれから、地球出身者と関わらない方向性で行こう。


「あー、そう言えば、俺、少し用事があるんだった! それでは、冴恵先輩も頑張ってくださいね!」


 ササッと踵を返す。


 だか、流石、チートなスキルを沢山持っている冴恵先輩。

 素早く俺の肩を掴んで離さない。


 あれ? 痛いよ? 冴恵先輩? 何、その必死顔!? うん、うん、可愛いから許してあげようか。


「あのね… この1ヶ月でね… 37人… 死んじゃったんだよ?」


「うん? 死んじゃった? 37人って、そりゃ、これくらい大きな街なら、それくらいの人数は死亡するかもしれませんかね?」


「違うよ!! 私達123人の内37人だよ!?」


「・・・」


 はぁ? 37人? この世界に来てしまった俺達、123人中、37人って事? えっ!?


「怪我しちゃって、動けない人は… もっといっぱいいるしね… どうしよ? ソラくん? 私達、どうすればいいの!?」


「どうすればいいって… 何で俺にそんな事を… ほら、あの生徒会長とかは?」


「あー、アイツはね… ダメな奴…」


 冷たい目になる冴恵先輩。


 何となくだが、分かってしまう。 あの生徒会長なら、アイツらを見捨てたんだろうな…

 だって少し言動を見ていれば、こうなる事も分かっていて、真面目な生徒会長のままなら全ての鬱憤が集まる。


 だから、この世界にきたその日には、生徒会長は頼りにならないように、人望を無くす発言をし始め、本格的に皆がダメになった時には、逃げ場所を用意しておいてあったはずだろう。


 あの生徒会長… ズルいよ…


 これ、俺、知っちゃったよ?


 安全第一で、生活環境を整え、強くなる。


 アイツらが死んで、1人になってもそれを目標にして生きていけるだろうか?


 目の前にいる冴恵先輩。彼女は何処までアイツらに付き合うのだろうか?

 冴恵先輩なら足を引っ張るアイツらが居なければ、上級、特級の冒険者として羽ばたける才能、スキル持ちだ。


 あー、あ、どうせ俺が何か進言したとして、この人は最後まで皆の面倒みながら、いつか… そう遠くない未来に死ぬんだろう。


 生徒会長のやり方が正しい。

 だがしかし、俺は弱い… 本当に才能のない自分が嫌になる。


「それでね… 真理ちゃん達が昨日ね… ゴブリンに攫われて… 助けに行きたいの… でも、師匠に、パーティーをしっかり5人以上で組まないと救出には行ってはダメだって言われてて… ソラくんを探していたの…」


 あー、本当にもうよく分からない状況だよね?

 37人も死んでて、重症者多数いて、それでもゴブリンに攫われるって事は、この城壁都市から出てたって事。

 ここまで、学習能力がない人間がいるなんて…


「真理ちゃん達は攫われちゃったけど、パーティーの男子達は無事だったから、場所は教えてもらえたし、パーティーの人数さえ集められれば、助けに行けるよ! ソラくん!」


 うん? 何? 俺ってもう助けに行くパーティーに数えられてるの? えっ!? なんで?


 あっ、俺、1ヶ月前に、冴恵先輩とパーティー組もうとか持ち出してたね…


「ちょ、ちょっと待ってください! 冴恵先輩! その無事だった男子生徒達に責任取らせて、助けに行かせればいいじゃないですか…」


 俺の言葉に、冴恵先輩は表情を無くしながら教えてくれた。


「あの人達は、もう剣とか握れないし… ちゃんと走ったりも無理になっちゃったから… 助けには行かせられないかな…」


 うん?うん… なるほど… 剣が持てない病気と、上手く走れない病気になっちゃったんだね。

 もうそれ以上は聞かない事にしよ。


「攫われたのは、昨日でしたよね? まだ生きている可能性は…?」


「師匠の話しだと、ゴブリンは女の子を攫って捕まえると、1人づつ苗床にしていくんだって… 体力のない子から苗床にされていって… 攫われたのは、真理ちゃんと未来ちゃんと栞菜ちゃんの3人だから… まだ1人か2人なら助けられるかも…」


 うん、そうだね… 1人づつ苗床?にされていくのを1日1人って計算なら、助けられる可能性はあるよね。


 数時間に1人づつなら?


 もう皆さん仲良く苗床になっているはず。

 ところで、苗床って… 苗を育ててる場所って意味だよね? 女の子が苗床になるって意味は… 子作り専用道具になる、みたいな意味合いでいいのかな?


 確認するのが怖いから聞かないけどね。

 願わくば、大切に道具にされている事を祈るばかりだが…


 そんな可能性なんて… もうその事は考えるのは止めだ! 思考が停滞してしまうから…


 よし、今、俺が成すべき事はなんだろうか?


 先ずは、優先事項の最上位、女子生徒救出ミッションを行うかどうかを考えよう。


 他の事柄はそれに比べたら、優先順位は低くなるよね?

 既に死んだ人の事を、それを改善させる事柄は時間もかかるし、病気や怪我の人もいるらしいが、今すぐ命が無くなる訳ではないだろうから…



 うーん、女子生徒を助ける事に手を貸すか、無視をするか。


 そうだ! そう! 手を貸す! そのくらいの立ち位置でいこう!


 よし、それでは、救出に手を貸す事にして、何を手伝うか?


「冴恵先輩、救出作戦を俺達が行うのではなく、誰か、慣れている上級の冒険者に依頼を出すのはどうでしょうか?」


「うん… 私もそう思って、冒険者ギルドに依頼しに行ったんだけどね… 大きく巣くったゴブリンの集団から救出させる行為は無謀な上に、救出成功の見込みの低い衣類になっちゃうんだって… だから依頼失敗になり経歴に傷が付くから誰もやりたがらないんだって…」


 ふむ、至極真っ当な考え方だ。

 依頼失敗が最初から分かっている依頼を誰が受けるというのか… この事から考えられる可能性は、苗床になる時間は、思っているより早いかもしれないという事だろうな。


 何にしろ、俺と冴恵先輩だけでは人が足りないだろう。 せめてあと、2〜3人のダメじゃない人材がほしい。

 別にそこまで使えなくてもいい、ダメじゃなければいいのならば、生徒達の中にもいるのではないだろうか?


 あれ? そう言えば、瑛太ってどうしてるんだろう? 完全に失念していた。

 生きていれば瑛太は決定だな。


「冴恵先輩! 瑛太って今どこにいるか分かりますか?」


「瑛太くんって、ソラくんと一緒にいた子だよね? あの子なら下級冒険者になれて、冒険者見習い寮は出て行ったよ?」


「おぉ〜! それ、それ、そう言うの待ってました! 瑛太の宿はどこだか分かりますか?」


「私は知らないけど、誰かに聞いてみれば知ってる人もいるかも…」


「よし! それじゃ、知ってる人がいるか、探してみましょう!」


 この時はまだ、瑛太を探す為に、冒険者見習い寮に行ってしまった、自分の愚かさには気づいていなかったのだ…


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