5話 蒼炎の魔女
俺達3人は無事に、冒険者見習いになる事が出来た。
見習いとは、まだ冒険者における職業に就く事ができない者達の事で、職業が決まれば下級冒険者になれるらしい。
その上に、中級、上級、特級があるそうだ。
まずは、下級冒険者を目指して、職業ギルド登録だな。
とりあえずは、これから、俺達は見習い冒険者の依頼をこなしながら、職業ギルドに登録し、その職業の腕を磨いていく。
冴恵先輩は、剣術ギルドへ登録1択。
生徒会長は、聖者が持っていたスキル【信仰】がある事から、受付嬢に神殿ギルドを勧められていた結果、プリーストを目指す事になった。
俺? 俺は特に勧められた職業はなかったけど?
HAHAHA! 俺、別に、切なくないよ?
自由が1番!
さて、どこのギルドに入ろうかな〜
「うーんー、俺は魔法士ギルドにするかな… 後衛2人で前衛は冴恵先輩に頼りきりになるのは悪いけど…」
「あっ、魔法士ギルドには魔法が使えない人は登録出来ませんよ?」
受付嬢が親切に教えてくれた。
「うわぁ!! よかったね! ソラくん! 魔法使えるから魔法士ギルドで決まりだね!」
自分の事のように喜んでくれる冴恵先輩。
アナタは天使。それは分かっているが少し黙ろうか。
「へぇ〜、魔法使えるんですか!? どこの魔法学院卒業ですか? それとも中退魔法士?」
驚いたように、受付嬢が聞いてきた。
ほら、余計な事言うから、めんどい事になってきたよ… 中退魔法士ってなんだよそれ…
たぶん魔法学院って所は学費が、高いのだろう…
だから中退する奴も多くて、そいつらの就職先は冒険者と? そんな所だろうな…
「彼は… その、家庭教師付きですよ!」
生徒会長が適当な事を言い出す。
「へぇ〜、見た目に寄らず、お金持ちの家出身なんですね〜!?」
商家のボンボンの三男坊くらいに見られたかな?
それくらいの立ち位置、嫌いじゃない。
冒険者ギルドで登録を済ませた俺達は、門に向かう組と、魔法士ギルドへ行く組に別れた。
ぶっちゃけ、俺は他の奴らの事など、どうでもいい。 早く、魔法士ギルドに登録したい。
一応、冴恵先輩にはお金は冴恵先輩が商業ギルドから借りた事にしてもらい、契約魔法で金を返せないと奴隷落ちのストーリーを吹き込ませておいた。
ちゃんと皆に言えるだろうか? まぁ、生徒会長もいるし大丈夫だろう。
本当の事を言っても、誰も幸せになれないからな…
冒険者ギルドの受付嬢に教えて貰った、魔法士ギルドの場所に着いた。
物理的に重たい扉を開き、ソロりと中へと入る。
「すみませんー、どなたかいらっしゃいませんかー?」
受け付けカウンターの前で大声を出す。
久しぶりの大声に、クラクラしてしまった事に驚く自分。
「ウルサイえ… 大きな声はクラクラするから止めとくれんかえ…?」
のそのそっと黒い服に、とんがり帽子の女性?が出てきた。 女性というか女の子?
ジロジロ見る俺に機嫌を悪くしたのか、ぶっきらぼうに話しかけてくる。ちびっ子。
「なんじゃ? ホビットを見た事もないのかえ? ワッチはこう見えて、ソナタよりずっと歳上のお姉さんじゃえ…」
そ、そうなのか? ホビット… よくファンタジー物に出てくる小さくて人間に似た生物。
ホビットが人間よりも遥かに長い寿命だったかは知らないが、やはり、この世界も女性に年齢を聞いたら失礼になるのだろうか?
「あぁ… 年齢は24才じゃ? 特に寿命の長い種族じゃないえ?」
「そ、そっすか… それは、それは、なんと言うかお若い…」
24って微妙だな… 100何歳とかならロリババアとかってなるのに…
どうも、キャラがたたん、このお姉さん。
「今日は、依頼かえ? 登録かえ?」
気だるそうに聞いてくるチビ魔女。
「えっと… 登録でお願いします」
「そう… どこの学院卒かえ?」
「いや、どこも卒業していなくて…」
「なんじゃ… 中退者かえ…」
気だるさが一気に増していくのが分かる。
はぁ、まだ人がいるのにその態度じゃ、受付嬢務まらないぞ? まぁ、最初から席外してるし、態度悪いし、商業ギルドとは大違いだな…
「まぁ、ええわ、早速、実技テストじゃ、得意魔法はなんじゃえ?」
「えっ!? 得意… 魔法… 火魔法とか?」
今、俺が使える魔法は【ファイアーボール】と【クリエイト・ウォーター】の2つだけ。
流石に生活魔法の【クリエイト・ウォーター】が得意とか言ったら落とされそうだし…
「そうかえ、普通じゃな… それじゃ、アソコの的に向かって撃ってみるえ」
100m程離れた場所に、鎧を付けた案山子が立っている。
直感で分かる。俺の【ファイアーボール】では、あそこまで届かない。
というか、あれはただ投げている様なものだし。
さあ、どうする?
もちろん、魔法陣を改造するしかないよな…
よし… ぶっつけ実験の時間だ。
魔法実験実証5、俺は魔力を指先に溜めて放出させていき、空中に記号や文字で組み合わされた魔法陣を描いていった。
魔法実験考察5、魔力を多めに使うなら、魔法陣を大きくする必要があるのかな?
こっちをイジって発射速度を向上させてみるか?
打ち出す瞬間に、手元で指向性の爆発を起こしてみようか。
この【ファイアーボール】であの、案山子まで届かせられたとして、燃やし破壊できるだろうか?
当たっても火傷もしない【ファイアーボール】とかになったら目も当てられん。
純粋に炎の温度を上げよう。
その為には… そうだ! ガス! ガスを魔力で作り出す?
それでは、また魔力量が嵩んで魔法陣が大きくなってしまう…
大気中の成分でガスを作り出す。
今、すぐに思い出せるのは、メタン! 確かCH4! 炭素分子1つに、水素分子4つ!
大気中の炭素と水素を集めてCH4に結合させる文字と記号を魔法陣に描き変えて、酸素を流し込む。
これを圧縮させたら威力上がりそうじゃね?
凄い熱量になるよ!!
HAHAHA
喰らえ! 案山子! 魔法実験確証5、【ファイアーボール】!!
指向性の爆発を加えられたそれは、爆音を轟かせ青白い光線になり真っ直ぐに鎧案山子に着弾する。その間わずか0.5秒も掛かっていない気がする…
あれ? 音速超えてないかい?
あれ? 鎧を着た案山子さんどこいった?
ああーー、なるほど… 一瞬で消し炭になったのかな? 残り火が青白く蠢いている。
ふう… 魔法って、すげー!!
ってか、これ、もう【ファイアーボール】じゃないよね? 違う魔法になってるよね?
「な、な、なんじゃ!? それーー!? 何故じゃ? 何故、ヌシが蒼炎を放てるのじゃ!?」
「うん? 蒼炎? あー、まぁ、青白い炎だからか」
「それは、ワッチの魔法じゃえ、この蒼炎の魔女メリス! これが、ワッチの2つ名じゃ! 知っておろう!?」
「いや… なんていうか… ゴメン… 知らなかった… これからはこの魔法【蒼炎】って言うよ」
それから一悶着あり、(蒼炎の魔女メリス姉さんが、自分の魔法を素人に真似された事にショックで泣きじゃっくっていた)結果、俺の魔法士ギルドへの推薦人にメリス姉さんがなってくれた。
魔法学院の卒業生ではない者は、推薦人が必要なのだそうで、ほとんどの者は師匠に頼むらしいのだが、俺には師などいないので、メリス姉さんにお願いしたら、しぶしぶだがOKしてくれ、めでたく俺も魔法士見習いになったのだ。
「全く… 魔法の起動途中で、魔法陣を描き変えるなど前代未聞じゃえ… それで… ヌシは他に何の魔法が使えるのえ?」
「【クリエイト・ウォーター】かな?」
「生活魔法を魔法に加えるな! 他は?」
「以上っす!」
「はぁぁーー!? おヌシはそれでも魔法士かえ??」
「あっ、はい。 なんか、すみません…」
「クラクラしてきたえ… 特級魔法の蒼炎が使えるというのに… もったいないえ? 精進せえ」
「仰る通りで… それで、どうやったら新しい魔法って覚えられるんすか?」
「はぁぁーー!? そんな事も知らんのかえ??」
飽きられながらも、メリス姉さんは色々教えてくれたのだった。
新しい魔法を覚えるのには、簡単に言うと金を出して買え! との事。
とりあえず俺は、生活魔法の【クリーン】と【ストレージ】下級魔法の【スタンボルト】と【エアカッター】と【アースバレット】を買った。
魔法を買ったと言っても意味が分からないだろう?
金を払って、その魔法の魔法陣を教えてもらえるのだ。
そして、後はその魔法陣を上手く描けるように、ひたすら練習。
間違えた魔法陣を描いても、魔法が発動しなかったり、爆発したりと禄な目にあわないそうなので、蒼炎の魔女メリス姉さんには口酸っぱく練習しろと言われた。
生活魔法は1つ金貨1枚。 下級魔法は1つ金貨5枚。 合計、金貨17枚の大盤振る舞い。
これで手持ちのお金は、金貨39枚と銀貨が19枚と銅貨が87枚。
何とか暮らしてはいけるが、何年も仕事をしないで暮らしていける程の貯金額ではないよな。
仕方ないが頑張って働かないと…
一緒にこの世界に転移した生徒の中では、まだ運の良い方だろう。
なんせ、冴恵先輩とパーティーを組む事に成功したのだ。 冒険者として、普通かそれ以上の収入を得る事が出来るかもしれない。
お金に関してはそれ程心配ないが、問題は身の安全と生活環境。
さて、どうやって整えていけば平均点を取れるだろうか… 頑張ってみますかね…




