17話 あーそーぼ?
悪い事を思いついた。
先達の言う事は、ちゃんと聞くべきだよね?
もうね、燃やしちゃおうかと思うんだよね。
俺達『スレイヤーズ』は、『マーダー・インク』一味から得た情報から、もっと上の情報を持っていそうな人間を教えてもらい、そこへ向かう。
「トントントン、すみませんー、使いの者ですが、ロンダーさん居ますか?」
俺達の格好は、裏町の子供の住人の様な格好で、背格好は元の俺達とはぜんぜん違う。合っているの性別くらいかな?
【カモフラージュ】
それは、変装、変身、迷彩、見た目だけを変えられる魔法。
見た目だけだから、触ったりしたらすぐバレるんだけどね。
「おう? なんだ? 宅配か?」
「いえ、月明かりの踊り子です」
「そうか、入れ」
何の感情も無く、部屋に招き入れられた。
「今日は、人数が多いな? どうした?」
宅配か? いえ、月明かりの踊り子です
それが、命令伝達の合言葉になっているらしい。
「はい、それが、ロンダーさん、アナタが知っている『マーダー・インク』の情報を教えてほしいんだよね?」
【トゥルー・ワード】
「はぁ? そうだな、今は…」
ロンダーさんは、今抱えている作戦概要を教えてくれた。
俺達『スレイヤーズ』と同郷の日本人達の弱みを握り、脅し、人質とし、俺達に少しだけ悪事を働かせ、報酬を出す。
1度、やる奴は、そこでお終いだ…
脅され続け、俺の特許料を奪い取り、女子生徒は皆、娼館行き、今も何人か働かせているらしい。
既に、そこまで、手が伸びていた…
いくら、ちゃんとしていなくても、流石に死に過ぎだと思っていたら、それを促す奴らの存在がいた事に、気付かずにいた。
騙された方が悪い?
何その理論、絶対的に騙す奴が悪い。
同郷の奴らは、ちゃんとしていなかったのか、ちゃんと出来なかったのか、負の連鎖に堕とす存在がいるとすると、話しが違ってくる。
賊=ゴブ
冴恵先輩は、流石【天眼】の持ち主だね。上手いこと言う。
ただ、ゴブより、タチが悪いかもしれない…
タチの悪い相手なら、こちらもタチが悪くなればいいのだ。
正義? はぁ? そんな事言う奴全く信用できん。
地球では、正義の名の元で、何が行われてきたのか、大抵の人が知っているだろう。
悪の名の元で、戦争とか虐殺とか差別とか、やってくれると分かりやすいのにね…
だから、俺達は分かりやすい悪になろう。
相手に合わせて、こちらもそれ以上をやり返す。
しかも、徹底的、もう手を出したくなくなるくらい、嫌がらせをしてみようよ。
これはね、山賊討伐の依頼なんだよ。
俺達はね、山賊の仲間であり、その首謀者『マーダー・インク』の討伐をして、ようやく、この依頼が完了するのではないかな?
他人に嫌がらせとか、なんて素晴らしい響きか!
あー、楽しくなってきちゃった。
俺は、ロンダーさんに、【カモフラージュ】で変装した。
当の本人のロンダーさんは、冴恵先輩にコロコロされて、部屋のクローゼットの中に押し込まれているよ?
ロンダーさんから聞いた、仲間の情報を使って、この街の支部の幹部に値する連中を探し出し、PTメンバーをそいつらに【カモフラージュ】して、潜入捜査開始だ。
先ずやる事は、この支部が、本部に上納する為のお金を盗っちゃおうか?
何処にあるのかは、幹部にも教えて貰えてないらしい。
1ヶ月分の上納金が仕舞われている隠し金庫。
この場所を知っているのは、支部長のみ。
「お疲れっす! コーサさん! アイツらハマりやしたぜ!?」
俺は『マーダー・インク』のこの街の支部である、コーサ・ノストラが商会長を務める、『ノストラ』商会に潜入している。
俺は、ロンダーさんの真似をして、この街の支部長である、コーサと言う男に挨拶した。
「そうだろ? やはり、上手くいったか! 最近のルーキー共は頭が悪くてやり易いな! あとの手筈は?」
「ウッス、えーと、リーダーのソラとかいうガキは、重症らしいっすね… 特許の譲渡を早めに終わらせておくに、越したことはないかと…」
「そうか、チッ、アイツはこれからも使えそうだったんだけどな… 助からなさそうか?」
「報告では重症としか…」
「使えねぇ奴らだな! で? あの女は?」
「へい、それは、捕縛済みと報告きてまっせ! やりやしたね!」
「あー! そうか! あの女は上の方々に高く売れるぜ! 俺がもっと上に行く為には必要な女だ! 傷物にしたら殺すとしっかり伝えておけよ?」
「へい、それで、アイツらの持ち金はどうしますかい?」
「どれくらいある?」
「金貨800枚程っす…」
「チッ、そんなもんかよ?」
「何処かに、隠しているんじゃねぇですか?」
「そうだな… 聞き出せ、金は寄越せ!」
コーサさんは、ロンダーさんから、俺の金を奪い取るように受け取り、背を向け去っていく。
どうよ、俺の演技力!
『ノストラ』商会は、何を扱っている商会なのかと言うと、1番は娼館とカジノの運営。
もういかにもって感じの商会だね。
商会長であるコーサは、自分の部屋、商会長室へと入って行った。
俺は、直ぐに仲間の元へ行き、身体を預ける。
【玉抜け】
スルスルっと俺は壁を抜け、コーサが入っていった部屋へと忍び込む。
その部屋の上空でフワフワと、様子を伺っていると、コーサが柱の中に隠されていたレバーを引くと壁の1部がパカッと開いた。
おぉー! ちゃんとしてる! いいね! こういうの待ってました!
壁の中に入っている金庫の開け方は?
ふむふむ、ダイアル式ではないね?
鍵で開けている。 【玉抜け】状態だから直ぐに見える。
鍵には魔力が込められていた。
うーん、魔法の鍵か…
たぶん【ディスペル】でなんとかなるかなー?
ダメだったら金庫ごと盗むか。
俺は急いで、自分の身体二戻ると、性徒会長に【カモフラージュ】をかけ直す。
その姿は、コーサ・ノストラ!
彼には、運営している娼館とカジノを周り、片っ端から上がりを回収して来てもらい、出来たら女子生徒の救出を頼んだ。
俺は、コーサが部屋から出て行くのを見計らって、その部屋へと忍び込み、柱に隠されているレバーを引く。
ガチャンと音がして、金庫が壁の中から現れる。
さて、やってみるかな?
【ディスペル】
「カチャン!」
おぉー!! 開いたよ! 【ディスペル】さん使えるじゃん!
金庫を開くと、中には金貨、銀貨、銅貨に分けられしまってあった。
意外と几帳面なのかな?
総額、金貨にして3000枚程、1つの街の裏社会の利益としては、多いのか少ないのか、俺には判断できん。
日本円にして、3億円くらい?
俺の月収が、約金貨2000枚になる。
税金とか払ったあとの、純利益でこれだ。
1ヶ月の儲けは、俺より少し多いくらい?
だから、俺を狙ってたのかな?
でもね… 俺って借金漬けでね…
ほぼお金ないからね?
いや、でも、この金が色々な街から吸い上げられ、王都にあるといわれている、本部に集まると、それはかなりの大金になるのでは?
おっ? これは何だろな?
パラパラっと中を捲ってみると帳簿だね。
うーん、帳簿の見方とか分からないから、これは誰かにお任せだね。
こっちは何かな?
契約書の束だね。
借用書だ。コーサに対して金を返す趣旨の内容。
いっぱい出てくるよ?
日本人らしい名前のも出てきたさ…
皆さん何で、こんな借金しちゃったのかな?
賭け事か、何かの脅しか、分からないけど…
あー、よく読むと、内容書いてあるわ。
多いのは、カジノでの金の借用書かな。
可哀想なのもある… 娘の身代金だって…
色々な商会から、様々な難癖を付けて、シノギを徴収していますね。
娼館とカジノの経営だけで、金貨3000枚の売り上げ出すのって大変だもんね。
まぁ、いいや、とりあえず、全部没収しとこう!
俺は、ロンダーさんに連れられ、商業ギルドに来ている。
魔法契約をする為だ。魔法契約は商業ギルド内で、ギルド員にしか行う事が許されていない。
俺の姿は包帯グルグル巻き、ミイラみたくて楽しい。
俺を連れて来ているいる、ロンダーさんも心做しか楽しそう。
このロンダーさん役には、冴恵先輩にやってもらっている。
「おう、待たせたか?」
『ノストラ』商会の、コーサ・ノストラがやって来た。
俺は、山賊共に捕まり、脅され、持っている特許料の譲渡をしに来た設定。
担当している商業ギルド職員は、『マーダー・インク』の内通者だと、調べがついている。
実を言うとね、今のこの状況、スマホの魔道具を使い、メリス姉さんへと画像を送っている。
「ワッチにも見せやんす」
そんな師であるメリス姉さんのお願いを、断れる事は出来なかった。
「今日は、ようこそおいで下さいました。コーサ様」
俺も来てるけど? 挨拶は?
「書類の用意はできているか?」
「はい、ただいま!」
内通者の商業ギルド職員は、2通の魔法契約書を持ってきた。
【アクセル】【カモフラージュ】
俺は素早く、それを持ってきた書類とすり替える。
書類の内容は、簡単に言うと、俺の作った万年筆、クーラーの特許料と、マジックバックの全利益の『ノストラ』商会への譲渡。
【カモフラージュ】使えるね。その下に書いてある本当の内容は、『ノストラ』商会が所有する全ての資産の、俺への譲渡。
魔法契約が結ばれて行く。
本人が、そう思ってなくても契約出来ちゃうって、この契約魔法ってやりたい放題なんでも出来ちゃうんじゃないかな?
人が作った物には、必ずなにかしらの欠陥が有るって事だね。
まぁ、今は、俺達に有利に働いているからいいか。
「よし、こんなもんか? これから頼むぜ? 大型ルーキー?」
ニヤニヤ笑いながら、商業ギルドを出て行く、コーサさん。
「そ、それでは、これで…」
内通者商業ギルド職員、それ以上喋れず首が飛ぶ。物理的に…
冴恵先輩… ヤル気満々。
悪即斬! いや、ゴブ即斬!
冴恵先輩の中では、この人達は、人間ではないのだ。 賊=ゴブ
考えブレないね。
「で、いまのやり取りご覧になりましたか? メリス姉さん?」
「うむ、見えたえ… 今から此方へ来るえ?」
「此方と言うと、魔法士ギルドっすか?」
「違うでありんすよ? 叔父上の屋敷まで来るえ?」
「分かりました。メリス姉さんの叔父さんの家まで行きますね? で、何処にあるの?」
「外へ出て、1番高い建物え?」
「おぉー、分かりやすいっすね! 今から行きまーす! では、では、」
通信終了っと、
「冴恵先輩? これから行くとこ出来ちゃったんだけど… どうします?」
俺と着いてくるか、性徒会長達に合流して、女子生徒の救出に行くか。
「うーん、私も女の子達が心配だから、性者の所に行って来ようかな?」
なんだかんだ、コロコロするのが趣味な、冴恵先輩でも、友達は大事なんだよね。
偉い、偉い、
俺は、冴恵先輩と別れ、商業ギルドを出て、周りを見渡す。
えーと、1番高い建物っと…
高いって、背が高い? 値段が高い?
どっちだろうね?
見渡す先に見える、高い建物。
建物自体も高いし、値段も高いだろうな。
だって、あれってさ… 領主さんとこのお屋敷じゃないの?
もう1度、探してみようか?
うーん、ヤバいな… 領主の屋敷より高い建物見つからねー。
領主の屋敷の前で、「メリス姉さん、あーそーぼー」とか言えないよ?
さて、困った。困った時は、先達に聞くのが1番。
俺は冒険者ギルドへ向かい、ロダンを探すが、見当たらない。
仕方ない… 何時もの受付嬢がいる事だし、聞いてみようかな?
「あの… すみません…」
「はい、いらっしゃいませ、『スレイヤーズ』のソラ様?」
「いやー、まだちょっと依頼には、手間取っちゃっててね… 初めての依頼って難しいよ…」
「それは、まぁ、そうでしょうね?」
「ところでさ、聞きたい事あるんだけど… この街で1番高い建物ってどこかな?」
「それは、もちろん、領主パルマ侯爵様のお屋敷でしょうね?」
「あー、やっぱり…」
「皆さん、領主様のお屋敷に、もう向かっていますよ? ソラ様は何をやっているんですか?」
「はい? 皆さんって?」
「皆さんって、皆さんですね?」
よく分からん、けど、行かねばならぬのか?
俺は頑張って、領主の屋敷の前まで来たよ?
もういいよね? なんか衛兵とか立ってるし…
陰でコソコソしていると、ロダンが領主の舘から出てきた。
「何やってんの? おまえ?」
「えーと、あーそーぼ?」
無言で殴られた。 理不尽なり。




