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15話 現実逃避


 何でだと思う?


 聞いた事あるかい? 冒険者になって、まだ見習い期間中なのに… 初依頼がさ…


 山賊討伐だよ?


 しかも、相手は同郷の日本人の高校生達。

 基本、日本の男子高校生って頭おかしいよね…


 どこから、クレームが来てもいいさ、しっかり2度、言っておこう。


 日本の男子高校生は頭がおかしい。


 普通、山賊になるか?


 この世界では、本物の盗賊、山賊、海賊、には、私刑が許されている。というか、それが普通。


 私刑というのは、捕まえる時、捕まえた後、何をしてもいいのだ。

 要するに、だいたいがリンチで死刑になるのさ。


 ギリギリ助かったとして、捕縛され衛兵に突き出されたら、犯罪奴隷として必ず死ぬ。


 元々、この世界に人権とかいう概念はあまりない。

 よって、犯罪奴隷は人として扱われず、様々な酷い扱いを受けて、1年後に生きている確率は、1割、2年後には、その1割の1割りを切るんだってさ。


 人間らしく生きる権利? 平等? 


 そんなもの信じている人間など、貴族の中にもいないだろうな。


 まぁ、そういう世界なので、山賊、捕まる、死ぬより恐ろしい、犯罪奴隷落ち。

 私刑で死刑のが、100倍ましとか言われているんだって。


 日本出身者達は、どちらになるのかな?


 おっと、俺達が勝つ前提で考えていたぜ…


「あのさ、この中で、山賊討伐とかの依頼やった事ある人いる?」


 俺は歩きながら、PTメンバーに尋ねてみた。


 うん? 全員、手を挙げてるね? マジすか?


 なんと、冒険者中級になる為の試験の内容が、山賊や盗賊、海賊の討伐なのだそうで、皆さんクリアしたってさ。


 あの3ヶ月前の、大量のゴブ討伐&女子生徒救出は、大きな評価をされたらしく、PTが休止中でも、臨時PTを組んでくれる人達が、列をなしていたらしい。


 その結果、冴恵先輩は特級にまでなっちゃってさ。

 史上最年少だってよ。


 はぁ、どうしたもんかな…


「とりあえずさ…」


「うん? どうした?」


「俺達、今、どこ向かってるの?」


 そうなのだよ、俺は前を歩いている瑛太に、適当について行っているのだよ。


「あー、言ってなかったっけ? ほら、あれ!」


 瑛太が空を指さす。 気持ち良さそうに鳥が飛んでいるね? あー、あれ、瑛太の鷹か?


 確か、名前はハロリスだったかな?


 お利口さんで、瑛太と意思疎通が出来るらしい。


 【テイム】っていいね!


 俺も、瑛太の【テイム】したハロリスが羨ましくてさ、試してみたのさ… 召喚魔法を…


 この街の魔法士ギルドで、召喚魔法士をやっている人はいなかった。

 そして、召喚魔法は、下級魔法が、3つだけ取り扱っていたんだけどね。


 先ず、1つ目は、【始祖鳥召喚】!

 なんか凄そうでしょ!?


 ワクワクが止まらず、速攻で召喚してみたさ。


 俺の前に召喚されてきたそれは、『コケッコー』という鳥の召喚獣だったのさ。

 名前からもう解るだろ? 鶏さ。


 召喚すると、召喚獣との間にパスが繋がりなんとなく、その召喚獣の力が分かる。

 卵が先か鶏が先か【始祖鳥召喚】『コケッコー』に出来る事は、まず 飛べない。それは出来ない事だよね?

 そして、1日1個、栄養価の高い卵を産める。後は肉が食用。 以上。




 次に、2つ目の召喚魔法、【闘牛召喚】!

 出てきたのは『モウモー』って名前の召喚獣。

 何が出来るかって?


 栄養価の高い乳が搾れる。後は肉が霜降り肉で食用。

 闘牛の闘う所まったくないよね?




 最後の3つ目は、【賢狼召喚】!


 凄いデカい、オオカミとか出てくると思うじゃん?


 ちょっと暇だし、出してみようか?


【賢狼召喚】


 俺の思いをそのまま世界は理解する。


 そして、俺の前に召喚されて来た召喚獣。

 名前は『ポチ』。子犬だ。


 召喚されて呼ばれただけで、嬉ション。


 冴恵先輩を見つけたら、すかさず、抱きつき腰を振って発情。

 賢さどこいったよ? ってか、コイツ、オオカミじゃないよね? もう犬っしょ?


 出来る事は、躾をすれば出来る事が増えるはず?

 だってよ!




 まぁ、俺は、そんなこんなで、早い内に召喚魔法を諦めた。

 正確に言うと、召喚されてくる召喚獣を諦めた。


 召喚魔法事態は、素晴らしい発想で作られている物だったのだよ。これは想定外。


 所謂、召喚魔法とは転移魔法から、分岐、派生した魔法だという事なのだよ!


 転移魔法キター!


 少しだけ地球帰還への足掛かりが出てきたよ。


 まだまだ、転移魔法に関しては分からない事も多いが、俺が理解、使用できそうなのは、行きたい場所にマーキングをして、そこへ目指して空間を繋げ開く魔法。【ゲート】


 今やっている実験では、1km離れた場所へと【ゲート】を繋げる事に成功している。


 だか、日本への帰還には、日本にマーキングを行わないとダメなので、ここからマーキング出来るはずもなく、帰還にはまだまだ時間がかかるだろう。


 よって、皆には期待させて落とすのも悪いので言っていない。

 変に過剰な期待をされるのは嫌なり。




 冴恵先輩が『ポチ』と遊びながら、歩いていると瑛太のハロリスが山賊らしき人を見つけたらしい。


「あー、たぶん、コレ間違いないかな… 名前は確か… 小山田君とか言ってたかな?」


 その、小山田くんが、山賊やってるのね…


「森の中に隠れ家があるっぽいな! どうする?」


 瑛太の言葉に、俺は、? を返そう。


「何故、俺に聞くのさ? 我が友、瑛太?」


「一応、おまえがリーダーだし?」


「俺は見習いだぞ?」


 皆にジト目で見られる。何故だ? 


「とりあえず、誰も逃がさず…」


「コロす?」


 冴恵先輩が、ニコニコしながら放つ言葉に、背筋が凍る。笑顔の奥の怒りに…


「うーん、まぁ、とりあえずは、殺しは無しの方向で… 身の危険がある場合だけ、絶対自分の身は守ってください」 


 変な敬語になるが、出来れば殺しはしたくないし、させたくもないもんね…

 

「えー!? コロさないの??? アイツらもう… 人コロしてるんだよ? 女の子も攫われてるし… ゴブとアイツら何が違うの???」


 賊=ゴブ


 冴恵先輩の感性だと、そういう方程式になるのだという事は分かったよ?


 でも、何があったのよ? この3ヶ月で!

 

 それにしても… アイツら… 人殺しちゃったのね…

 まぁ、考えてみれば、そういう被害が出たから討伐依頼が出てるんだもんな…


 そう、これは討伐依頼なのだ。捕縛依頼ではない。

 殺す事に慣れろってか?

 ふざけるなよ… この世界!


 恐らく、この日本人的、地球人的な感性は、この世界では命取りになる可能性が大なのだ。


 これは、俺が改めないとダメなのだろうな…


 俺は、PTメンバーの顔を見渡すと、皆、それを乗り越えてきたみたいな顔をしている。


 とりあえず、殺すか、殺さないか、その方針で作戦も変わってくるだろう。


 ハァ… 疲れる…


「とりあえず… 殺しは置いておいて、全員捕まえてみようか… そっちのが、鍛練になるよ? それに、俺は、アイツらが何で、山賊なんかにジョブチェンジしたのか聞いてみたい」


「理由を聞いて、どうするの?」


「全員を犯罪奴隷にするか、私刑にするか決めるよ…」


 冴恵先輩は、不服そうな顔だ。

 うん、ほっぺを、ぷぅ〜っと膨らませている天使がいるが、とりあえずは放置。


 なんか、本当に、なんとなく、殺せと言われて殺すとかね… 俺はどうしても、納得がいかないんだよね…


 頭じゃ解っているんだよ?


 殺らなきゃ、俺が殺られるし、誰かが殺られる。


 何か上手い方法でもないものかね?


 被害者側も納得、俺もしたくない殺しはしないで済み、加害者側も改心するような方法。


 まぁ、難しいか…


「それで、我が友、ソラよ、捕縛するのはいいが、どうやるんだ? 殺すより、捕縛する方が、こちら側の危険度は3倍以上になると師匠に教わったが?」


 瑛太の言う通りだ。相手を捕縛するのには、相当な労力を強いる。


 現代日本でも、1人の犯人を捕縛するのに、何人もの警察官が取り押さえる光景の、ニュースなどテレビとかで観たことはないだろうか?


 だけどね、ここは、魔法のある世界。


 何とか、してみようじゃないか!




 俺は、瑛太に山賊共のアジトの詳しい位置や、周りの様子を確認してもらった。


 そこは、森の中に入り、けもの道を進む事、数十分行った所の洞窟の中にあった。


 真昼間のアジトには、余裕をこいて酒を飲みながら賭け事に興じているおバカ共が、数十人。

 髪の毛の色から、日本人ではない、ここ現地人も何人かいるようだ。

 仮にも山賊なんだから、お仕事したらどうだろうか?

 まぁ、そんなに頑張って仕事されても困るが…


 そして奥には、首輪を嵌められた女性が数人倒れている。 攫われた人達だよね…


 何で俺がここまで、分かると言うと、【玉抜け】しているからである。


 洞窟の入口には、2人の見張り番がいるが、そっちも酒を飲みながらだ。

 もうグタグタだな… この山賊。


 山賊共の顔を何人見ても、見覚えがない。

 こんな奴ら、本当にウチの学校にいたか?


 まぁ、いい、とりあえず、この洞窟の地図を把握した。

 外へ出る抜け道が3本もある。


 そこは、冴恵先輩、瑛太、ボンちゃんに行ってもらい、出口を塞いでもらってしまおう。




 俺は【玉抜け】から目覚め、洞窟の地図を地面に描いて皆に見せる。


「OKだよ! こっちは任せておいて! それで… 襲って来た奴でも… コロコロは無し???」


 コロコロってなんだよ? 冴恵先輩、可愛く言われてもね…


「ほら、そいつが、もしかしたら重要な情報もってたりしたら困るでしょ? 一応、命だけは残しておいてね?」


「ぅうう… わかった…」


 凄い残念そうだ。 コロコロが好きになっちゃったんだね? カワイイから許すけどね。


「それで? 抜け道塞いで、どうするんだい? 捕縛するんだろ?」


「あー、それは、俺がやるから… 性徒会長は着いて来てくれればいいよ。 奥に女の子達がいたからさ… よろしく」


「お任せあれ!」


 うん、これで、コイツはヤル気出たね。


「よし、 それじゃ、ミッションスタートしますか」


 俺は特に、気を張るでもなく、ヤル気が無いようにも見せず、捕縛作戦を開始する。


 先ず、最初にやる事は、【テレパス】。

 この魔法は、念話、テレパシー、そんな感じの効果のある魔法だ。


 皆にそれをかけると、抜け道を塞ぐ為に、冴恵先輩達に移動してもらった。


『テス、テス、聞こえるかー?』


『『『聞こえるぞ!!』』』


 この【テレパス】の良い所は、思っている事がダダ漏れにならないように、相手にテレパシーを届けたい時には、こめかみを軽く押すと伝わるような仕様になっている。


 冴恵先輩の普段思っている事とか気になるけど…


『ソラくんキモい』


 とか思われていたら、俺は立ち直れる自信はないので、ダダ漏れ防止策は必須だと思った次第だ。


『こっちは、位置についたよ! 抜け穴、発見!』


 冴恵先輩の楽しそうな声が頭に響く。

 うん、幸せだ。


『こっちもだ』


『ボクも位置に着いたよ!』


『OK! それじゃ、これから魔法を使うから、抜け穴から少しだけ離れててねー』


 俺は、山賊のアジトの洞窟の入口に向かう。


 ちょっとそこまで、お散歩しています風な設定だ。


「お、おい! おい! おまえ! 確か…」


 入口にいた見張り番は、何か言いたげだったが、いきなり2人共、倒れた。

 

【スリープ】


 俺の【無構築魔法】で、攻撃の素振りなど一切せずに、魔法をかける。

 攻撃動作が無ければ、防御動作もしてこない。


 しかも、こんなちゃんとしていない山賊共に【スリープ耐性】を持っている奴などいなかった。


 まぁ、居たとしても、違うバットステイタス魔法で黙らせればいいだけだし。


 俺は、洞窟の中を散歩しながら、出会った人間には何も言わずに【スリープ】をかけていく。


 はい、終わり。


『とりあえず、終わったから、皆入ってきてー』


『えっ!? もう終わり?』


『あー、これから、コイツら縛り上げる仕事が残ってたわ!』


 俺は虚空から、大量のロープを出していく。


 俺の【ストレージ】は、生活魔法を改良して、ハンドバッグ程の大きさの容量だったのを、日本の言い方をすれば、東京ドーム10個分以上の大きさの空間に、中の時間は1/10。10日で1日分しか時間は進まない。


 かなり、便利な使用になっているのだ。


 大量のロープなど、いくら入れてもまだまだ容量は余り過ぎているのだ。




 それから、1時間程で、手分けしてグッスリな山賊共を縛り上げていく。


 俺は、盗賊ギルドで人の縛り方を教わっていたので、特に苦労はなかったが、皆は少し手間取っていた。


 普通にちゃんと生きていれば、人を縛るなどという経験値を持っている人間など、なかなかいないよね。

 逆にサクッと縛れたら、性癖疑うね。


 まぁ、俺は、盗賊ギルドの講習で仕方なく覚えただけだからね?

 盗賊は、人を縛っている間に仕事をする事もあるんだとさ。


 洞窟の1番広いホールのような場所に、縛り上げた山賊共を集めていく。


 総勢、32名。

 内、日本人の男子生徒、27名。 残りの5名は現地人。

 

「今から、【スリープ】を解くから、逃げだしそうなのがいたら、足でも斬って止めてね?」


 一応、冴恵先輩に忠告しておく、逃げる素振りしただけで、サクッと殺りそうだもんね…


「んもう! 分かってるって〜!」


 また、プンプンしている天使。

 ハァ、お仕事なんてしないで、冴恵先輩とお茶でもしながら、のんびりしていたいな。

 

【ディスペル】


 魔法解除の魔法をかける。 魔法を解くには、意外と面倒くさく、時間切れを待つか、反魔法をかけるか、解除の魔法をかけるかだ。


 1度、世界の理を変えてしまったら、途中でやーめた! なんて事は許されていないのだ。

 やーめたをやると、恐らく何か良くない現象に見舞われる気がする。


「ぅうう… オレはどうして…?」


 1人、また1人と目覚めていく山賊共。


 混乱からか、訳の分からない事をいいながら怒鳴ってくる。


「オイ! てめぇ! オレが誰だか分かってんのか!? コラ!?」


 うーん、縛られている姿で、凄まれてもな…


 今、怒鳴っているのは、現地人のチンピラみたいな奴だ。

 もちろん、知り合いでも、何でもない。よって、


「いえ、アナタが誰かは知りません」


「お、おう… そうか、へっへっへー、オレはお前らの事は知っているぜ? 『スレイヤーズ』の面々様よ?」


 へぇー、俺達って有名なの?


 自分の知らない人が、自分の事を知っているのは不思議な気分だね。 


「こんな事して、タダで済むと思うのか? てめぇが、誰に手を出しているのか教えてやるよ!」


 いや、いや、聞いてないよ?


「オレは、あの『マーダー・インク』の一味だぜ? ああ? どうよ? てめぇら、何やってるのか分かったか!? 分かったら縄ほどけや!」


 うーん、うーん、本当に何言ってるのか、さっぱり分からん。


 俺は皆の顔を見る。その中で、1人だけ顔を顰めている奴がいた。


「性徒会長? 何か知ってんの?」


「僕も噂でしか知らないんですけどね… 王都を中心に、この国の裏社会を牛耳ってる組織名が『マーダー・インク』とかだったかと…」


「へぇー、そうなんだ…」


「あっ? ほら、分かったら縄ほどいて謝れば、そこの【天剣】を貰うくらいで勘弁してやるぜ?」


 その、『マーダー・インク』とか言う、犯罪組織は、とりあえず、大きな、やーさん的組織って認識でいいのかな?


 考えるのめんどいし、コイツは後回しだね。


「それでは、日本人の男子生徒の皆さん。 選んでください。 私刑で死刑か、犯罪奴隷落ちか…」


 俺が無視したのが、気に触ったのか、『マーダー・インク』の一味さんは、唾を飛ばしながら怒鳴り散らす。


 汚いな… もう… 

 それにしても、コイツら本当に日本人かな?


 すげー、臭いぞ?


 日本にいた時、ホームレスの人とすれ違った事があったのだが、その時の臭さを超えているよね?


 あっ、ホームレスの人にも清潔にしている人もいるだろうし、オレが出会った人だけが臭かったのかもしれんが…


 とりあえず、コイツら臭い!!


「てめぇー!! 話し聞いてんのか!? こら!? 殺すぞ!?」


 あー、見えなかった…


 今話していた、そいつの首がクルクルと宙を舞っているよ?


 いやー、首ちょんぱってさ… 凄い量の血が噴き出すのな!

 ビックリ、ビックリ、って!


「冴恵先輩…!?」


「えー!? だって、コイツ、ソラくんをコロコロするって… 言うから… つい、やっちった? てへっ♪」


 うん、ある、ある、つい、コロコロしちゃう事とかね! もう、てへっ♪て似合うの冴恵先輩くらいだよ。


 とりあえず、こういう時の対応は、先ず、冴恵先輩の頭を、いい子いい子しておこ。


「わーい! ソラくんに、褒められちったー!」


 こんな事でも嬉しそうにしてくれる、冴恵先輩。

 天使なんだよ? だけどね? 血で真っ赤っか。


 うわぁぁぁ、山賊の皆さんも引いていらっしゃるよ。


 まぁ、実際に、今首を飛ばされた奴がいなくとも、情報は出てくるだろ。


 だって、さっき、【玉抜け】して洞窟内を観察していた時に、1番偉そうにしていた奴が残っているしね。


「さて、日本人の男子生徒の皆さん。 選んでください。 私刑で死刑か、犯罪奴隷落ちか…」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ! キミは確かソラくんだろ? ほら、俺だよ? 小山田だよ?」 


 あー、瑛太が言ってた、小山田くんってこの人なんだ? うん、誰だ?


「俺の事、知らないのかい? 陸上部で全国大会出た、小山田だよ?」


 へぇー、凄いじゃん! そんな人いたんだー?

 でも、残念。 俺は知らん。


「何で? そんな凄い奴が山賊なんかやってるん?」


 実直に興味が沸いた。どうしたらそんな人間が落ちて行ったのか。


「しゃ、借金があったんだよ…」


 おぉー? もしかしたら心の友候補?

 そんな事を思っていると、何も喋って来なかったボスっぽいのが口を開いた。


「オイ!? それ以上言うとどうなるか、分かってるだろ?」


 小山田くんを見ずに言う、その言葉は、何故か小山田くんを黙らせる力を持っていたようだ。


「ゴメンよ、俺にはどうなるか分からないのだが…?」


 俺の言葉に、性徒会長が代わりに答えてくれた。


「脅されているんでしょうね… 何で脅されているかは… 想像ですが、女とか? 確か、小山田くんって彼女いたじゃないですか? 名前… 誰だったかな?」


 イタズラっぽく言う性徒会長。

 嫌らしい性格だ… でも、図星っぽいな…


「ぷっHAHAHA!! その通りさ、コイツの借金の形は、その女だ!」


 さっき、言ったらどうなるか?とか脅していた、ボスっぽいのが、スラスラ話しだした。


【トゥルー・ワード】


 俺が使った魔法の名前だ。真実しか口に出来なくなる。


「オレたちが受けている指令はな! 別にコイツらを山賊にする事じゃねぇんだよ! 狙いは、てめぇらだ!『スレイヤーズ』!!」


 はぁ? 何で俺達が出てくるん?


「てめぇら、日本人とか言う人種は、仲間の命を大層大事にするらしいじゃねぇかよ! 女共を借金奴隷に落とされたくなければ、言う事を聞いた方がいいぜ?」


「言う事とは?」


「ハァっ! そんな事、上の人間しか知らねぇ事だよ!」


「予想くらい、つくのでは?」


「そうだな… 先ずは、【天剣】を娼婦にして、てめぇらに『マーダー・インク』の都合のいい依頼を受けさせまくるんだろうな! 下手に力のあるルーキーが調子乗ると、こうなるんだよ!? 分かったか?」


「はい、分かりました、どうもです」


 なるほどね… 要するに俺達『スレイヤーズ』を組織の犬にさせる為に、色々策を巡らしたって事かな?


 冴恵先輩が、プルプル震えて、今にもこのボスっぽいの斬りそうになっているのを、なんとか抑える。


「はい、はい、冴恵先輩〜 ハウス!」


「ワン?」


 乗ってくれる、冴恵先輩。天使って凄いな…


 俺は、この世界の法に詳しくない。というか、ほぼ知らん。


 恐らくは、貴族に有利な法なんだろう。


 王都で、国中で、のさばっている裏組織『マーダー・インク』それが出来るには、貴族が絡んでいないと出来る物じゃないだろうな…


 初依頼が、こんなめんどい依頼でいいのか!?


「どうする? これ?」


 俺は、一応皆に聞いてみる。


「コロコロする」


「逃げる」


「おまえに任せる」


「どうしよっか? 困ったね?」


 冴恵先輩、性徒会長、瑛太、ボンちゃんの意見です。


 因みにだが、こんな優柔不断な言い方をしているボンちゃんだが、その装備はフルプレートメイル、全身魔鉄の鎧だ。

 俺がコツコツ、ボンちゃんの意見を聞きながら制作した魔道鎧になっております。


 何で、今そんな事を言うかって?


 もちろん、現実逃避さ…

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