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13話 決闘


 ゴブリンの群れ、約5千匹と、そのキングを討伐し、女子生徒を1人救出してから、はや3ヶ月。


 俺達のパーティーには、気付いたら名前が付いていた。


『スレイヤーズ』


 この名前を付けたのは、俺でも無ければ、パーティーメンバーでもない。


 その犯人はロダンだ。 


 その意味は、虐殺、全滅、させるという意味と、その裏には、人を笑かす者達という意味が隠されているという事を知ったのはごく最近。


 そうなんと言っても、俺はこの3ヶ月、冒険者活動を休止していた。


 まぁ、休止とか言っても、俺は依頼を出した事があっても、依頼を1度も受けた事なんてないので、休んでるとは言い難い。


 その間、別に遊んでたんじゃないぞ?


 かなり真面目に、ちゃんと鍛練、訓練、修練、などという、面倒臭い事をやっていたのだ。


 俺の1日の予定は、朝、日が昇る前に起き、城壁の上をランニングから始まり、午前中は盗賊ギルドでの訓練。


 午後からは、魔法士ギルドでの、勉強、鍛練、修練、俺の師である蒼炎の魔女に土下座して、教えを乞う。

 しかし、彼女はマジックキャスター(魔法攻撃士)、一筋で、エンチャンター(魔法付与士)、魔道具士、魔法薬士、召喚士、等の職業の事は全くと言っても良いほど、知識がなかったのだ。


 俺がマジックキャスターの修練をしたいと、お願いした時の喜びようはウケた。


 そして、俺が師のメリス姉さんに抱いた思いは、尊敬、そして畏怖。

 この世界の魔法には威力がない?

 そんな事あるわけなかったよ。 完全な俺の勘違い。


 彼女の多重構築魔法陣の威力…


 火山の爆発より酷いんでないかな?


 蒼炎の魔女メリス、彼女は先の大戦のおり、敵陣を燃やし尽くし、敵が盾籠った城塞を燃やし尽くし、敵国へ侵攻して城を燃やし尽くした数に至っては、優に10を超えるらしい。

 調べれば調べる程、知れば知る程、あの人はアカン人だったのさ…


 メリス姉さんとの戦闘訓練とか、死ぬかと思ったよ? 新魔法の【リジェネ】が無かったら、完全に50回は死んでたね!


 あと、メリス姉さんは燃やす魔法の開発には、積極的にその頭脳と知識と経験を貸してくれた。


 そんなに燃やすの好きって、この世界に生まれててよかったね? 地球に生まれてたら放火魔とかになってたのでは?


 まー、そんな感じの日課をこなしていると、クーラーを作るのが億劫になってしまい、その製法を商業ギルドに教える代わりに、また特許料を頂く事にしたので、収入は変わらずに、月に金貨数百枚から1千数百枚が入ってくる。


 だが、その収入の殆どは、借金返済へと充てられているのだった。


 その話しを軽くしておくと…


 性徒会長が孤児院の院長に就任した事から始まる。

 院長って、流石、【聖者】凄いと思うだろ? だがな、実態は神殿ギルドの窓際族、左遷って事だ。


 何故かって?


 それは、俺達のパーティー『スレイヤーズ』の一員だからと、異世界転移してきたと、風潮している頭のおかしな奴らの同郷だから。


 その頭のおかしな奴らの中には、何人もの犯罪者が出ている事も要因の1つだろうな。


 ちゃんとしていなかった数人の、おバカな男子生徒達が、強盗致傷事件を犯したり、山賊になって手配されている奴までいるそうだ。


 今現在、見習い冒険者寮に居座っている成長のない者達は、20名程だそうだ。

 

 まぁ、そこで、性徒会長が孤児院の院長になった話しと、交差する。


 ボロボロな孤児院、その改修費と生活費など神殿ギルドから貰える事は無かったのだ。


 第1に、稼いでいるパーティーリーダーがいる一員なんだから、自分でどうにかしろという話しだったらしい。

 

 俺は無い頭を使って考えたさ、そこで、思いついたのは、見習い冒険者寮にいるヒキニート共に、孤児院の仕事を手伝わせる代わりに、生活環境を整えてあげる事にしたのよ…


 そしたらさ…


 寮にいた奴ら、特に殆どが先生と女子生徒だったんだが、調子乗って、色々と案を出してきてさ…


 孤児院に、ショッピングモールと旅館を併設させるとか言い出してね…


 その案が、商業ギルドマスターの、キルヒ・フォン・ギルバートさんが気に入っちゃってね…


 どうなったと思う?


 どデカいショッピングモールと、旅館と、孤児院を建てる土地の確保の為に、城壁内を広くする改築工事から始まり、整地、建設、ショッピングモールに出店するお店の商品開発、諸々の費用、なんとだね、俺が借金して持つ事になってたのよ。


 修行に明け暮れていた俺は、忙しさと疲れの為に、皆の案に適当に頷いていたらそうなっていたのだ。


 恐ろしい世界だ…


 俺の借金の総額を教えようか?


 金貨にして、およそ、10万枚くらい。

 日本円にして、約100億円ほど…

 アホか!? ただの高校生だった見習い冒険者に背負わす額だとは到底、思えん!

 しかも、返済期間は3年ローンしか組んでもらえなかったよ。

 担保は、万年筆、クーラーの特許料。 そして、新しく開発したマジックバックの制作方法。


 あー、マジックバックってのは、ゲームとかでよくあるアイテムボックスって言った方がいいかな?

 バックの中は、空間を捻じ曲げられその中の広さは、倉庫程。そして、そのバックの中は時間がほぼ止まっている。

 ほぼというのは、完全に時間を停止される方法が分からなかったからだ。


 時間魔法とは、その対象の体感時間を操作する魔法なのだが、その対象には相応の負荷が掛かってしまうのだ。


 例えば、【ヘイスト】を人間にかけたとすると、遅くなった時間の中で動くという事は、身体が重くなる。

 何故かと言うと、もしかしたら相対性理論とかで証明できたりするかもしれんが、俺には分からん。

 兎に角、重くなる。周りの時間を遅くすればする程、重くなる。

 完全に時間を停止させると、その対象は潰れる、それも豆粒より小さく潰れる。見えなくなるくらい小さく潰れる。


【ヘイスト】は周りの時間が、2/3ほどに遅く感じるほど、引き伸ばされた感覚。

 これ以上やると、逆に早く動けなくなる程、身体が重くなってしまう。

 絶妙なバランスの魔法だった。


 そこで、考えたのは【時間魔法耐性】の構築。

 まぁ、耐性だから、完全に無効にできなかったのだ。

 それで、出来上がった新魔法【アクセル】それは、周りの時間が1/10程に、遅くなって感じる。

 要するに、単純計算でいつもより10倍早く動ける。

 100mを10秒で走れる人間に、この【アクセル】をかけると、あら不思議、100mを1秒で走り抜けられてしまう。魔法って、とんでもねー。


 その【アクセル】の反魔法【アンチ・アクセル】を使って、生活魔法の【ストレージ】という、ちょっとした物を入れておける魔法を改造して、作った魔道具がマジックバック。


 それにしても、生活魔法を作った人は紛れもなく天才、俺からみたら神に近しい存在だ。


 ほぼ、全ての魔法士は生活魔法を下に見て、それを魔法として見ていない。

 我が師の蒼炎の魔女も、残念ながらその傾向がある。


 生活魔法こそ、魔法の根幹にして深淵。

 俺は、これからも地球の知識を駆使して、生活魔法を基盤にして、新しい魔法を作れるだろう。

 だが、それはチートだとは思わない。

 だって、地球から転移してきた123人は、頑張れば扱えるし作れるからだ。




 兎に角だ! 働かねば!

 とりあえず、冒険者より、魔道具士として働けばいけると思うんだよね。


 だが、俺は3ヶ月前のあの出来事の後に、目標修正をする事にした。


 安全第一、生活環境の改善、強くなり、地球への帰還方法の探求だ。


 日本に帰る方法。特に、最後まで見習い冒険者寮に残った者達には、必要な目標設定だった。


 生きる為には、その目標が必須な訳は分かるだろうか?


 あの出来事があった後、本当に、酷かったのだ、自殺する者も数人出た。

 冒険者に頑張ってなったとしても、苗床が未来。

 他の仕事に就こうとも、基本誰も紹介してくれない。


 考えてみてくれ、日本でも住所不定の人間が仕事に就けるだろうか?


 店をやっている主人からしてみたら、どこに住んでいる、誰さんの紹介した人間なら信用できるから雇ってみるか!となる。


 だが、俺達、転移してきた者達は、親類縁者、誰もいない。

 1から信用、信頼を積み重ねていくしかないが、最初から躓くと、誰も信用してくれないのだ。


 冒険者見習いも出来ない奴=仕事を真面目にやらない、信用できない、金を持っていない、金を持ってトンズラこく、などと思われてしまうのだ。


 地球の日本で、教師をしていた先生達もその中に入ってしまう…

 先生達の歳で、見習いから職に就くのは、実際、教える方も、教わる方も、なかなか上手くいかないようだ。


 キャリアがゼロになってしまうって、俺が思うより大変らしいね…

 その分、若い生徒でキャリア無しの奴らは、調子のって、山賊とかのキャリアを積む輩が出てくるのも困ったもんだ。




 まぁ、そんな事を考えながら、俺は冒険者ギルドへと向かっている。


 今日から冒険者見習い業の再開だ!


 張り切り過ぎて、パーティーメンバーより早く来てしまったようで、俺はブラブラと依頼の貼られた掲示板を覗いてみようとするが、朝の冒険者達が行う、依頼取り合戦に参加する気が起きる訳もなく、壁の花になっていると、見覚えのある顔をした男が寄ってくる。


 ちっ、めんどくせぇ…


「よぉ! 久しぶりだな! 『スレイヤーズ』のリーダー、ソラ!」


「うっ、お久っす… ロダン…」


 『スレイヤーズ』のリーダー。その言葉にギルド内は、静かになってしまう。


 おい、何事だよ? 俺なんかした?


 様々な人達の視線が痛い。 俺はどうも視線恐怖症の傾向があるのではないかな?


 とにかく、こっちを見るなや!


 少し、機嫌が悪くなってしまっていると、ロダンに首根っこ掴まれ、引きずられて行く俺。


 なんか、既視感ー!!


 連れられて行った先には、冒険者ギルドの鍛練場だった?


「3ヶ月も引きこもって、大層すげー、修行をしてたんだって? 少し揉んでやるよ! 掛かってこいや!」


 何かな? この脳筋? ニヤニヤ嬉しそうに…


「ほう、決闘か? 儂が審判を勤めてやろうではないか!」


 鍛練場の掃除をしていた、掃除係の爺さん?が話しかけてきた。


 何? この爺? 何で煽ってるのさ?

 あれ? あれ? ギャラリーが湧いて出て来てるよ?


「あれが、例の『スレイヤーズ』のリーダーかよ!? 初めて見たけど… なんか弱そうだぞ?」


「他のメンバーが凄すぎてな… あれはダメな奴じゃない?」 


「なんたって、史上最年少で特級になった【天剣】と、上級2人、【鷹の目】と【双盾】に、中級の【性者】、アイツらに囲まれたら、あのリーダーはちょっと足りないよな…」


 ほっとけ! って!? 冴恵先輩… 特級になってるって!?


 えっ!? 俺が休止している間も、パーティーって活動してたん?


「ほらよ、ギャラリーも集まってくれたし、ちょうどいいだろ! やるぞーー!」


「ほっほっ〜 それでは、始め!!!」


「おい、爺〜〜!? 勝手に何合図だしてんの???」


 ギャラリーの歓声が上がる。

 マジっすか… まぁ、試してみたい事もいっぱいあるしな… 

 仕方ない… って、ロダンさん? 普通に自分の真剣抜いてるよね?


 模擬戦って、木刀とかじゃないの?


 あっ、あの爺、決闘とか言ってたかも…


 この異世界頭、悪いっしょ!?


 ロダンは真剣を抜いたが、かかって来ない。余裕の表情だね。 なんかムカつく。


 俺は、自分の腰に刺している、2本の短剣を抜いた。

 これが、俺の新スタイル、二刀を持った短剣術だ。


「ほう、いいな! 実はな、俺も【二刀術】持ちなんだな… 相性良いじゃねぇか!」


「おまえ、なんかと相性良くて何か得があるのかよ?」


「あー、あるぜ! 楽しめる!!!」


 いきなり、ロダンが動いた。早いな…


 俺は、ロダンに二刀を振り下ろされる前に、持っていた短剣を2本とも、ロダンに向かって投げる。


 小刻みの良い甲高い音と共に、簡単に弾かれる短剣。


 まぁ、そうだろうね。


 もう、目の前にまで来てしまったロダンの剣を防ぐ事は出来ない。と、誰もが思っているはず?


 ロダンの剣が、俺の頭に当たる前に、なんとロダンは横にズレた。

 何でかと言うと、避けたのだ。俺がさっき投げた短剣を2本とも避けやがった。

 完全に後ろの死角から、飛ばしたつもりだったんだけどな…


 これが、俺の新スタイル【二刀短剣リモコン術】日本のアニメ、〇ンダムに出てくるファンネルに似ているかな?

 もちろん、この短剣は魔剣使用。その効果はリモコン操作と1本には【蒼炎】、もう1本には【氷結】の魔法が込められているのさ!


 ビュンビュンと縦横無尽に飛び回る、俺の短剣達からは範囲は小さいが【蒼炎】と【氷結】の魔法が何度も放たれている。

でも、流石だ! 特級冒険者ってのは凄いね! カスリもしないさ。


 じゃ、これはどうかな?


 俺は、虚空から2本の短剣を取り出した。飛び回る短剣と合わせて4本目の短剣だ。

 もち、これも魔剣。

 【ライトニングブレイド】と【エアブレイド】


 相手が【二刀術】? そんなもん知らん!


 俺は、ズバッと、ロダンの側面に回り込む。

 どうだい? 早いだろ? 【ヘイスト】かけてるからね!


 側面から、俺に【ライトニングブレイド】と【エアブレイド】の短剣で斬られると見せかけて、【二刀短剣リモコン術】の短剣から【蒼炎】と【氷結】が撃たれるとふむよね? アンタは特級だもんね?


 その瞬間、ロダンの足下に穴がポッカリ空いた。

 ちょうど片足が突っ込めるくらいの深さ30cm程の穴。 これが、結構驚いてくれるんだ。


 ロダンは足を取られ、コケそうになるが踏みとどまった。凄い反射神経だな…

 俺の想定より高い身体能力。

 でも、今更、戦術変更は俺程度では無理。


 出来る事をしよう! まだやっていない事もいっぱいあるしね。


 コケそうになって、踏みとどまっているロダンの態勢は前かがみ。

 それならこの魔法かな?


【ストーンニードル】


 心の中で思う。

 それだけで、ロダンの下から、土の針が伸びる。

 

 まぁ、これでも、避けるよね? だって特級だもんね?


 上体を起こして【ストーンニードル】を躱すロダンに向かって【二刀短剣リモコン術】の短剣から放たれる魔法。それをも避けると想定して【ライトニングブレイド】と【エアブレイド】を振るう。

 【ライトニングブレイド】は雷の刃、【エアブレイド】は不可視の風の刃。


 あー、その【二刀術】の剣で受ける?  大丈夫? あぁ、なるほど、そっちの二刀も魔剣って事かな?


 でもね、俺の狙いはね…


【スロウ】


 そう心の中で唱える。

 

 ロダンは驚きの表情を隠せないでいた。


 そりゃそうだろうよ! なんの兆候もなく魔法を掛けられたんだから…


 これが、俺のこの3ヶ月の最大の功績。

 名付けて、【無構築魔法】魔法陣を構築するために描く必要がないのだ。

 よく小説アニメで聞く、無詠唱魔法と同類だと思ってくれて構わない。


【ポイズン】【ホワイトアウト】【スリープ】


 どんどん、バットステイタスの魔法をかけていく。


 うーん、想定より効き目が薄いかな?

 【耐性】持ちか、魔道具で補っているか、どっちでもいい、【耐性】はただの耐性なだけで、無効にはならない。


 だから、気にせず【スロウ】【ポイズン】【ホワイトアウト】【スリープ】を重ねがけしていく。


 そして、【二刀短剣リモコン術】の短剣からの攻撃魔法と、俺が振るう二刀の短剣。


 本当に、凄いな… 特級ってバケモノ。

 我が師、蒼炎の魔女もバケモノなんだ、この人だってその部類の人間でしょ?


 だから、じっくり、油断をせずに安全マージンを取り、決して焦らない。

 ロダンが、止まるまで、このまま1時間でも2時間でもこの態勢を変えない。


 我慢比べかな? でも、俺って案外すぐに諦めたりしちゃうからな…


 比べて、ロダンは? 頑固そう…


「ハァ、ハァ、ハァ、てめぇ… 何だ…? これは…? 何やらかしてる…?」


 何が起こっているか、分からないって怖いよね?

 でも、おまえは、それでも止まらないんだろうな…




 そこから、本当に1時間、ロダンは俺の攻撃に抗って見せた。


 何もしていないのに、ふらつき、膝を折りそうになるロダン。


 これを待ってましたーー!!!


【アクセル】


 これから俺の十八番になる予定の魔法。

 俺は時が1/10になった世界を翔ける。


 そして、ロダンの背後に周り込み、2本の短剣を首筋に当てるのだった。


 でもさ、何でだろうな?


 俺のお腹に剣が刺さってるんですけど?


 ロダンさんや、後ろも見ずに、剣を刺しやがったよ。

 参ったな… 本当に強いや… コイツ…


「引き分けって所かの?」


 審判員を務めた爺が、止めに入って来てくれた。


 おい、おい、これ見て、引き分けでいいのかよ?

 一応、まだ俺は倒れてないし、ロダンの首筋に短剣を当てがっているが、ロダンの剣が腹に刺さって動けないのは、俺の方だよ?


「ぷッはあーー!! キッツイ!! 何だ? てめぇ? こんな戦い方初めてくらったぞ! そんで2度とゴメンだ…」


「あー、初めて意見が合ったな… 俺ももう限界…」


 後ろに倒れる瞬間、ロダンは剣を引いてくれた。


「あー、死ぬー」


 俺のおふざけに、横に倒れ込んできたロダンが言う。


「こっちのセリフだ! コノヤロー!」


 そして、鍛練場内に響く、猛烈な拍手喝采!


 そういえば、ギャラリーいたね…


 あれ? 今日、俺ってこれ以上冒険できないよ?


 これでいいのか??

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