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11話 ちゃんとしていますか?


 遠くの方から、ボンちゃんが使うスキル【アンカー】の効果音が聞こえる。


 これは、盾と盾をぶつけたり擦ったりとし、魔物の嫌な音を出し、ヘイトを一気に引きつける。


 ゴブ達の雄叫びと足音、どんだけ数がいるんだよ?


 あぁ、そうだ5千匹のゴブ達の音だ。


 うん、さっきから魔法陣の構築を急いで描いているのだが…

 これがまた難しい…


 俺が、魔法士ギルドへ登録したテストで撃った【蒼炎ファイアーボール】もどきの、10倍の威力を想定して作っているのだが、これ、間に合うか?


 ゴブ達が約1000mを走ってくるのには、何分くらいかかるものなのか?

 3分と仮定してみると、うん、間に合わんかも…


 何よ? この大きい魔法陣… 不格好この上ない。

 何だろう? この無駄の多い構成の仕方は…


 うーん、一遍に魔法陣を組上げようとするからダメなのかな? このままだと間に合うか分からないし、十分な威力が発揮されるか不安だ。


 この間使った【蒼炎ファイアーボール】もどきの魔法陣を大きくするのではなく、数を構築して直列に繋げて、統制する魔法陣に注入させれば?


 意味が分からないかもしれないが、イメージでは乾電池を直列で繋いで、スイッチを付けて豆電球を灯す感じだろうかな?


 直列なら威力が、上がるはず?

 でも、魔力が即尽きる可能性大?


 あれ? 並列で繋いだ方がいいのか?


 あぁ、でもね… もう、ゴブがすぐそこまで来ちゃってるのよ。

 醜い顔で唸っている。 ボンちゃんと瑛太がヘイトを稼ぎながら、こちらに向かってきた。


「我が友、ソラよ! Ready?」


「あー、もう、GO だよーー!!!」


 俺の後ろへとかけて行く、ボンちゃんと瑛太を確認してから、ギリギリで構築完了した、今にも崩壊を起こしそうな魔法陣を発動させた。


【蒼炎】


 魔法陣に投入された、魔力が意思をなし世界の理を変えていく。


 蒼白いそれは、どんどんと小さく、小さく、圧縮されていき、それはビー玉程のサイズになり、爆発的に燃焼温度が上がっていき、暴走しそうになる程不安定化する直前、指向性を与えられる。


「ビシッーーー!!!」


 何かに亀裂が入ったような、恐ろしい爆音と高圧縮された蒼白い光線。


 気付くと、それは完了していた。


 渓谷に入ってきたゴブ達数千匹。


 融解!!!


 という現状。 余りにも早すぎる熱光線は、防御をするという思考に至る前に、ゴブ達を溶かしてしまったようだった。


 あー、なんか疲れた… あれ? 何だろ? 何かが変だ?


 少し考え、気付いた。それは、簡単な事だったのさ…

 俺の右腕まで溶けて無くなっちゃってるね…


 余りにも凄い傷を受けた時に、痛みが感じなくなると聞いた事があるが、本当だったようだ。


 魔法陣構築でトランス状態だったからだろうか?


 人間の身体って不思議だな。


 それにしても、よく俺は立ってられるな?

 なんて思ったら、俺はロダンに後ろから抱き支えられていた。


 あー、魔法陣から無理やり、引き剥がしてくれたのか…

 あのまま、魔法陣の場所にいたら、身体が溶けてたかもな…

 フレンドリーファイア、自爆が存在するのね…

 気をつけねば… って、


 とんでもねー! 魔法怖いー! グッジョブ!ロダン!


 そんな事を思いながら、そして、俺は意識を無くしていくのだった。




 ゆらゆら、のしのし、揺れている感覚で目を覚ました。


 どうやら、俺はおんぶされているらしい。


「おう! 目が覚めたか! 本当におまえはダメだな! 俺が彼処にいなかったら… おまえ死んでたぞ?」


 身体が怠い… こんな時の為に俺は魔道具を作り持ってきていた。

 ス短剣、ヘイストの腕輪、そして、リジェネリング。

 【リジェネ】という魔法の効力が込められた指輪。

 左手に填めてて良かった… 右手にしてたら、今頃、サラッと融解してたね!


 魔道具の良いところの1つは、魔力が要らず起動できる所が上げられるだろか。

 今の俺のカラッケツな魔力では、直ぐに魔法を使うのは躊躇われる。

 

 だからこその魔道具! リジェネリング!


 俺は、リジェネリングを発動させ、右腕があった場所に【リジェネ】をかけていく。


 うーん、治らん?


「この腕って【ヒール】で生えてきたりするかな?」


「はぁ? おまえバカ過ぎるだろ? 生えるわけねーだろ! おまえはトカゲか何かか?」


 独り言だったんだけどね…

 また、怒られた。


 だとすると、【リジェネ】と【ヒール】の違いって何だろ?


 基本、【ヒール】は神殿ギルドの領域で、プリーストなどが使用する魔法だ。


 そう、魔法なのだ。 それなら魔法士ギルドでも、いいじゃん? と、思うのだが、大昔から神殿ギルドと魔法士ギルドは犬猿の仲らしく、


 回復魔法は、女神の領域という建前で、神殿ギルドが、その回復魔法【ヒール】などを独占管理しているのだ。


 同じ魔法を使う者同士仲良くやればいいのにね…

 何か、譲れない物があったんだろう。俺には分からない世界だ… 女神とかね…


 そう言えば、神、女神、なる存在X,Y,Zな方々がいたとして、そのX,Y,Zに俺達が、この世界に転移させられた可能性を考えていなかったな…

 まぁ、この線はないだろうな。

 だって、俺、神さん系の方々に、会った事ないし。

 でも、1度は、この世界の神、女神、宗教の事は調べてみて損はないだろうな。


 宗教って、その土地に住む人達にとっての文化形成に、重要な役割を果すしね。


 まぁ、今は、宗教とか神とかどうでもいい、現実逃避してしまったぜ…


 俺の腕、治らんーー!


 いや? 治るのがものすごく遅い?

 うん? 何だろう? 何かが引っかかる。


「なぁ、ロダン…」


「あ? 何だ?」


「この腕の傷に【ヒール】をかけたらどうなるのかな?」


「そりゃ、おまえ、傷が塞がるだろうな… それがどうした?」


 そうか、傷が塞がるのか… そして、腕は生えてこなくなると…


 でもさ、この【リジェネ】は、傷は塞がってないよね?

 って、事は、この【リジェネ】は回復魔法ではない?


 いや、でも、ちょっと観察していると、傷口が微かに動いているのに気付いた。

 何だろ? 不謹慎だか、俺の傷口の細胞達が踊っているように見えた。


「おう! 着いたぞ! ここなら、あっちの方も見えるだろ?」


 ロダンが降ろしてくれた場所からは、冴恵先輩とボンちゃんの姿がよく見えた。


 ボンちゃんが、ゴブリンキングと思われる、他とは明らかに違う大きい個体と、タイマンで戦っている。

 戦うというより、ボンちゃんが一方的にやられている。


 それでも、それでいい。いや、最高だ! ボンちゃん!

 ボンちゃんは、一身にキングからの攻撃を受け続けている。 よって、キングはボンちゃん以外の者に攻撃に行けないのだ。


 その間、そこは、ただのジェノサイドランドになっている。

 冴恵先輩が、入れ食い状態で残ったゴブを一方的に虐殺していた。


 冴恵先輩… なんか笑っていないかい? 楽しそうに見えるのは気の所為さ。


 これには、ロダンも苦笑いを零していたよ。


 俺が取りこぼした数百匹のゴブ達の数が、みるみる減っていく。


 逃げだしそうにしているコブ達から、斬っていくのだから、相当混乱している様に見える。


 あー、瑛太が、矢で冴恵先輩の死角のゴブ達を効率よく倒しているから、冴恵先輩もやりやすそうだね。


 しかも、リーダーであるゴブリンキングは、ボンちゃんに阻まれ助けに来てくれないし。

 ゴブ達よ、可哀想に…


 さっき、数千匹を融解させた、俺が言える立場ではないかな?


 あれ? 性徒会長の行方が分からないな?


 まぁ、いっか、あの人なら殺しても死なないだろう。


 それよりだ! 俺のこの右腕! ほんの僅かだが、先程より伸びてきている気がする。


 無くなった、骨、神経、筋肉、皮膚、それが少しだが、出来上がってきているってこと?


 ふむ、ふむ、なるほど… その仮定の上から導き出される事は、【リジェネ】は、回復魔法なんかではない。

 地球の言葉で言えば、再生医療!


 IPS細胞に似た、万能細胞を魔法で作り、身体の遺伝子情報から、その場に合った細胞に変化させているとしたら?


 おい、おい、この【リジェネ】は下級魔法だぞ?

 一定時間の体力回復って触れ込みで売ってたので、大枚はたいて買った魔法だった。


 体力のない俺にはピッタリとか思ってさ…


 この世界の魔法士さんよ! あんたら何やってくれちゃってるの!?

 しかもその効果の絶大さに、気付いてないって…


 でも、このスピードで再生を繰り返してもらっても、右腕が元の姿になるには、数週間かかるのでは?


 その間、出血し続けるのだから失血死するね…


 さて、どうするかな? 【ヒール】をかけてもらって傷口を塞ぐのが定石だが…


 それでは、俺の右腕が完全に失われるのだよ。

 恐らく、魔道具で義手とか作れると思うし、それはそれでロマンを感じるが、やはり利き手が使えないのは不便だな。


 先ずは、実験を始めるしかないかな…


 再生魔法実験開始。


 実験考察、これが、どんな細胞にでも変化する事ができる、万能細胞を生成する魔法だとする。


 あつ、実験したくても、魔力がないや…

 仕方ない、あれをやるか…


 あれとは、【玉抜け】のスキルだ。


 この1ヶ月で解った事は、【玉抜け】は、有用性と危険性が表裏一体のスキルだと言う事。

 

 有用性の方は、ゴブの様に低スペックな生き物に憑依でき、その生物のスキルを自分の魂?みたいな所にトレースの様な事が出来るっぽいのだ。


 トレースの様と言ったのは、完全に再現するのには練習が必要だという事。

 結局の所、練習してスキルを覚えるのと、そうは変わらない…

 全くそのスキルを持っていない人が、スキルを得ようとするより、少しだけ練習すれば使えるようになる分、マシだけどね。


 そして、今のところ見つかっている【玉抜け】の有用性で、1番使えて、1番危ないのは、魔力増強が出来る事なのだ。


 【玉抜け】していると、世界から魔力が溢れているのが解るし、見える。

 そして、その魔力は玉になった俺の中にも入ってくる。 玉になっている中に、世界の魔力を溜めてから元の身体に戻ると、使える総魔力が増えていたのだ。


 だから、たかが、この世界に来て1ヶ月の俺なんかが、先程の特大【蒼炎】を撃てたわけ。


 数千匹を一瞬で蒸発させてしまう魔法なんて、魔法士素人に毛が生えた程度の俺には、力不足で、荷が重くて、色々足りてなかった… 

 俺が、ちゃんとしていない証拠のような魔法だ。


 まぁ、反省も、後悔も、後にしよう。

 死んでもうたら、なんにもできん。


【玉抜け】


 俺は、その場で倒れ付し、意識がスルッと身体から抜けていく。


 綺麗な世界、だが、目の前のゴブの巣からは、特に魔力が溜まっている様な圧力を感じた。


 魔力さん、魔力さん、こっちにおいで。


 自分の中に、魔力が溜まっていくのが解る。


 あー、これ以上は、溶けて消えてこの世界の魔力と同化してしまいそうだ。

 この魔力の取り込み量を間違えたら、俺は身体に戻ってこれない【死】の状態になってしまうと理解してしまう。

 そして、それは誘惑なのだ。

 世界その物になれるのだよ。全能感を欲する欲望が人間にはあるのかもね…


 身体に戻ってくると、魔力が身体の中に溢れ、満たされていく。


 よし! これで、魔法が使える。

 

 スパーン!! と、良い音がして、俺は頭をはたかれたと気付く。


「おう、気が付いたか! 死んだかもと思ったぜ! おまえ、ポーション持って来てるだろうな?」


「一応、持ってはきてはいるんだけどね…」


「それなら、早いとこ使っておけ! 血が流れ過ぎるとそれだけで人って死ぬんだぜ? 知ってたか?」


 そんな事当たり前だろが! いや、この世界では、死因が何かとか分からない場合も多いかもしれないな。


「知ってるけど、ポーションは使わないよ」


「はぁ? 自殺志願者か? 死ぬにしても、この依頼が終わってからにしてくれや」


「死ぬ気なんて、これっぽっちも思ってないから… 今、実験中なので邪魔しないでくれますかね?」


「はぁ? 実験中?」


 ロダン、うるさい!


 それでも、早目にやらないとね…


 俺は、使える左手だけで、魔法陣を構築していく。

 利き手じゃないので、何時もより構築時間がかかってしまう。

 何時も利き手で描いても遅いけどね…




 そう、これは再生魔法。

 先ずは、魔力を万能細胞へと変化させる量を大幅に増やす。

 うーん、これだと魔力消費が激しい上に、時間もかかりそうだな。


 えーと、確か、IPS細胞って、自分の細胞を培養して、多様性になる幹細胞を作り出す技術だったはず。


 それなら、俺自身の細胞を変化させる魔法陣を組む。

 大量に垂れてくる血液でやろうかな?


 変化していく、万能細胞に今度は指示を出す。

 骨になれとか、神経、筋肉、皮膚、傷口の先から先へと、出来上がっていくそれは、一言で言って、グロい。


「お、おまえ… な、何やってんの…?」


 ロダンが、俺の右腕を見て引いている。

スローで見せられる腕の再生。


 自分の腕ながら、キモい。


 この魔法、【リジェネ】が終了する頃には、冴恵先輩達も戦いを終わらす頃合だった。


「【チャージ】【チャージ】」


 ボンちゃんが、ゴブキングの攻撃力そのままを溜めて(チャージ)いる。

 今まで、何発そのバカ力の攻撃を受けてきたのかな?

 ボンちゃん… 君は強い!


 周りの雑魚ゴブ達を掃討し終わった、冴恵先輩が今度は、ゴブキングが振り下ろす大剣にターゲットを変更した。


 その剣閃の鋭さ、並ぶ者無し!


 ゴブキングの大剣を一刀両断! 太い大剣をまるで紙を斬るかの様に、スパンッと斬っちゃいました。


 いやー、良く切れるって気持ちいいね!


 そんでもって、ラストをしめるのは、スーパータンク、ボンちゃん!


【チャージ・パイルバンカー】!!!


 何かが、爆ぜた。

 もうね… あんなエグいのくらうゴブキングさんが、可哀想になりました。


 跡形もない? 血の雨が降る?


 形容し難いくらいの破壊力だったよ。


 俺が撃った【蒼炎】は、範囲攻撃の最高峰。

【チャージ・パイルバンカー】は、近距離攻撃の最高峰。


「おい、おい、ゴブリンキングを1発かよ…!? とんでもねー、ルーキー共だな…」


「そうだね… あの【チャージ・パイルバンカー】は、想像以上だったよ!」


「はぁ、何だ? お前らのパーティー?」


「蒼炎の魔女の本当の弟子… と、言う事でしょうかね?」


 マールーンさんが、後ろから話しかけてきた。


「そにしても! 何でしょうか!? その魔法に、あの魔法! 説明を求めますぞ!」


 穏やかなイメージだった、マールーンさんの形相は必死過ぎて怖いんですけど…


「おーい!! 終わったか!? こっちだ!!」


 性徒会長が、大声で呼ぶ声がした。


 あー、あの人やっぱり生きてたのね。


「彼女たち… いたぞ!」


 彼女たちというと、攫われた女子生徒って事だよな。

 性徒会長の必死さから見て、生きてたのかな?


 直ぐに行ってあげたいんだけどね…

 自分の身体の細胞(血液)使って、腕を再生させたのだ。 身体がクタクタだよ…


 血が足りない時は、レバーを食べればいいんだっけ?


 まぁ、レバーなんて無いし、しかたない。


「ロダンー、抱っこ!!」


 可愛く抱っこをねだった俺への扱いは、首根っこ掴まれ引きずられていくのだった。


 酷い扱いだ! 俺は依頼者なりよ?


「何か文句あっか!?」


「いえ、ありませぬ」


「そうか、金額1000枚以上の働きはゴメンだからな!」


「いや、いや、ロダンさん! あんた見てただけじゃん!?」


「いや、いや、ダメなルーキーさん! 【蒼炎】から助けてあげたの忘れたのか? きっちり指南してやった上に助けやったんだぜ! 攫われた女も生きてたっぽいし、依頼達成だろ? 追加報酬だろ? 魔剣だろ?」


「あー、そうだった…」


 金貨1000枚、日本円にして1億、追加報酬も有りなら、1億5千万円…

 魔剣、ス短剣の価格が幾らかは知らんけど、安くはなさそうだよね。


 俺の、俺達の命の値段だ。


 1億5千万円+αなら安いもんだろ?




 引きずられながら、俺は性徒会長に呼ばれた小屋に着いた。

 他の皆は既に集まっていて、無言になっている。


 うん、この悪臭の中で喋るのは辛いよね。


 いや、違うか… この目の前の苗床ってのを前に言葉が出ないのだろうな…


 酷い…


 手足は無く、筒の様な物が胃の中まで通され、それで栄養を与えていたのかな?


 俺が見ている間にも、コロコロと掌程の大きさのゴブが産まれてきて産声をあげていた。


 産まれてきているって事は、これ… 苗床は生きているって事だよね。


 治ったりするのかな?


「治ったりする可能性は?」


 冴恵先輩がすかさず、指南役の”蒼銀の砦”のパーティーの皆さんに聞いていた。


 あれ? デポンがいないな?


「苗床は無理だ… 助けられたとしても、人としての生活は送れねぇんだよ…」


「そんな…」


 ロダンと冴恵先輩が重い話しをしている。


「最初に、言ったろ? 人は殺れるかってよ…」


「・・・」


 あー、言ってたね… 特級冒険者のロダン達には、この事が分かってたんだね…


 冴恵先輩が震えながら、刀を苗床の首筋にあてがう。


 もう、顔とか分からない、髪の毛だって殆ど引きちぎられていて元の髪型とかも分からないから、人物の特定は難しい。


「ゴメンね… 未来ちゃん… 栞菜ちゃん…」


 えー!? 誰か分かるの!? 凄いな! 冴恵先輩。


「あれ? 真理ちゃんがいない…?」


 ここには苗床が何体もあるのだ、攫われたのは3人…

 この中にいると考えるのが普通だが、もしまだ何処かで生きているとしたら? 


「冴恵先輩? 本当に真理さんって方は、ここにはいないんですね?」


「うん! いない!」


「おい、おい、流石に、これじゃ人物特定なんて無理だろ?」


 ロダンの言葉は正しいが…


「私には解るから!」


 そう、冴恵先輩には【天眼】とかいう、いかにも強そうなスキルもあるのだ。


 何が見えるのかは、聞いてないから分からないが、冴恵先輩が言うなら、正しい可能性大!


「追加報酬の為に頑張って探してみる気はないのか? 苗床は生きてる内に入らないんだろ?」


 俺の言葉に、真後ろから声がいきなり聞こえた。


 アブサロムさん… 忍び寄るの怖いからね?


「あちらの方の小屋に、少女1名、まだ生きてる」


 要件だけを喋って、また姿を消す。アサシンカッコイイ! それに、生きてる!


「生きてる!?」


 冴恵先輩は、走って向こうの小屋に行ってしまった。


「おい、性徒会長! こっちはいい… あっちを頼む」


「そっか… 流石にそんな気は無かったんだけどね…」


「いいってことよ… できる奴が、できる事をするって事で!」


「了解… ありがとな、リーダー」


 特に茶化すでもなく、リーダーという言葉を置き去りに去って行く、性徒会長。




 よし… ここからは頑張って、このパーティーリーダーの仕事をこなしますかね。


 俺は、ス短剣を鞘から抜く。


 右手はまだ新し過ぎて、握力ぜんぜんないのな。剣も握れないよ。


 左手で、殺るかな。


『どうか… どうか… 痛くなりませんように…』


 誰かに祈るのは何時ぶりだろか。


 その願いが聞き届けられたかは分からないが、首であった部分に、ス短剣を刺された苗床達は、ゆっくりと活動を止めていった。


 這い蹲る様に、小屋の外に出る。


 気持ち悪い。 気持ち悪い。 気持ち悪い。


 何度も、吐き続けていると、ロダンが俺の頭をガシガシしてきた。


「ちゃんとしてたじゃねぇか…」


 今日、出会ってから初めて褒められたのは、人を殺したからでした。


 ぜんぜん… ちゃんとしてねぇよ…


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