10話 ダメ出しとダメ出しとダメ出し
「先ずは、おまえ! 盾役の前に出てくるとか、いきなりダメな! そんで、諸々の判断と行動が遅すぎるダメな! 極めつけは、仲間のスキルをバラすって終わってるダメなやつな! シーフのクセして、全く曲者感無いし、おまえ冒険者向いてなくね? それに、金で強さを買えてると思っている奴が、俺はもっとも嫌いだ! そのアーティファクトが無かったら速攻死ぬぞ?」
グダグダと、説教されております。
兎に角、俺はダメだそうだ。
うん、俺もそう思います。ぜんぜん、ちゃんとしていなかった。
いや、この世界に来てから、もしかしたら、ちゃんとしてた事なんてあっただろうか?
あれ? うん? アーティファクト? なんぞそれ?
「あの… 話しの途中でなんですが、アーティファクトって?」
「おまえ、アーティファクトも知らないで使ってたのかよ!? 本当にダメだな!」
もう、ダメなのは分かったから…
「その魔剣、欲しいなぁ!! いいな! いいな!」
俺のスタン短剣で気絶していた女の子、デポンが話しかけてきた。
「その魔剣って… このスタン短剣の事?」
「へぇー、へぇー、ス短剣って言う魔剣なんだ?」
なんだよ? そのス短剣って… まぁ、呼び方なんて何でもいいけどな…
「そのス短剣? それがアーティファクトの魔剣だろ? それに、おまえのその腕輪も… うん? 腕輪は魔道具か?」
「アーティファクトと魔道具の違いは?」
「はっ、そんな事も分からないのか? ダメだな!」
いちいち、俺を貶めないと話せないのかな?
要するに、アーティファクトと魔道具の違いは、人が作れる物と作れない物の違いらしい。
アーティファクトは主に、ダンジョンで発見され、誰が何処でどう作ったのか、全く分かっていないらしい。
そのアーティファクトの中でも、魔剣類にいたっては、作れる人なんて聞いた事がないんだってさ。
なるほど、なるほど、そんな事、我が師の蒼炎の魔女メリスは、教えてくれなかったぞ?
あれ? あれ? よく考えてみよう! 俺って、メリス姉さんに、何にも教えて貰った事なくね?
頭痛くなってきたぞ… 予備で習っている盗賊ギルドからのが、色々教えて貰っているという事実。
魔道具売れば売るほど、上前跳ねていくだけで…
帰ったら文句の1つでも言ってやろう!
俺がグチグチと説教をされていると、冒険者ギルドの受付嬢がこちらに来て挨拶してくれた。
「おはようございます。もう顔合わせは、お済みのようですね? こちらは特級冒険者パーティー”蒼銀の砦”の皆さんです。指南役には、この方達以上の冒険者はいないと思いますが、いかがでしょうか?」
特級ね… 強いもんね… でも、性格がな… 言ってる事は正しいんだけど、このリーダーの性格がな…
”蒼銀の砦”のリーダーのこの男の名は、ロダン・フォン・カルガナ。
性格さえ何とかなれば、いい、ちゃんとした人間なのだろう。
「おい、おい、受け付けの姉ちゃん! 俺らはまだ、この依頼受けるって言ってる訳じゃねーぜ!?」
「ほう、因みに、その理由は?」
何となく分かっいるが、渋る理由を聞いてみる。
「そんな事も分からねーのか? ダメなのがいると、教えがいが無いんだよな…」
「えー、そんな事ないよ!? ソラは凄いよ? シュッてきて、ビリビリってなって!」
デポンが俺を庇ってくれる。
「そうだな… デポンがそこまで言うなら、追加報酬次第だな?」
俺の方を皆一斉に見てくる。 何故俺を見る?
あー、金出すの俺だもんね…
「そうだな〜、攫われた女子の救出、1人成功で、追加報酬、この魔剣を差し上げましょう!」
俺は高々と、ス短剣を掲げる。
「「「ぉぉおお〜!!」」」
ギルド内で歓声が上がる。
「その依頼、俺達が受けてもいいぜ!」
「いや、いや、おまえらじゃ指南役は務まらねーだろ! 上級の俺達が!」
何故か、色々なパーティーから人気の依頼になってしまった。
魔剣ってカッコイイもんね。
でも、ゴメンね… これ、俺、制作… NOアーティファクトよ?
「さあ、さあ、いかがでしょうか? ウチのパーティーの依頼料は、金貨1000枚! 女子救出成功時、追加報酬金貨500枚と魔剣がプラスされたぞ! これ以上、見習いパーティーから特級パーティーが搾り取るつもなのかい? 金で力を買うのを嫌悪した男の実態が、ただの守銭奴ってか?」
今まで、後ろで黙っていた性徒会長が演説を始めた。 恐らく、受付嬢にカッコイイとこ見せたかったんだろな?
「非遇にも、ゴブリン共に攫われてしまった乙女達の為に立ち上がった我々、見習いと下級だが… 正義! それを成すが為に、全てを払って教えを乞う後進の者に差し出すのは、暴言か? それともその逞しい手か? さあ、選んでくれ!」
性徒会長は、”蒼銀の砦”のリーダー、ロダンに握手を求め、手を出し静止している。
「ちっ、そこまで言われて、特級がうごかねぇーなら、冒険者なんて誰もやらなくなるな! この依頼、”蒼銀の砦”が受けた!!!」
また、ギルド内から歓声が上がる。
はぁ、ここまでやらないと、依頼受けたりできないもんだったんかね?
ゴブ討伐行く前に、もう疲れたよ?
余程、俺が疲れた顔をしていたのか、受付嬢さんがカウンターへ帰る前に、耳元でこっそり教えてくれた。
「こんな多勢の前で、名前を売るチャンスなんて滅多にないですよ! それに、”蒼銀の砦”の弟子扱いと認識されましたからね… 変な嫌がらせとか相当無くなりますよ! 良かったですね!」
ほう、ほう、それが本当だとすると、この”蒼銀の砦”は、最初から芝居をしてくれてたって事だよな…
本当に、俺はちゃんとしていないな…
少し、耳を済ませてギルド内の会話を聞いていると、”天剣のサエ”、”鷹の目のエイタ”、”双盾のボン”、”性者キヨマサ”と、既に2つ名で噂されている。
俺の事は??
さっきから、誰も全くもって目を合わせてこないな…
まぁ、いいさ、性者とか言われるよりも…
でもね、性徒会長のやつ、性者とか言われてもぜんぜん堪えてないのさ… HPの高いやつめ!
俺達は、草原を抜け、森林に入った。
ここまで来るのに、1時間程だ…
この世界に来た時よりも、格段に早いペースでの移動なのだが…
俺達はずっと走りっぱなし。
そろそろ疲れたよ? 休憩プリーズ!
ゼーハー、ゼーハー、していると、ロダンが愚痴を言いながらも、休憩をさせてくれた。
「あー、あー、これで、女共が全員、苗床になってたら、おまえの所為な! ス短剣がそんなに大事ってか?」
「はぁ、はぁ、はぁ、そこまで言うなら、このス短剣を前金としてあげますから、女子達を先に助けに行ってくれてもいいんだけど?」
息を切らせて言う俺に、ロダンは、
「バカか、おまえ? そんな事したら、指南役の依頼が失敗になるじゃねぇかよ!」
そうだったな、そう、指南役を頼んでたんだった…
「それじゃ、指南役殿、ゴブ達から女性陣を助け出す方法を教えてくれませんか?」
「うん? そうだな〜 指南役だもんな! 簡単に言うと、探す、引きつける、倒す、これを繰り返しが基本な! でも、ゴブの巣が洞窟なら、ひたすら戦い、女共を見つけたらトンズラが1番かな。 平原に、人間の村とかを巣にされたら、少しづつ、引き付け倒し数を削っていく」
そんな、為になる話しを聞いていると、デポンがいきなり現れた。
「ゴブの巣、発見したよ! 数は約5千ってアブが言ってた!! 5千ってワクワクだね!」
「ちっ、5千匹かよ… キングが生まれてる可能性大だな… 見習いパーティーがやる依頼じゃねーぜ!?」
ロダンが愚痴を零している。話に出てきたアブとは、アブサロムさんという”蒼銀の砦”のアサシンだ。
冒険者ギルド内で、何処にいるのか分からなかった人だ。
もし、最初に襲ってきたのが、デポンではなくアブサロムさんなら、俺の首筋に刃が当たっていた事だろう。
悪い言い方かもしれないが、影が薄いのだ。
目の前に居ても、本当にそこにいるのか認識するのが難しい。
異世界舐めてたらアカン。
もし、こんな人に狙われたら、今の俺なら確実に【死】という状態になる事請け合いだよ。
あっ、もちろん、ロダンと戦っても【死】だろうけどね。
休憩しながら、どうするか、作戦を考えてみる、5千匹って軍隊でいったら1個旅団規模じゃん!
無理じゃん!
頭を悩ませていると、冴恵先輩とロダンが模擬戦を始めちゃってた。
もうね、見えないんだわ、これが…
腕から先に握っているであろう、日本刀とロングソード、そして、その体捌き、恐らく全てが理にかなった動きで、無駄がないから、目に止まらない。止めれない。
強いっていいな! もうこの2人を突撃させたらゴブレベル、5千でも1万でも余裕じゃない?
はぁ、ダメだ… こんな考えだから、俺はちゃんとしてないのだ。
ちゃんとしているように、見えるだけでもいいから考えてみよう。
「ねぇ、デポン、この辺りの地形とかって分かる?」
「うん、そんなの当たり前に分かるよ! ここで育ったからね!」
ふむ、ふむ、流石、ここで育って特級冒険者パーティーの一員になっているだけある。
土の上に枝で絵を描いて地理を教えてくれたそれは、今日1番為になった。
ゴブの巣へ行く道の1つ、大回りして裏側に回らないといけないが、ちょっとした渓谷を通る方法がある事を教えて貰えたのだ。
渓谷の横幅は約10mらしい。
うん、うん、ギリギリだけど、いいね!
作戦が、俺の頭の中でシュミレーションを繰り返しながら、出来上がっていく。
「おっと… これは、俺の負けかな?」
ロダンと冴恵先輩の模擬戦が終わったようだ。
凄いな、見習いが特級に勝ってるんですが…
「まぁ、腕の方はバケモノレベルだってのはよく分かったが、おまえは斬れるか? 殺った経験はあるのか?」
「ゴブちゃんなら、何匹か潰した事はあるよ?」
うん、うん、この世界に来たその日に、木剣でボコってたよね!
「そうか! それなら大丈夫か! 因みに人は殺れるか?」
「うん」
即答だった…
えっ!? 冴恵先輩? 人だよ? やれるって殺すって事だからね? 理解しているのかな? 冴恵先輩って天然なとこあるからね… 今のは聞こえなかった事にしよ!
「それにしても、天剣の嬢ちゃんの剣も魔剣かよ!? どうなってるんだ? おまえらのパーティーは! 見習いパーティーで、それって有り得ないだろ!?」
「私達のパーティーリーダーが、ちゃんとしているからだよ?」
「おまえ達のパーティーリーダーって…?」
「「「ソラくん!」」」
「えっ!? マジでか?」
ロダンのその言葉、俺も強く同意する。
優し過ぎる冴恵先輩とボンちゃん、人望をかなぐり捨てた性徒会長、ちゃんとしているが金欠な瑛太。
コイツらを何とか纏めあげられるのは、俺だけなのかな?
パーティーリーダー募集したら、ちゃんとした人来てくれるかな?
もしくは、瑛太に金を渡してとか…
いや、瑛太はそういうの嫌がるな…
はぁ、少しだけの間だけ頑張ってみるかな…
「はい、それでは、ゴブ討伐&女子救出の作戦を発表します!」
俺の、俺達のパーティーにとって、初戦、初陣を飾る作戦だ。
自分の中では、よく出来た物になったと思ったのだが、やはり、ロダンからダメ出しをくらった。
「おまえのその計画だと、この渓谷にゴブを誘き出すって意味あんの? この渓谷の横幅考えたら、一対多を一対一にはできねえ! いくら天剣の嬢ちゃんでも5千匹に囲まれて、戦い続けるのは怪我じゃ済まなくなるかもだぜ? 生きてるかも分かっていない女1人の為に、才能溢れる女1人を使い潰すとはダメ過ぎて、しまいにゃキレるぞ!?コラ!?」
「怒るの勝手だけど、その渓谷に待っているのは、冴恵先輩じゃなくて、俺、1人だけどね?」
「・・・」
「おまえ… 相当ダメな奴だと思っていたけどさ… バカか?大バカか? おまえが、1人で、何が、できるんだよ!!」
ロダンに首を絞められながら、また説教が続く…
「ゴホ、ゴホ、1人で、何ができるって? そりゃ、ゴブ達5千匹を、1発で仕留める事ができるかな?」
「そうだね! ソラくんならやってくれるよ! うん、うん、」
何故、冴恵先輩にそこまで信頼されているのかは分からないが、賛成されてしまった。
「よし、それなら、俺とボンちゃんで、ゴブ達をこの渓谷まで引き連れて来ればいいんだな?」
瑛太が、俺の作戦を理解してくれていた。
「そうだね、それで、僕と冴恵はゴブの巣の近くで待機かな? ボンちゃんが戻って来てくれるまで…」
「分かったよ! ゴブをソラくんの所まで、引き連れて行ったら、直ぐに2人の所まで戻って行くね!! 任せておいて!」
何? 何? 皆さん急に逞しくおなりになって…
俺が、軽く作戦の概要を話しただけで、そこまで軽くOKしちゃうか?
「おい、おい、一応、指南役の俺の意見は聞いたよな? コイツに任せるのか…?」
ロダンが真剣に聞いてくるが、
「大丈夫よ! ロダン! ソラくん強いもの!」
また冴恵先輩が、押してくれる。
あれ?あれ? 冴恵先輩が、いつの間にかロダンの事を名前呼びにしているよ?
いつ、そんな仲になったのかな?
「ふん、まぁ、サエがそこまで押すなら… やらせてみるか?」
ロダンがデポンとマジックキャスターのマールーンさんに、確認を取っている。
マールーンさんは無口だが、優しそうなおじさんだ。
「その作戦で、良いのではないでしょうか? もし、何かあれば、それこそ私共が指南すれば、良いだけの事。 それに、少し、面白い噂を耳にしておりまして…」
「面白い噂? 何だそりゃ?」
「まぁ、それは… 私が聞いた話しだと、あの、蒼炎の魔女が弟子を取ったとか…」
「はぁ? あの、蒼炎がか? アイツは弟子とか無理だろ? 正真正銘のバケモノが、人に何教えるんだよ?」
うん、そうだよ! 解ってるじゃないか、ロダン!
蒼炎の魔女っ子は、何1つ教えてくれてないよ。
「そうなんですよね… 私もあの蒼炎の魔女は、真の天才! あの方の考えを理解できる者、それを継承できる者がいるとは思えませんからね…」
とりあえず、この話しは聞き流そう! うん!そうしよう!
俺は出発の準備を進める。
「さあ、さあ、いつまで休憩してるんだ!? ほら、そこの性者! サボってないで行くぞ!」
「そうだな! 女子達が僕の助けを待っている!」
「って、さ、性徒会長のおまえがちゃんとしてれば、こんな事態になってなかったんじゃないの?」
「たかが、生徒達に投票して選ばれただけで、無報酬で、異世界生活の代表者を続けなくていけないのさ! 僕は目の前の女の子の、性徒会長をやるだけで精一杯さ!」
何をカッコつけて言っているのか、この性徒会長は…
まぁ、それでも、作戦は決まった。
瑛太とボンちゃんで、できるだけ多くのゴブ達を、渓谷に入って1000m程まで誘き出す。
1000mという計算は、ゴブ達が横に1列で7〜8匹並んで行進してきた場合の5千匹の隊列の長さ。
余裕をもって長くして見積もってみたのだが…
ゴブの個体によって足の早い奴、遅い奴、連帯行動を取る奴、取らない奴、様々な要因があり、取りこぼす可能性があるので、そこで、冴恵先輩の登場だ。
ゴブ達が渓谷に向かい、ボンちゃんが、巣の近くの所定の位置に隠れている、冴恵先輩と性徒会長と合流出来次第、残党狩りだ。
恐らく、1番強い頭の良い奴は後ろで、どっしり構えているんでなかろうか?
キングだろうが、何だろうが、戦闘民族、侍の血を色濃く引く冴恵先輩が、負ける未来など微塵も見えん!
冴恵先輩とボンちゃんが戦っている最中、性徒会長は回復魔法で支援、瑛太も弓矢で支援と女子生徒の捜索。
こんなもんだろうか?
俺も残党狩りと女子救出捜索を手伝えと?
うーん、たぶん、数千匹のゴブ達相手で力尽きる予定です!
まぁ、ダメでも指南役が何とかしてくれるっしょ!
そうして、ゴブ討伐&女子生徒救出作戦が始まった。




