野ばら
古い桐のタンスがある。結婚する娘のために、父親が育てていた桐の木を切って、家具職人に作らせたタンスである。かつての日本では、女の子が生まれると桐の木を植える習慣があり、娘が適齢期になる頃には、桐の木はタンスを作れるほどに成長し、娘が嫁ぐとき、娘とともに大きく育った桐の木でタンスを作って持たせた。
その古い桐のタンスを整理していたら、『野ばら』と書かれたノートがあった。
野ばら
芳子
私の心の故郷
誰も訪れぬ広い野原に
ひっそりと優しく咲く野ばら
頬を寄せると
心に沁みる野ばらの香り
私の傷ついた心を癒してくれる
私の心の故郷




