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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
竜の嘆き
98/102

救出6

 黑達が現れた先は、またもや暗闇。その中にポツンと金色のキングチェアが浮いて、そこだけ不気味にぽおっと淡く怪しく光って、そこにはシルフとロキが居た。


 「あ、スルト...やっと来たんだ。暇、だったんだよねー」


 ロキは友達に挨拶する様な気軽な感じでニコッと笑みを黑に向け、キングチェアの肘掛けから軽快に飛び降りると腕を組んで宙から見下ろしている。


 「あれ〜?貴方様は...それにシルフ様も...此処は?」


 アイゼンは二者(ふたり)を見つけると嬉しそうに急に話に割り込んで、ヴァンに抱きついたまま興味深けに上を見上げている。


 「...はぁ...」


 バン!!


 ロキ顔が急変して冷たい目をした瞬間、アイゼンだけ急に遠く吹っ飛んで地面に叩きつけられる。


 「あのさー...僕は、僕が、話してるのを邪魔されるの、好きじゃないんだよねー...君さー分をわきまえるって知ってる?...あは、アハハハハ!知らないから、こんな事になってるんだっけ?」


 ロキは冷たい目をしたまま顔は不気味に笑ってアイゼンの側へ軽く飛び降り、うつ伏せのまま小さく呻いているアイゼンの背中に遠慮なくドカっと楽立て膝で座る。


 「さぁー!脇役は大人しくしてるからさー...楽しませてよ、ね、スルト」


 無邪気な顔で笑ったロキは、そのまま黙り込み闇へ紛れる。ただ、暗闇なのに黑を見つめるギラギラと執着心に満ちた強い視線が突き刺さる。黑はその視線の先を軽く睨んでからシルフへ視線を上げると、黑は軽く地面を蹴って飛び上がり、シルフの目の前に立つ。


 「...帰っておいで...」


 黑はそっと囁き掛けて、シルフの肩に手を置いた。黑の手が光り、パアァーと淡く光り出したその温かな光は二者(ふたり)を優しく包み込んだ。



 . . . . .


 目の前が真っ赤に燃え盛り、その中に一人膝を抱え膝に顔を埋め小さくぎゅっと身を屈める少年姿のシルフがいた。


 ずっと、ずっと、小さく、泣いている声が聞こえる。


 炎はシルフの幻影で黑を阻むものではなく、目の前には無いみたいにゆっくりと進むとシルフに近づいてしゃがみ込む。


 「僕は...ただ...みんなに幸せになってほしくて...でも、でも...結局、あの子しか助けられなくて...僕にはあの子しかいなくて...間違ったのかな...あの子の為だと思ったんだ...」


 黑は眉に皺を寄せると、それとは裏腹にそっとシルフを覆い被さる様に優しく抱きしめた。


 「シルフ...それでも...ヴァンは...ずっとあの時に囚われたまま...苦しんでる。ヴァンは生きて、前に進むべきだよ...今なら...支えてくれる仲間もいる」


 「もう...大丈夫かな...」


 「大丈夫...大丈夫だよ」



 . . . . .


 淡く小さな光の粒子が弾ける様に散らばって、雪の様にしんしんと降り注ぐと暗闇だったその場所は優しく照らし出され、サァーーと心地よい風が吹いた。すると、一転してそこはかつて、シルフが大好きだった草原へと変わった。


 シルフはその草原の中、(ドラゴン)の姿で懐かしそうに空を見上げて佇んでいた。そして心地よい風を充分に感じた後、シルフは頭を垂れ下げて、真下にいる虚ろな目をしたヴァンに近づいた。


 「...ヴァン...ごめん...ごめんね。でも、僕は、君が大好きだった...ずっと一緒にいたかったよ...でも、返さなくっちゃ...約束は守らないとだめだから...でもね、覚えていて...みんなはいつも一緒だって...みんなの分もヴァンに生きててほしいって願ってる...だから、強く、強く、生きて」


 シルフはヴァンにそう優しく囁いて、ヴァンの額に口付ける。そこから、温かな優しい淡い萌葱色の光がヴァンを包み込んだ。そして、ヴァンの瞳に光が戻り、堰き止めていたものが一気に溢れて大粒の涙が流れていった。

 ヴァンとシルフの目が合うとシルフはにっこりと優しく目を細め、ヴァンは両手を伸ばしてシルフのひんやりと心地よいゴツゴツした肌にそっと触れた。

 その瞬間、シルフは淡い光に包まれ蛍が夜空にふわっと飛び交う様に散り散りになってすっとその場から消えた。


 そして、ヴァンの手の中には一つの萌葱色 (ドラゴン)のキラキラと美しく輝く鱗が残った。それは、どこか温かくて、ヴァンは両手で握り締めて大声を上げて泣いた。



 . . . . .


 黑の目の前でシルフは消え、ヴァンだけそこに残った。そして、ロキの姿はどこにもなく、アイゼンの姿もまた幻だったとでもいう様に居なくなっていた。

 

 魔法が解けた様にフリークの地で、でもそこにはかつての美しい景色はどこにもなく、悲しいくらいに何もなかった。


 そして、ニフリートは眉に皺を寄せて涙を堪えながら、泣き崩れたヴァンに近づきしゃがむと優しく背中を摩る。


 一同はそれぞれに悲しみを抱えながら、先に進めず涙を堪える様に瞼を閉じた。


 だが運命は無情で、そんな暇も与えてはくれなかった。


 耳を塞ぎたくなる怒りに満ちた満ちた咆哮が、この世界を揺るがし響き渡った。

 

 その声で一同は目をパッと見開き、その声がする、赤く染まった空を見上げた。

 そこには闇色に染まりつつある(ドラゴン)が大地を燃え尽くさんばかりに口から炎を吐き散らし、世界が終わりを告げる、まさにそんな瞬間に見えた。

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