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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
竜の嘆き
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救出5

 「んー...僕達の親睦を深める時間を...他人が土足で入るのは如何なものかなーと思うんだけど?」


 虚ろな目で耳を塞ぎしゃがみ込んでいるヴァンを、アイゼンはニヤニヤと実に嫌な笑みを浮かべながら後から抱き付いて手離さず、黑達を見ている。


 「はぁ〜...どいつもこいつも、イカれた奴ばっかりね...さて...アテネねぇ様...まずは黑と合流して...私は...とりあえず...前に出るわ」


 「分かった」


 ボソボソと小声で二者(ふたり)は耳打ちし合い、ちらりと視線を交わすと小さく頷いた瞬間、ニフリートはヴァンの方へ駆け出し、アテネは黑へと駆け出した。

 アイゼンは全く動じずヴァンをしっかりと抱え、黑達の動き全体を用心深く静かにじっと見ている。


 アテネが黑と合流し、少し距離を置いてニフリートはヴァンとアイゼンの正面、後には黑達がいる、丁度真ん中に立った。

 ニフリートが壁となる体制になって、黑は防魔法を側にいる仲間全体に施す。

 これで怪我人のアテネと機械の身体で戦闘には加われない心は守れるが、アイゼンがピッタリとヴァンにわざとらしくくっ付いて、ニフリートは容易に攻撃を仕掛けられずにそれ以上動けない。


 「あの男、ヴァンをどうするつもりだろうか」


 一向に動きを見せない男を不審がって、アテネはアイゼンの動きを注意深く見つめながらも、こそっと黑に訪ねる。


 「...道連れにしたいならとっくにしているだろうから...理由があって、生かしてると思うが...今のヴァンを助けても、ヴァンが現実を受け入れて目を覚さない限り意味がない」


 「なぁ、黑...それはどういう意味だ?」


 じっとしている事に痺れを切らしたのか、ぎこちなくも飛んできた心は、丁度話が聞こえたのか話に割って入り黑の肩に留まる。黑は何故降りてきたのかという様に少し咎める様に心を見るが、直ぐにヴァンの方へ視線を戻す。


 「この空間はあの男が作り出したものだが、ヴァンが動けないのはヴァンが心を閉ざしたから...どうしても受け入れられないのだろう...だから私が無理やり目覚めさせても...また心を閉ざして病むだけだ」


 「...何があった?」


 「心は...そこまで見ていないのか...この世界が歪んだ原因の一つ...虚像だ」


 「「虚像?」」


 心とアテネは不思議がって同時に言うと、黑を直様見る。


 「...人間は、この世界で一番弱い。魔力や筋力それらを魔宝具(アダート)で補っても限界はある。それは...神族(テオス)による大きな厄災の前では、赤子同然。他の民達も甚大な被害を受けた中、人間が生き残るのかだ...そもそも、その厄災となった原因はなんだったか、覚えてる?」


 黑に聞かれた瞬間、心はハッと思い出した様な顔になりバッと視線を移動させてアイゼンを見る。その表情は、心の魂と相性がよく馴染んでいるのか感情が黑の時よりもそのまま出て、とても機械とは思えない。


 「...あ...あの...あの男だ!」


 「そう...人間が仕掛けたのが原因。そこにどんな理由があったとしても、それは変えようもない事実。この世界がただ崩壊するだけであれば、こんな事にもならなかった...だが、此処は崩壊しては行けない世界、代償は払わないといけなかった...天罰だ...地の神々は人間を不要と判断し、ほぼ全滅に近かった」


 「「え?」」


 「待て、黑、だって...みんな生きてただろ?短かったけど、俺達一緒に過ごしただろう?」


 「...なら聞くが、あの大きな飛行船、ファルケを、魔力の低い人間でずっと飛ばせていたと思う?」


 「それは、残った人間達の魔力を合わせて...」


 「他の民でさえできない魔法を、人間ができると本当に思ってたの?」


 「...目の前で...」


 話をする内に段々自信がなくなってきた黑は、それ以上言葉を続けることはできず俯く。


 「あの船は確かに崩壊前に、ヴァンの父であるテンダーネスや、バクサ、デニス、テナークスによって形にはなってはいた。けど、実際に飛んだことはないし、崩壊の時に火の海に飲まれて跡形もなくなった。ただ、ヴァンはあの船でみんなで飛ぶのを夢見ていたから、強く思念で残ったんじゃないかと思う」


 「...なら...俺達が喋ってた人達はもう...」


 「そう、死んでる。フリークの美しい記憶はかつてヴァンが見てきた過去、あそこにあったものはそれを元にシルフの魔法で見せているだけの幻...ただその虚像を創り上げる為だけに、シルフが無理矢理、器が無いまま魂を留めたんだ。独りぼっちになってしまったヴァンをシルフが哀れみ禁忌を破ったんだ。それは許されない事...だから、フリーク全体が呪われ、それの影響で魂も穢れ狂い出し、ロキの魔法の力で人喰鬼(イーター)に変えられた。あれは、魂だけだとエネルギーが足りず消滅するのを、他の魂を食べる事で補ってたんだ」


 「...その理屈だと... 全て人喰鬼(イーター)になったって事じゃ...」


 「一部のヴァンが思い入れのある人間の中で、穢れないまま清らかなまま留まった魂だけ、シルフが直々にマナを分け与えて守ったんだ」


 「...見た人達は...悪い人には思えなかった...けど」


 「心...理屈ではない。誰にでも、欲はある。高みへと願う気持ち、人を愛する気持ち...様々な気持ちがあって、それが誰よりも強いとしたら、それが誰かのせいで手に入らず劣等感を感じていたらどう?」


 「...確かに...そういう感情は...あるな」


 「それでも他者を認め、そういう自分も受け入れ、他者を大事にする者程清らかな魂となる。それが容易にできないからこそ人間は、脆い。それは...シルフが...未熟過ぎた...その影響を人間は受けて生まれたんだ...悪いとも言えない」


 「...なら...ロキが悪いんじゃないのか?そんな付け込む様な事をして...」


 「あれは、天罰そのもの。天罰に値する事が世界で起こった、だから役目を果たしただけ。悪いとか悪くないとかではない...やり方は最悪だとしても」


 「...起こってしまった事をとやかく言っても始まらない...黑、どう、この状況を打破する?」


 ニフリートは最初こそ驚いていたが流石は隊長を務めるだけあって、冷静に今はアイゼンを窺いつつ的確に聞いてくる。


 「...向こうも動く気配がないなら...一旦...場所を無理矢理変えるしかないだろうね」


 「...そうか...黑は...行けそうか?」


 「もちろん」


 そう言った瞬間、黑は両手を地面について一気に内のマナを放出すると魔法を展開し、一瞬にして眩い光でその一体全部を飲み込むとその空間からそこにいる全てが消え去った。

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