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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
竜の嘆き
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救出3

 ハイリゲが動けないアテネの肩に腕を回しニヤニヤしながら、待ち構える様に黑達を見ている。


 「あーあー、折角お膳立てしたのにさー?何、お持ち直してのさー、計画台無しーじゃーないか...ま、最後だ、簡単に終わったらつまんないかー...ま...パーっと俺と遊んでくれよ!!」


 ドンっとアテネを強く押し出して、ハイリゲは後方へ大きく飛ぶ。

 アテネは押された反動で地面に打ち付けられ真横に倒れると苦痛に顔を歪める。動けずにいるアテネを、黑は心を肩から下してから素早くゲミュートから降りて近寄ると顔の近くでしゃがみ込む。

 そこからアテネの肩に手を触れると黑の手が光り、アテネは金縛りが解けた様にビクッと肩が跳ね上がり額に片手を添えながらゆっくりと上体を起こす。


 「...アテネ、大丈夫?」


 「うっ...あぁ...大丈夫だ...状況は...」


 アテネは頭が痛むのか額を抑え、顔を歪めながらも黑に視線を向ける。


 「封印は破壊された...状況はよくないが...まだ救う方法はある」


 「そうか...なら、あいつを先ずは倒すが先決だな」


 「そうだね...行けそう?」


 黑は立ち上がり、そう言うとアテネに手を差し伸べる。アテネは軽く頭を振ってから、ニッと吹っ切れた様に笑みを見せると黑の手を取って立ち上がる。それから二者(ふたり)は、少し遠くの方にいるハイリゲをは見据える。

 ハイリゲは片手を前に出し自分の掌を切ったのか、そこからポタポタと地面に黒い血が垂れて黒い染みが広がっている。


 「準備いーかーい?」


 ニヤーっと不気味に口角を思い切り釣り上げて、挑発する様に手を動かす。二者(ふたり)は少し間隔を取る様に離れると身構える。


 「死者反転(ルネートゥル)!!」


 ハイリゲが声高く叫ぶと、ハイリゲ身体から大量の黒いモヤが吹き出して血溜まりへと吸い込まれてから一気に吹き出し、黒い塊から人の形へと変化し、それは消えたはずのテナークスそっくりの形となった。


 「行け!!」


 黒いテナークスは、ハイリゲの合図で地面を抉る程の勢いで蹴り上げると一気に弾丸の如く垂直に飛んでくる。

 咄嗟に黑とアテネは別方向へ飛び退いて回避し、黑の手が光ると光の鎖が出現し黒いテナークス目掛けて蛇の様に素早く伸びて上半身から首まで締め上げる様にきつく巻き付く。


 「アテネ、ここは私に任せて、行け!」


 黑は自分の両手に光る鎖をぐるぐる巻きつけて逃がさない様に更に締め上げ引っ張るとそう言って、アテネに視線を送る。

 アテネは小さく頷いて、一向に動く気配のないハイリゲへと走っていきながら魔法を展開し青い光の刀を握り締める。

 目の前、地面を蹴って刀を振り上げ両手で持つとそのままの勢いでハイリゲに斬り掛かるが、突っ立ているだけと思いきやハイリゲに纏わりついていた黒いモヤが幾つものピアノの弦の様になってアテネに襲い掛かる。

 アテネは飛んできた弦を刀でなんとか弾き飛ばすが、弦の数の方が多すぎて刀と片腕に絡まってしまう。そこを一気にハイリゲは弦を手前に引っ張って、強引にアテネを引き寄せる。物凄い力で抗えず、アテネとハイリゲの顔がくっついてしまうかという程近づく。


 「アーテーネー!!ヒャハハハハ!!非力、非力、俺の前では全然だな!!ほら、どうした!!振り解いてみせろよ!!」


 「喧しい!!この!!」


 アテネは柄をグッと握り締めると、力任せにそのまま刀をハイリゲへと押し込む。だが、それに伴って腕に絡まった弦がギシギシいいながら食い込んで強烈な痛みを生む。それでもアテネは歯を食いしばって、力で押していく。魔力を使い過ぎて、そうするしか方法がないのだ。


 「マナ切れか?あぁー?なさねー隊長さんだな、おい!!」


 遠く煽られながらも力を絞り出して応戦しているアテネを黑は横目でちらっと見てから、抵抗して光る鎖をガチャガチャと腕の力で引きちぎろうとしながら鋭い歯で光る鎖を噛んでいる黒いテナークスを見る。こうはっきりと人の形をしていると人の念が生きてる様に思えて無下に消滅出来ず、だからといってこの邪の属性の中ではハイリゲの方が相性が良く、今のアテネでは勝てそうになく放ってもおけない。

 この空間自体が歪んでいて思い通りに出来るか悩んだ末に一か八かで、黑は片足をドンっと地面に叩き付ける。

 するとその地面が円形に光りウロボロスの絵柄が浮かび上がった瞬間、もう一度、ドンと地面を叩き付ける。

 アテネの後方が眩く急に光だし一気に勢いよく立ち昇る。

 そして、その光がパンっと破裂した様に散るとそこにはニフリートの姿があった。


 「はぁえ?」


 ニフリートは状況が読み込めず気の抜けた顔で変な声をぽろっと上げてしまうが、張り詰めた空気感を瞬時に察すると急に顔を引き締め、直様魔法を展開して大太刀を両手で握り締めると振り上げる。


 「斬波(グロス・ヴァーグ)!!」


 ニフリートの手の甲の魔方陣が強く浮き上がり、そのままの勢いで力強く振り下ろすと三日月の様な形の波の斬撃がアテネの弦を切り、ハイリゲを襲う。

 そこまでの展開が早すぎて、流石のハイリゲもうまくは対応出来ず、咄嗟に後に飛び退いたが斬撃がもろに直撃してその爆風で更に後ろに吹っ飛ぶ。


 「...あら、なんかいー感じに決まったのかしら...にしても...アテネねぇ様、ボロボロねぇ」


 倒れそうになったアテネを直様魔法を解除して後から駆け寄ると支えたニフリートは、苦笑混じりにそう言って、抱き抱えた。


 「...おい...骨が折れた様だ...乱雑に扱うな...痛い」


 「あらあら、いつもは痩せ我慢するのに、しおらしいこと言うじゃない。なら、レディーは大人しく寝てて頂戴ね。私がアテネねぇ様の分、ボコボコにしてやるわ!」


 アテネをそっとその場に寝かせると、さっきまで軽口を叩いて優しい笑顔していたニフリートは、一気に真剣な顔付きになってハイリゲへと物凄いスピードで駆け出して行った。

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