水の竜の追憶2
ウンディーネが必要にシンモラを固執したのは、それは純粋で慈悲深いという性を、スクルドが植え付けたからだった。
その他の四大精霊もまた同じで、この全ての世界を維持していく為に、それぞれの性が必要であったのだ。
その事実をウンディーネは知る由もなく、何処かで自分は異常なのかと優しい性格故に思い悩むこともあったが、それを表に出すことは決してなかった。
ウンディーネはまず、シンモラから貰った種を聖地へ埋めた。水に触れればその世界がどういう場所なのかは、手に取るように分かっていたのだ。
そこから、一気に水が豊かな国を作り上げた。兎に角、急いでインフィニティゾーンを作る必要があった。
他の四大精霊は、この世界を豊かにする為に必要と勘違いしていたが、正確にはこの世界を豊かにしてマナを大量に生み出しシンモラへマナを注ぐ為に必要な事であったのだ。
それを知らずとも、自分達は性に生きるもの。あえて教えなくても他の四大精霊は着々と、この世界を豊かなものにしていった。
ウンディーネはキュアノスの地が整うと、種が目覚めるのを知っていた。そして自分が願った通り、自分に忠実で誠実であり、真摯に自分を国を守る義理堅いエルフが誕生した。
そして、竜の姿からエルフと同じ様な姿に自らを変えた。竜よりも、距離も近く話ができる、この方が親しみやすいと考えたのだ。
それからキュアノスの民は力と癒しの二つの家系に分かれ、その二つを同時には持ち得ず、互いを大切にし助け合ういい関係性を築いていった。
ウンディーネはそんなキュアノスの民も自分の子同然に大切にしたが、何よりも優先していたのはやはりシンモラであった。
生物の種が降って生き物が増えたり、魚を主にしていたエルフの食が変わってきたり、ミニエーラの民が行商し、フリークの民が来てキュアノスの民と子を作ったりとウンディーネには予測も付かない出来事が度々起こったが、順調に思い描いた通り穏やかに時は進んでいった。
その、はずであった。
けれど、シンモラに気を取られすぎていたか、それぞれの民を自由にしすぎた責任か、それともきちんと他の四大精霊に自分達の役目は何かをしっかり伝えるべきだったのか、何がどうしていつのまにか世界は歪んで、気づいた時にはサラマンダーは荒神へと堕ち、世界は破滅に向かっていた。
ウンディーネはそうしてやっと、自分を過信しすぎて傲っていた事に気づいた。
滅亡していく世界を目の前にして、ウンディーネは絶望し力が抜けた様にその場に崩れ落ち跪いた。今まで自信に満ち溢れていた姿は影もなく、蒼白な顔で俯いた。
そして、この世界の生きとし生けるものが助かるのなら、自分がいくら犠牲になってでもいいと心から思った。
必死に涙を堪えながら手を胸の前に組むと地面に頭を付け、遠い世界のスクルドへこの世界を助けて欲しいと必死に懇願した。




