運命の出会い3
「着きましたよ」
スピカに声を掛けられて、包まれた光が眩く目を閉じていたが、目を開ける。少しぼんやりした視界を、目を擦ってみれば、イシュカ城の城門の前。何が起こったのか理解出来ず、衝撃が強く立ちすくんでしまうカロ。
「大丈夫...ですか?」
スピカは、小首を傾げながら、心配そうに見つめてくる。150cm前後だろうか、小柄で見上げているが可愛らしい。
手を掴まれたままで、心配もされて、嬉しさで顔が緩む。
そんなカロを見てか、怪訝そうな顔色になるスピカ。
「あ、いや、ごめん、ごめん。何か急に戻って来れたからびっくりして!簡単に戻れて嬉しくてー!私は、全然、平気!」
やましさを隠すように、早口で弁明。はははと、とぼけてわざとらしく笑い、視線は明後日の方向。
「...なら、よかったです。転移魔法...場所を移動する魔法を使ったので、この魔法で体調壊す者もいるので。...じゃ、アテネの所に行きましょうか」
掴まれていた手が離れ、少し淋しさを感じて、掴まれていた部分を自分で掴む。まだ温かみがある。
スピカに後を追い、建物の中に入って直ぐ、出入口の横にアテネが壁へ背を預けて腕を組んで立っていた。
「お帰り。無事に会えたようで何より。...まだまだ、鍛錬が足りなかったようだな、カロ」
「鍛錬??いやいやいや、ちゃんと獲物は取ってきましたけど!」
空間魔法から3匹のレプスを取り出して見せつけると、ドヤ顔のカロ。ククッと小さく笑ったアテネは、カロの方へ近づいて腕組むと仁王立ちで微笑む。
「それは、スピカが取ったのだろう?」
「な、何で?」
「スピカの手を見ろ、血がついているだろう?だが、君の手は綺麗なままだ」
指摘されてスピカの手を見ると、確かに血が飛び散ったような跡がある。カロの手を見れば、土汚れはあるが、血はついていない。
「君がスピカと会った時には、陽が落ち始めていたんじゃないか?だから、スピカが狩って、血抜きして、渡したのだろう?それに、レプスの足を束ねてるその青い紐は、いつもスピカの髪を束ねている紐だ。それに矢が全く減ってない」
「アテネ、そのくらいにしたら?カロさんをわざと、あそこに行かせたんでしょ?狩りはあくまでも、口実でしょ?」
「まぁ、そうだな。お使いは、できた訳だからな」
「え?それって、どういう?」
「聞こえていなかったか。...まーなんだ、君とスピカを会わせたかったんだ」
「なら、初めからそう言ってくれれば、いいじゃないですかね?」
「弓の練習の成果も、見てみたかったからだ。まだまだ、練習は必要なのはわかったがな。今後は、斜面下でも狩れるように」
「えっ!!」
狩りを失敗がバレてることに、驚きと気まずさで言葉が詰まる。
「まぁ、今日は、このまま風呂に入るといい。それとそのレプスは預かろう」
「へ?」
「君が、内臓処理や皮を剥ぐっていうなら別だが」
「いやいやいや、私はできないので、お願いします」
アテネの浮かべる笑みが怖いし、グロテスクな想像をして、苦虫を噛んだような顔しながら、早口で捲し立てると、頭を下げて、レプスをサッとアテネに渡す。
あれから個々に分かれて、風呂から上がって、夕食。想像はしていたが、レプスの香草焼きというものが食卓に上っていた。
肉へ加工されているが、流石に抵抗があって食べずにいたら、アテネの無言の笑みという圧力。
恐る恐る食べてみれば、肉質が柔らかいし、臭みもなく、すごく美味く感じ、また食べたいなと思えるほどであった。
ウンディーネから割り当てられた、自室のベットに仰向けに寝転がり、今日のことを思い出していたカロ。主にスピカのことである。
何で、あんなにも惹かれてしまうのか。側にいると、胸が高鳴るのか。この世界には美人が多いのに、そういう感情は湧いてこない。ウンディーネにすら、ない。
元々、女性にはそんなに興味がないというか、好きになったことがないと思うカロ。
男が好きなわけではなく、女性と男性なら断然、女性である。
何度考えても答えは出ず、眠気に襲われて、考えるのを放棄した。
いつも読んで頂き、有難うございます。
拙いですが、今後とも読んで頂けると嬉しいです。