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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
竜の嘆き
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火の竜の追憶2

 天気雨から一晩経ち、不思議な事が起きてドキドキと胸が高鳴っていつになく興奮気味のサラマンダーは一睡も出来ずに朝が訪れた。

 一晩で四国を覆い被す様な勢いでミニエーラから成長した大樹は陽の光を受けると不思議な実を世界中に飛び散らして消え、その実はポエニクスにも落ちてきた。

 今まではポエニクスの地は大火山の影響で国全体が熱く生物が生きていくには過酷な環境であった。

 だが、あの雨によってその環境に耐えうる草木や花が育ち、勢いよく空から地面にヒビを入れる程の衝撃でドスンドスンと落ちてきた実も直ぐに開花して、その土地に適した生物が生まれた。

 大きな生物は順応できないのかいなく、目の周りがマグマの様に赤いツカツクリに似た鳥達が森に住み、その餌となるコオロギ達も増えた。

 それにより静かだった夜は、鳥やコオロギ達による眠りに誘い癒す様な演奏会が繰り広げられた。

 いつしか感化した様にフェニックスとサラマンダーに名付けられた焔に包まれた鷲もフルートの様な美しくしっとりと奏でる様な鳴き声で歌うようになり、それを聴きながら眠りに付くのがサラマンダーの日課となった。

 心穏やかに寂しさの隙間埋めてくれる様な日々を過ごす様になった。

 ただ、雲一つない空の青さと夜空の星の輝きを見つめていると、ふと他の四大精霊(エレメンタル)との楽しかった日々が甦って、もう会えないからこそ薄れていた寂しさが込み上げてなんとも言えない切ない気持ちになった。


 それからサラマンダーは昼間はその想いを振り切る様に空を飛び回り器を疲労させ、夜は直ぐに眠りに付くようになった。

 それでも拭いきれない想いはあって、その気持ちに気がついたフェニックス達は夜の間はそっと寄り添う様に眠るサラマンダーの身体の上に留まる様になった。

 初めのうちは眠っていたサラマンダーも、自分の上で歌を歌われては気になって眠るに眠れなくなり、そのうち無意識にフェニックスの歌に合わせて小さくだが鼻歌を歌うまでになった。


 歌えば心の隙間が埋まった様で気持ちも良く、空を見上げて昔の思い出浸る事も少なくなった。それが何年も何年も続けば、その気持ちも段々と薄れていった。


 ある美しい満月が輝く夜、ポエニクスに少年と少女が現れた。


 「あっつー...これでも昼間よりましなん?なぁ、フルール」


 暑気にやられたのか少し気だるそうに少年は発して、手を繋いで横にいるフルールを見る。


 「うん。ヴァンが暑がりなんだよ。私は平気って事は、私の広域魔法は効いてるって事でしょう?」


 真っ直ぐ前を向いていたフルールは、そう言ってヴァン顔を向けてじっと見つめる。


 「あー...確かに。広範囲に効く防御魔法掛かってないと...これ以上暑いんか...しんどいなー。やっぱ、フルールいて助かったわ。流石わいより魔法得意で...シルフ様が神様のギフト持ちやて特別言われてたんも納得や」


 「...うん。でも、そのギフト持ちって三者(さんにん)だけの秘密って言われたでしょ?」


 「あ、ごめん」


 そんな話を近所を散歩してる様に和気藹々と堂々としているのは、サラマンダーに聞こえているとは思ってもいないからだ。けれど、サラマンダーだけではないが外部から侵入されれば直ぐに伝わってくる。それはもう、その地と一体となっていると言ってもよい。

 だから、いつもなら鼻歌を歌っているサラマンダーも黙って遠くからじっと二人を監視していた。


 「でや、フルール、歌こえるん?」


 森の中で二人は立ち止まり、フルールは目を瞑って耳を澄ましている様だったが聞こえてこないのか目をゆっくりと開けると小さく首を振った。


 「そか...なら、気配は?いつも感じるんやろ?なんかこー赤こーてでっかいなんか」


 「でっかいなんかじゃなくて、(ドラゴン)!!」


 先程まで小さめの声だったフルールは、ぷくっと頬を膨らませて急にムキになった様に大きな声を出して抗議した。


 「すまんて!...でも(ドラゴン)ってなんなん?」


 「え?シルフ様も(ドラゴン)じゃない」


 「え??人間の姿した、神様やろ?」


 「神様は神様だけど、人間の姿は仮というか...兎に角!(ドラゴン)はいるの!此処まで来れたのだって、その(ドラゴン)の気配を辿って来たからでしょ!」


 「まぁ...そやけど...」


 ヴァンが納得してなげに苦笑していると、上空からサラマンダーが二人の側へ降りてきた。神族(テオス)のギフト持ちのフルールに興味が湧き、自分を四大精霊(エレメンタル)以外で認識している事が何故か嬉しかったのだ。

 二人は急にサラマンダーが現れた事と巨大過ぎて、双子らしくユニゾンして腰を抜かして地面に尻餅を付き驚きのあまり大きく目を見開いている。

 大人びいた口調の二人でも、やはり見た目通り子供なのだと可愛いらしくも可笑しくてサラマンダーは久しぶりに声を上げて笑ってしまった。


 「......あ!あの歌の声と一緒!」


 唖然としてのだがサラマンダーの声を聞いてから暫くしてフルールは気づいて、嬉しそうな笑みを浮かべるとサラマンダーを指差してそう言った。

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