火の竜の追憶1
サラマンダーは真面目そのもので、最初にスクルドから貰った種をその土地で清らかで一番大きな岩山が聖地だと確信して麓に埋めた。そこにありったけの自信の魔法を注ぎ込むと、意識を失ってそのまま眠りについた。
それからどれだけの時間が経ったか、温もりを感じてふと目覚めると、いつになく活力が湧いてきて心地よく起き上がった。
すると目の前の大きな岩山が、煙を吐いている。何が起こったのかと山頂まで一気に飛んで覗き込むと、奥の方で真っ赤なマグマ溜まりがボコボコと煮えたぎっていた。
普通なら恐ろしいと思うのだがサラマンダーは火の属性なのだから火を好むし、マグマの中央には大輪の曼殊沙華が咲いている様に美しく見惚れた。
サラマンダーは種からは生物が生まれる予感がしていたのに火山になった事が不思議ではあったが、火山は自分にとって相性が最高に良くこれなら大河も近くに流れているしこれ以上必要はないかと思ったのだ。それに、萎れた芝生位の小さな草を元に戻したからといってまた、この暑さだ耐えれず萎れてしまうだろうとも。
生物がいればそれが生きていく為の草花は必要だが、生憎この国には生物らしきものは水の中で魚が泳いでいるぐらいだ。
サラマンダーは知識が貧困で、自分の性でしか物を捉えない所があり頭が堅かく必要最低限で良く無駄な事はしない方がいいと考えたのだ。
それからずっとポエニクスは、大火山と大河だけであったが流れ星が沢山流れた美しい夜に、その流れた星の一つが迷い込んで火山の中へと落ちた。
流石のサラマンダーも驚きを隠せずに火山の山頂へ咄嗟に飛んで行き、心配そうに中を覗き込んだ。見れば噴火しそうな雰囲気はなく、ホッと胸を撫で下ろす。
ただ違っているのは、真っ赤に轟々と煮えたぎっていたはずのマグマが光っている。
遠く離れた場所からだと光っている事しか分からず、気になったサラマンダーは奥底のマグマ溜まりへと飛び降りた。
そこには三羽の全身を焔に包まれた大鷲が、キラキラと光っていたのだ。
その鷲はサラマンダー来ると目覚めたかの様に一気に上へ飛び立っていき、サラマンダーは興味を惹かれて一緒についていった。
それは必要最低限で良い一者でも良いと思ってたはずが、心の何処かでは寂しい気持ちがあったのだ。
四大精霊は個々の意思はあるが四柱が揃って一つの神として力が発揮できているのだから、離れていても意識はどこかで繋がっていて求めていたのだ。
それに生まれた時から此処へ来るまでは殆ど一緒に過ごしてきたのだ、当たり前に感じてよい感情である。
それがサラマンダーは鈍感で、役目を果たす為に来たのだから寂しいと思ってはいけないのだと頑なに否定していたところがあった為に、いましがたやっと本心に気づけたのだった。
代わりという訳ではないが、その焔に包まれた大鷲が仲間の様に感じずにはいられなかった。
大鷲と言っても竜よりは断然小さく潰してしまいそうで一緒に飛んでいくという訳にはいかず、サラマンダーは一者山頂に留まり眺めていた。それだけでも、側に動き生命を感じられると寂しい気持ちも和らいだ。
ただ此処には大火山と大河しかなく、止まり木など皆無で可哀想に映った。空を飛ぶのは気持ちがいいのは理解しているが、ずっと飛び続けていると器自体が疲れが溜まり休む必要があるのも此処へ来た当初、四柱でいた時に心踊りこの世界を皆で飛び回ったから知っていた。
だからこそあの鷲が休める場所をと、もっと自然が必要と考えた。けれど属性は火であるから自然を増やすにも、増やす手立てがなかった。
途方に暮れていた矢先、天気雨が急に盛大に降り出した。それは不思議な雨でキラキラと輝いて大地を潤わせ、萎れた様な草が生き生きとグングン成長し、中には大きな木が伸びて緑が生い茂り、見たこともないオレンジ色の百合の様な花が沢山咲いたのだ。
恵の雨だとサラマンダーは自分も神であるのにも関わらず、スクルドがもたらした奇跡ではないかと初めて天を仰いで感謝した。




