風の竜の追憶2
四大精霊はあれ以来、その場所に居座ってスルトと一緒にずっと星を眺める様になった。
その星ピリアは、またの名を神の揺り籠と呼ばれ数多ある星々の中で、スクルドが特別な星だと大切にしている、唯一の星でもあった。
スクルドとは、未来を司り唯一創造が許された神。世界を管理する五芒星の一者で、その中でも光の王で太陽と日を司り活性させ育む神ベレヌスと、闇の王で月と夜を司り静寂と安らぎで眠りを誘う神イツトリに慕われ、ロキとは真逆の存在故に厭われ、ウロボロスである、カロとスピカ、此処ではスルトとシンモラであるが、スクルドが初めて産んだ子で、母にあたる。
神族が世界樹から産み落とされるのに対し、ウロボロスは異質であり特別であった。
スルトは誕生してすぐ目を覚ましたが、シンモラは眠ったままだった為、シンモラを守る為の寝床として用意されたのがピリアであった。
当然、スルトはずっと妹を見守り続けたが、四大精霊は違った。
ウロボロスとしての聖獣は白龍であった為、ピリアは元々、その眷属の竜達が棲まう星として誕生した。それは無論、シンモラを守る為である。
ただ、星に根を張る神として生きる竜 達は、とても力強く自由に空を飛び回り気ままで美しく、四大精霊には映ったのであった。
だから、次第にそちらに目が奪われていったのも必然的であった。決して四大精霊が不自由という事はないのだが、自分には出来ない事だからこそ、それが羨ましく映ったのかもしれない。
特にシルフは、空を自由気ままに飛んでいる時の竜が好きで、同じ様に飛んでみたいと密かに願う様になった。
すると、今まで姿を現したことがなかったスクルドが、姿を現したのである。
「貴方達、そんなにぴったり張り付いてピリアを見ていたら、起きたくても逆に起きられなくなるわよ?」
それに反応したのはスルトで、ばっと急いで星から離れると戸惑った様に星とスクルドを交互にちらちら見ている。
その姿は、シルフ以外の四大精霊が子供の姿から青年に成長したのにも関わらず、スルトは今までと変わらず子供の姿で、幼さが際立って可愛らしく感じるのかもしれない。
そんなスルトをスクルドは口元を隠しながら可笑しそうに小さくクスクス笑い、優しい視線で見つめている。
「...冗談よ、スルト...ただ...」
スクルドはスルトの背後に歩み寄ると、すっと人差し指で星を指す。
「此処には岩山と大河しかないから...もっと豊かにした方が...いいかもしれないわね」
スクルドはスルトに返事したはずなのに、言い終えると四大精霊をそっと見つめる。
「...なら...どうしたらいい?」
スルトは振り返ると、スクルドに縋る様な目で見上げる。視線をスルトに戻したスクルドは、優しく微笑んでスルトの頭を落ち着かせる為に優しく撫でる。
「地に根付く神を新たに増やせばいいのよ... そうね...四大精霊は大地を豊かにする神...いずれは此処を離れなければいけないのだから...気に入った星に根付く方が...私はいいと思うのだけれど」
スクルドは笑顔を絶やさないまま、寧ろそれ以上に優しさが滲み出ている様な笑みを四大精霊へと向けた。
四大精霊は自分達が特別なスルト以上に気に掛けてもらっているという嬉しさとは反面、此処から離れないといけない怖さも感じていた。
「...貴方達が、とても竜を気に入っているのは、知っているわ...地の神と契約する事になるけれど、それは竜なのよ...憧れていた... 竜に貴方達自身がなれるの」
そう聞いた瞬間、戸惑いを隠せなかった四大精霊の内、シルフが真っ先に目を輝かせた。
「本当に?ほんと?」
スクルドへ駆け寄ったシルフは、目をキラキラさせて両手を握りしめながらスクルドを見上げる。
「ええ、本当よ。竜になって、今度は貴方達があの世界を守るの」
シルフの後から近寄ってきた三者もまたスクルドのその言葉を聞いた瞬間目が輝き、そしてその時四大精霊に使命感が宿り決心したのか、幼い雰囲気を纏っていた四大精霊も外見は変わらないものの急に凛々しく感じられた。




