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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
真実への始まりの戦い
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真実の隙間8

 アテネが黒いモヤに呑み込まれハイリゲと共に消えてしまったのは此処へ来てからそんな時間も経たないうちで、ヴァンが目の前の狼と対峙して間も無くであった。

 目の前の狼の出方を警戒して銃を構えたままヴァンは、様子を伺いその場から動かずにいた。それは狼の方も同じであった。

 だから急にアテネがいなくなったのも気づくのが遅くなり、なす術もなく、驚きもあってか隙ができてしまった。そこを突かれて、ヴァンは狼から瞬時に人型になった男、フードが落ちて黒い耳が生えた青年に背後から羽交締めにされてしまう。


 「...久しぶりだね...ヴァン」


 そう耳元で囁く青年の顔を横目で見たヴァンは、悲しそうに眉を寄せる。


 「アイゼン兄さん...」


 「会いたかったよ、ヴァン...あぁ...健気だね...ヴァン...小さい頃から僕を兄だと慕って...ずっと僕に懐いてついて回って...此処まで来たのかい...あぁ...なんて一途なんだ、ヴァン...フルールと違って...君はなんていい子なんだ」


 甘ったるい声で耳元で優しく巧みに言葉を選んで囁いてくれば、ヴァンも頭では分かっているのに抵抗できずなすがままだ。


 「おやおや...ヴァン...眠ってしまっては困るんだ...僕は、強い君が好きだ...弱い君じゃ...つまらない」


 アイゼンはヴァンの首の後ろで手をクロスしてギリギリと締め上げ、ヴァンは苦しさに口を開いて小さく呻き声を上げる。


 「...そんなんじゃ...下でまごましてる子も一緒に殺しちゃうよ?ん?いいの?...ねぇ!!」


 いくら締め上げても抵抗しないヴァンに痺れを切らして、アイゼンはヴァンの首筋に噛み付きすーっと首筋に血が流れる。ヴァンは目が覚めた様に目をカッと見開くと激痛を奥歯をグッと噛んで我慢して身を前屈みにし、手早く手に持っていた銃をアイゼンの両足に押し付けるとそのまま発砲する。

 流石のアイゼンも足を撃ち抜かれては黒い血を垂れ流し跪いて、ガクッと糸の切れた人形の様に両手はぶらんと力が抜けた状態で首を垂れて動かなくなる。

 ヴァンはくるっとアイゼンに向き直ってから少し距離を置くために飛び退いて、銃を構えた状態で軽く頭を振り正気を戻した。暑くて仕方ないはずなのに、冷や汗がダラダラと流れる。

 首の痛みが酷くて銃を一丁戻してから流れる血を片手で抑えながらグッと眉を寄せ、ドクドクと早鐘の様な心臓を呼吸を小さくしながら整えてアイゼンを見つめているがぴくりとも動かない。ヴァンは視線をアイゼンから一時も離さないまま、慎重に回復魔法を唱えて首の傷を治す。

 そんなに血を流していないのに毒でも盛られたかの様にくらりと目の前が少し歪んで見えて、奥歯をグッと噛んで堪えながら不自然なアイゼンの様子を伺う為に一歩、一歩近づいていく。真正面まで来ても動く様子のないアイゼンを覗き込もうとした瞬間、アイゼンの目がギラリと怪しく輝いた。

 その目と合ってしまったヴァンは全身に毒が回った様にくらっと目眩と痺れが走って力が抜けてしまう。それに乗じて、アイゼンはヴァンの首をグッと掴んだまま一気に焔に包まれた鷲まで飛んでいく。

 蒼白な顔のヴァンの首を締め付けたまま、アイゼンは焔に包まれた鷲の首をガッと掴む。炎がアイゼンの手から全身へと燃え移ろうとし、アイゼンの黒い血は無理をしたせいかドバドバ流れて焔に包まれた鷲の足元を染めていく。

 アイゼンの身体が燃え上がると同時に焔に包まれた鷲も徐々に黒く染まり、全身が黒く染まりきると黒い岩石の様になって砕け散った。


 「ヒャハハハハハハハハ!!!」


 奇怪な声で高らかに笑ったアイゼンから、もわっと黒いモヤが立ち込めて包み込むとヴァンも一緒に呑み込んでいった。

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