真実の隙間6
「...おのれ!!」
アテネが男の挑発に飛び掛かろうとするのを、ヴァンが片腕を前に出しその身で抑え込む。
「...アテネさん...挑発に乗ったらあかん。アイツがあのまま杭を引っこ抜ける様にも思えんやろ...できるんやったら直ぐに引っこ抜いてるやろし...裏がある...冷静に対処せーへんと」
アテネはヴァンを力で振り解こうとするが、ボソボソとそう囁かれて冷静さを取り戻して小さく頷く。
「...なら...どうする?」
「せやな......でもなんでや...アイツら杭の近くにいるのに直ぐに抜かず、こっち待ってるんや...クロちゃんはなんか知ってるん?」
ヴァンは敵を警戒して見据えたまま、最後尾のカロの肩に止まる黑へと問い掛ける。
「...私が先立って話さないなら、話せないと思ってくれていい」
「そか...ま、何にしてもや...わいは、決着付けなあかん人がおるんよ...こればっかりは譲れん...まぁ、アテネさんもやろ?後は...なぁ、カロ!」
急に大声でヴァンはカロを呼び、カロは少し驚いた様に背のヴァンを見つめる。
「そうことやから、残りはカロ、頼むで!...けど、無理だけはすんなや...クロちゃん頼むで」
黑の名を読んだヴァンの声は小さく届かない様にも思えたが、黑には届いていて黑は何も言わなかったがしかとその言葉を心の中で噛み締めた。
「ほな、お先... 飛行!!」
ヴァンは両足に魔法を掛けて一気に大きい方の狼へと飛びながら両手で銃を抜きさると、狼の目の前に舞い降りる。
それに続いてアテネも大剣を抜きさると、手の甲が青白く光り魔方陣が強く光り出す。アテネは軽快な動きで地を蹴り竜の身体をも難なく蹴り登りきり、男の前に立てば大剣の柄を両手でグッと握り締め真っ直ぐに構える。
「...さーさー俺の首はここだーぁ!来い!アテネーェ!!」
男は首を指差して挑発し続け、アテネはふっと小さく息を吐き出す冷静さを保つ。
「水竜炎!!」
アテネの大剣が一気に水の渦に覆われ、刃先は青白い炎の様に燃え盛る。それと同時にアテネは足元に力を入れ、男目掛けて飛び出した。
男もただ構えているだけでなくニヤっと口角を釣り上げると、弦をアテネに向けて投げつける。
アテネの大剣と弦が絡み合って、アテネの動きが止まる。そこをアテネは力でねじ伏せて男に斬り掛かるが腕は鋼鉄の様に固く斬り抜けない。
「オイオーイ!そんなもんか、そんなもんかーぁ!!」
男は亀の様にグッと首を伸ばして、小馬鹿にした様にアテネの顔の前で歯を剥き出しにカチカチカチっと歯を鳴らす。アテネはピクッと眉を上に跳ねるがグッと眉を寄せ堪えると、男に向かって思い切り頭突きする。
流石の男も石頭のアテネの頭突きでよろけそうになったが弦を引っ張って止まる。だが、その隙を付いてアテネは大剣を振り上げる。
「開波!!」
アテネが大きく大剣を振り下ろすと、大剣の青白い炎は竜の様に大口を開いて男を呑み込む勢いで襲い掛かる。男は焔に包まれた鷲を離せばいいものを強く握り締めたまま、そのまま魔法を真正面から受け止めた。男は弦ごと大きく斬られ、黒い血が噴き上げて血飛沫は間近にいたアテネと焔に包まれた鷲にも派手に飛び散った。
「うぉおおおおおおお!!!」
男は全身の力を振り絞って雄叫びを上げると大量の黒い血を吐き出す。それでも通感覚がないみたいに余裕な顔をし、ニヤっと不気味に笑って手早く焔に包まれた鷲の首を両手で握り力を込める。
男が力を込めるたびに男から黒いモヤがブワッと身体から出て、男から黒い血が大量にボタボタボタと焔に包まれた鷲に注がれていく。
焔に包まれた鷲は段々と侵食されていく様に黒く黒く染まっていき、全身が黒く染まりきると黒い岩石の様になって砕け散った。
すると男から出ていた黒いモヤ更に黒くなって生き物の様にブワッと放出すると大波の様にアテネに襲い掛かり男と一緒にアテネも呑み込んだ。




