真実の隙間4
「...ニフリートの方は、終わったようね...なら...私達の方も...早く終わらせましょ...クーア...足手纏いにならないようにね」
アルテミスの手の甲が青白く光ると花の模様が描かれた青白く光るロングボウが出現して手に中に収まると、空を見上げてポツリとポツリと呟いてクーア視線を落とすと、ふっと微笑む。
「もちろん、そうにはならないさ。必ず、僕が君を守るよ...必ず」
クーアは手の中の槍の柄をグッと握り締め、アルテミスの視線に合わせ静かだが力強くそう返事を返す。
「...じゃ、そろそろ行こう」
二者は暫くじっとお互いの瞳を愛おしそうに見つめ合った後、アルテミスのその言葉を合図に敵を見据えて一気に駆け出す。
森を軽快に飛び跳ねる様に抜けていき、ルフタと間合いを取って武器を構える。
「...流石に狼獣人の荒型モード...光水の鎖で拘束すれば少しは弱るかと思ったけど...鎖を今にも引きちぎりそうな勢いね...控えもそろそろスタミナ切れだろうから、一気に攻めるわよ」
「了解」
二者の手の甲の魔方陣が強く青白く光り出し、アルテミスの弓には水竜が巻き付いた様な青白く光る矢が出現する。
「陽散雨!!」
アルテミスの弓がしなり放たれた光の矢は、青白い光を散らしながら渦を巻いて真っ直ぐに飛んでいく。それはとても美しい一光線を引きルフタの少し手前で花開く様に弾ける。それと同時か、ルフタを抑えていた光の鎖はボロボロと砕けてしまう。
そこから矢は幾重にも分離し、激しい雨の様に降り注ぐとルフタの全身へ突き刺さる。ルフタは矢が刺さった状態で苦しんだ様に雄叫びを上げ更に黒々したモヤを纏うと、四つ足で暴走した闘牛の如く二者へと一直線に地面を抉りながら激しく突進してくる。
「波動!」
クーアは直様アルテミスを庇う様に前に飛び出すと身を低くし、槍に巻き付いた水で斜め下から上へと振り上げ大波を繰り出す。ルフタはその波動を受け失速するが前へと突き進む。
「連撃波!!」
槍の柄の穂先近く右手で持ち左手で柄の後方を持ち直すと足を開き腰を落とし前屈みの構える。穂に水竜の如く水が巻き付くと同時、地面を大きく蹴り前進する。
前方にはルフタが大きな口から鋭い牙を、前足からは鋭い爪を剥き出しに飛び襲い掛かり、クーアは槍をルフタの口目掛けて前に思い切り突き出してから手放す。
穂をすんでのところ牙で抑えたルフタの両爪がクーアをクロスで襲い掛かるのを地面を軽快にひらりと蹴り上げ宙返りして回避し、クーアはフルタの背に乗り掛かり槍の柄を力強くグッと掴む。
「開波!!」
穂先に巻き付いた水が鋭い刃に変化して噴射するとルフタの口の中で連射攻撃する。
流石のルフタも口から大量の黒い血をドバッと吐き出し左肘を地面に付くと体勢が崩れ、クーアは咄嗟に槍を抜き去りながらルフタを蹴って飛び退く。
グウァァアアアアアアアアア!!!
顔を上げたルフタは地響きが起こる程の悲痛な大きな雄叫びを上げれば、目からは真っ赤な血が涙の様に流れる。
ダァンッ!!!
ルフタは両手腕を折れんばかりに地面に叩き付け、ブルブルブルっと全身を身震いしてからグッと牙を喰いしばり、立ち上がる。
鋭い爪が食い込むのも厭わずに両手を強く握り締め背を丸めてグッと身体全体に力を入れれば、黒々しいモヤが更に黒くルフタに纏わり付いて全身を覆った。そこからは弾丸の如く、恐ろしいスピードで最初に目に留まったアルテミスへと突進していく。
「陽散雨!!」
二発目を貯めていたアルテミスは、一気に光の矢を解き放つ。
だが、今のルフタには全く効果はなく、黒いモヤに掻き消されてしまう。
アルテミスは突撃してくるルフタを弓を地面に突き刺し地面を蹴って弓の先に掴まって半回転しそこから体制を捻って回避する。ただ無理やり咄嗟に回避した為に体制が崩れ、そのままの勢いで地面へ叩きつけられ地面の上を勢いよく滑って止り、片腕を負傷してしまった。
ルフタは弓を腕を薙ぎ払って破壊し、踵を返すと狂った猛牛の様にアルテミスに突進していく。
アルテミスは腕を庇ってなかなか起き上がれず、攻撃を受けそうになる寸前、槍を構えたクーアの捨て身のタックルでルフタはクーア共々真横に吹っ飛ぶ。
クーア自身と槍に強化を掛け、飛行で飛び掛かってルフタを吹っ飛ばせたが、鋼に突撃して行く様なものでクーア自身もむちうち状態。共にすっ飛んだ状態で激痛が走る中、それでも手にして槍をグッと掴む。
「強化!!」
穂先にありったけの魔力を注ぎ、残りの力で前へ突き出しルフタが地面に激突した瞬間、その反動を利用して槍を更に深く突き刺し斬り上げようとしたが穂と柄の部分が折れ、クーアは背中を地面に叩き付けてしまう。
次の攻撃に備えようとするが背中、全身が痛み動けず、一瞬死を覚悟するが一向にそれは訪れない。
歯を食いしばり折れた槍の柄を支えに上半身をブルブル小刻みに震えさせながら起こしてルフタを見れば、そこには穂先が心臓に刺さり絶命したルフタの姿があった。
ほっとしたら力が抜けたクーアは仰向けに倒れそうになるが、必死に駆け付けたアルテミスが後ろから抱き締めて支える。
「はぁ、はぁ...クーア...大丈夫?」
気丈に振る舞っていたアルテミスは目に涙を溜めながら、クーアの顔を愛おしそうに撫でる。
「...なんとか...ギリギリ...かな...でも良かった...恋人を守れて...」
ぐったりと身体をアルテミスに預け、クーアは痛みで苦しそうにしながらもアルテミスを見れば、自然と薄らとだが笑みを浮かべる。
「ありがとう...クーア...怪我も...酷いし...一旦、ウンディーネ様の所へ戻りましょう」
「...うん...あっ...」
クーアは丁度ルフタが目に入り、小さく声を上げる。一瞬にして黒い塊と化したルフタは、戦いの終わりを告げるそよ風に吹かれ、サラサラと舞い散る。そして、陽の光に照らされキラキラと輝いて跡形もなく消えていった。
その光景を二者は静かに見つめ、やるせない気持ちと悲しみが込み上げた。
「......あのさぁ...アルテミス...この戦いで...生き残れたら...結婚してくれないかな」
唐突であったが、今、言わないといけない気がしてクーアはアルテミスの瞳を真っ直ぐ見つめ、真剣な面持ちで言葉にする。
アルテミスはクーアを見つめて嬉しそうに涙を流し、うんと頷いた。




