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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
廻り始めた運命
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運命の出会い1

 最近のカロのルーティンと言えば、アテネに午前中は、筋トレと初めの方は木刀の素振りと打ち合い稽古だったが、今は弓の練習になり、午後は魔法の練習。

 魔法は、空間魔法(ストレージ)とライターの火くらいを出すのが精一杯。しかし、地球ではありえないこそ、楽しいカロ。

 身体がきつくても、やる気が出て夢中になっていた。

 今日も午後は、魔法の練習をすると思って、浮き足立ていたカロ。だが、魔法適性が低いカロに、これ以上練習しなくてもいいとなる。

 楽みを取り上げられた子供のような哀しい気持ちで、自分の部屋に戻ろうと背を丸めてとぼとぼと歩き始めた所、練習を見に来ていたのか、修練場の出入口付近に佇むアテネに呼び止められた。


 「何をそんな哀しそうな顔をしている?何かあったのか?」


 「あ、いやーそんなことないですよ」


 「そうか。まぁいい、魔法の練習が無くなったと聞いた。気分転換に、その辺を散歩でもするといい」


 珍しく優しいアテネ。

 同意する様に頷くカロに、アテネは空間魔法(ストレージ)から取り出した弓と矢と地図を手渡す。


 「地図の場所なら危険な生物はいない。小動物だけだから、十分狩れるはずだ。練習の成果、期待しているぞ」


 言い終えると、颯爽とどこかへ行ってしまうアテネ。

 断ることもできず、仕方なく弓矢の入った筒と弓を空間魔法(ストレージ)に入れ、散歩がてらと言い聞かせ、狩りへと出かけていった。


 額に浮かんだ玉のような汗、息も上がっている。

 汗だくだが、アテネから鍛錬の時に渡されたエルフが着ている狩人ような服が、吸汗速乾仕様らしく役に立っているが、散歩とは到底かけ離れた山登りに近い状況下。

 汗を袖で拭い、地図を拡げながら赤くマーキングされた場所と周辺を見比べる。丘だと勘違いした山を超えると平坦な場所に出るようだが、道はあるが獣道のような砂利道で、一帯は森と点々とある小さな水場しかない。

 辺りを探るようにキョロキョロしていると、少し離れた場所に一匹の兎のような動物を見つける。

 斜面でバランスとりながら弓と筒を出そうともたついていると、兎は逃げてしまい、カロは尻餅をついてしまった。

 立ち上り尻についた泥を払うと、決心して踵を返す。


 「だめだよ」


 頭上で今日はやけに無言で、存在感なしの黑が急に喋りだす。


 「黑は、乗ってるだけでいいけどさー」


 「アテネとの約束は、守らないと」


 不貞腐れるもアテネの言葉が脳裏に蘇り、小さく身震いして、落とした弓と筒を拾い上げて肩にかけると元に戻る。

 いけどもいけども斜面が続き諦めかけた時、やっと視界が開け、平野にたどり着く。

 近場に大きな老木がある大きめな泉がある。喉も渇いていたので水辺に足早に近づく。

 黑は何か察したのか、頭から離れて後ろの方に飛んでいく。

 構わず、しゃがんで水を両手で掬い上げ、何度か飲んだ後、髪が濡れるくらい水で顔を洗い、犬のように頭を振ると、疲れてどかっと腰を下ろす。やっと落ち着き、安堵か大きなあくびが漏れる。

 休憩しようと寝転ぼうとして、視界の端に人影を見つけると驚きで振り返る。

 斜め後ろの老木に背を預けて、眠ている少女と側には黑。

 こんな山奥なので死んでるかと慌てて、凝視するも胸が上下している。

 安心していると、黑視線を感じる。

 凝視したのが意図せず胸の辺りで、非難されているような気がして、上方へ視線を移すが少女が気になって、視線を落とす。

 ウンディーネを少女にしたらこんな感じかというように似ており、着ている服も似ている。

 ウンディーネがお淑やかで彫刻のような美人とすれば、幼いからか同じ美人だが可愛らしい印象。

 少し冷たい風が、吹き抜ける。陽が陰り始めて、水辺だからか。

 少女がこのままでは風邪を引かないか心配になり、起こそうと近づく。肩を軽く叩こうと手を伸ばすと、目覚めた少女と目が合う。

 ウンディーネと同じラスピラズリ色の瞳は宝石のように輝いて見え、引き込まれてしまう。

 暫し、お互い沈黙しながら見つめ合っているが、カロの方が恥ずかしくなり、距離とるように離れた。

 頬が熱く、胸の鼓動はやけにうるさく感じるカロであった。

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