真実の隙間3
フォルケでは今まさに、戦いが繰り広げられようとしていた。先手を打ったのはデニスで、相手の船へと全速力で走りその勢いで高く飛び移り、ニヤついて腕を組んだままのテナークスに飛び掛かる。デニスの両拳は強化をデニスと後ろで控えるバクサが二重に掛かけ、煌々と萌葱色に輝く。
テナークスのがら空きの顔面に右ストレートを力の限り叩き込み綺麗にクリーンヒットさせた。
だが、テナークスはびくともせずゆっくりと一度瞬きをしただけで、纏わり付いていた黒いモヤが濃くなるだけであった。
「転移魔法!!」
バクサが高らかに呪文を唱えて、デニスの真下に魔方陣が現れ萌葱色の光が包み込み一瞬にして消える。バクサは、デニスの真横に戻される。
「はぁ〜、はぁ〜...いっやぁ〜...ヴァンが倒れるのも無理ないねぇ〜。やはりこの国は...四大元素の水が強いから...自国と違って...マナの消費量が、エグい!」
バクサは両手で杖代わりにステッキを持って支えるとその上に額を乗せて肩で息をしながら、デニスを心配そうに見ている。
「...すまん...過信しすぎやった...」
少し顔を俯かせ、ちらりとバクサを見ると苦々しそうにデニスは言う。
「予想外...な事もあるって事で......はぁ〜...なんやぁ〜アホくさーっですよ。なんでしょね。もう...バケモンか...」
「あははははははっ!!」
テナークスは高らかに大声で笑い出し、ニヤニヤと余裕の笑みを向けてくる。
「そちらが強化して、こちらが強化しない道理無し!!残念だったなぁ〜!わしは、表面ではなくて、骨を強化したんだわ!!やぁー同胞を取り込むんは難儀で悲しかったがなぁ!!」
スピーカーの如く馬鹿でかい声で自慢気に喋るテナークスの声は、フォルケの船員全員に響き渡り、その心無い言葉に脱力して膝を付く者、涙する者もいた。その中で歯を食いしばり、バクサとデニスは気丈に立ち続けている。
「ん〜...出来るだけ手出し無用って言われたから...暫く黙って見てようと思ったけど..あれよね?貴方達...雰囲気呑まれしてるし...やっぱり親族での戦いはキッツイんでしょ?まぁ...予想外に強かったのもあるとは思うけど...でもねぇ...悪いけど、こんな雑魚相手に足留め喰らう訳には行かないの。いや〜な予感するから、私は早くポエニクスへ行きたいのよねぇ〜」
じっとバクサの少し後ろで待機していたニフリートは、すっとバクサの隣に静かに並ぶ。口調は柔らかいのに、いつもの穏やかそうな笑みは全くのなく無表情。話終えればニフリートの手は青白く光り、その手には水竜が巻き付いている日本刀に似た大太刀が握られていた。
「悪く思わないでね」
ニフリートはそう呟いて、軽いステップでデニスよりも早く駆け出し向こう側へと軽い身のこなしで飛び乗るとそこから更にスピードを上げ、テナークスとの間合いを詰める。
それにはテナークスも予測が付かなかったのか、ビクッと小さく肩を震わす。ニフリートにとっては、それくらいの隙で充分であった。
「斬波!!」
ニフリートの手の甲に魔方陣が強く浮き上がり、斜め下から上へ刀を斬り上げると三日月の様な形の波の斬撃がテナークスを襲う。
全身でその強烈な斬撃魔法を身体をガクガク振るわせながらも受け止めた後、テナークスはニヤりと余裕の笑みを浮かべたのだが、愚か、ガクッと力が抜けた様に膝を付いた後に口から大量の黒い血を床に吐き出す。
「幾ら骨を丈夫にしたところで、内臓は強化できないんじゃ意味ないでしょ。だ・か・ら、過信しすぎ」
それでもテナークスは片手で乱暴に口元を一気に拭い去るとにぃーっと不気味に笑って顔を上げる。
その瞬間、冷たく鋭いニフリートの視線と共に大太刀が上から下へと瞬く間に下ろされ閃光が走り、テナークスの首が綺麗に斜めに斬れて、床へと転ぶ。あっという間の出来事。ただ、床に転ぶテナークスの顔は穏やかそのもので目を瞑っていた。
そのテナークスの姿はニフリートの背で見えず、ブワッと黒々しいモヤに全身を包まれたと思えばすっーと現れた小さな穴にモヤ事吸い込まれ一瞬にして消え去った。




