開戦2
暗闇にポツンと金色のキングチェアがあり、そこだけ不気味にぽおっと淡く怪しく光っている。その椅子に座るのは、繊細そうなとても端正な顔立ちだが少し幼さの残る見掛けは王子様風の青年。ライムグリーン色のサラサラのマッシュルームカットが幼さを際立てている様でもある。
「これで配置は済んだって、感じかなぁ〜、ねぇ〜シルフ...って言っても聞いてないかぁー...ふっ」
シルフの真横に立って座椅子に手を置いていたロキは耳元で囁くが、シルフは両手を力が抜けた様にだらんと膝の上に置いて虚な目で俯いているだけで反応がない。
「さ、ショーターイム!」
ロキは全く気にした様子もなくそう言い、パチンと指を鳴らせば空に映像がパッと映画みたいに映った。キングチェアの肘掛けに浅く腰掛け、そこに映った映像をじっと見つめる。
「僕を楽しませてよー、黑」
ロキはそこに映る黑を見つめて、ニヤッと不気味に笑った。
. . . . .
「じゃれあいも、ここまで...彼方さんが来たわ...戦闘員、配置につけ!!」
アルテミスの耳がぴくっと反応してバッと空を見上げれば、空は硝子の様な亀裂が入っている。穏やかに話していたのが急に切り替わり、左手を空に掲げ森に轟く様な勢いで大きく叫んだ。
そこにいたエルフは一斉に呪文を唱え始め、弓を亀裂目掛けて構える。
バリ バリバリバリバリ パーン
無理やり抉る様に突き破る音、突き破る度にキーンと耳を覆いたくなる様な耳障りの音共にその衝撃が波動となって広がり、身体をビリビリと振るわす。そして結界は破れ、真っ黒て禍々しい大きな幽霊船の様な飛行船が現れた。
「構え。よーい、打て!!!」
アルテミスは腕を上に振り上げ、そう言って真っ黒な飛行船に定めて振り下ろせば、エルフ達は一斉に飛行船に集中して青白く輝く魔法の矢を打ち込む。飛行船を全て覆い尽くす程の量の光る矢は凄まじい勢いで飛行船へと襲い掛かる。降り注ぐ様は、まさに光の豪雨。次から次へと降り注ぎ、飛行船は光の矢で見えなくなる。
一定量を浴びせた後、アルテミスがスッと左手を下げ、光の矢はピタっと止まる。
この凄まじい攻撃を受ければ、飛行船はひとたまりもないとカロは思ったが、驚愕する。びくともせず、宙に浮いているのだ。
ただ、それは想定内なのかアルテミスの顔色は変わらない。ただ、緊張した面持ちで監視している様にじっと飛行船を睨みつけている。
「カロ、今のうちに武器を取り出して。さっきの攻撃で甲板のいた敵は殲滅できただろうけど、中にいた奴らは無傷だろうからそろそろ降りて来る...そうなったら、此処へ来た以上は自分の身は自分で守るしかない...いいね」
唖然として空を見上げているカロに対して、クーアがカロの肩に手を置いてそう早口に囁いた。クーアのもう片方の手にはいつの間にか、青白い竜の様な美しい模様が入った大きな鋭い槍が握られている。
カロは真剣な顔付きのクーアに視線を向けて、小さく頷く。クーアはそれを確認するとカロから少し離れて槍を両手で持って構え、魔法を唱えれば槍は青白く光を放つ。
カロの方は空間魔法から、日本刀の様な刀を取り出す。
ミニエーラに居た時、弓は上達したものの魔力が劇的に向上した訳でもなく、エルフの様に矢を魔法で形成する事はできなかった。
狩り程度であれば、普通の弓矢でも十分ではあるが、フリークが怪しい動きをしている手前敵と遭遇するおそれもあり、それだと役に立たないとノームに言われ悩んでいた。そんな時クーアに誘われ、鍛冶屋に遊びにいた際に偶々カロは自分で見つけたのだ。
鍛冶場では大剣を造っている最中で、試しにそれを持たせてもらったが振るうことは難しかった。そこで細くしたらどうかと言われ、思いついたのが今の日本刀の様な刀だ。
それを持つとなぜかしっくり来る様なそんな気持ちがあって、それを試しに振るってみればストンと心の中に落ちるものがあり、柄の部分に組紐を巻き付けてから握れば手に馴染んでそれはもう自分がかつて持っていた物だと錯覚する程だった。
そこからは詳しくは過去は思い出せないものの、刀を斬る、振るって舞うが如し、手慣れてグンっと上達した。この刀であれば、イメージしやすいのか強化魔法も乗せやすく実践でもいけるとミニエーラで稽古を付けてくれていたクーアからもお墨付きをもらった程だ。
その刀の鞘を腰に紐で括り付け、柄をぎゅっと握り締めるとゆっくりと刃を抜いて両手で構える。その瞬間、ピリっと緊張が走りカロはいつになく真剣な面持ちになった。それ肩に乗ってずっと静かに黑は眺めていたが、ふっと空を見上げた。




