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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
真実への始まりの戦い
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開戦1

 アンは樹木葬で多くのエルフ達見送られ、アウラーと同じ場所へ埋められた。空賊にいつ攻め入るか分からない緊張状態だった為に参列したエルフ達は武装したままで、風神(アネモイ)も降りた者以外は飛行船で待機し、もちろん狼獣人(ルプス)も同様に待機している。

 ただ、何かを感じ取ったのか狼獣人(ルプス)は狼化して船の甲板で身を低く構えて遠く、空を見つめている。

 アンの葬儀もいつもと比べれば簡素ではあったが慎ましく全て執り行われ、墓の前にはカロ、黑、ニフリート、バクサ、クーアだけになった。クーアは目を瞑り、膝を付き青雪石を両手で握り締めてアンとアウラーが眠る場所に祈りを捧げていた。


 「...空気が変わったわね...そろそろかしら...何にせよ、戦いが始まる前にお婆婆は安らかに逝けて、葬儀も無事に終えてみんなお別れ言えたんだもの、よかったわ...さて、私達は何が何でも故郷を守るわよ、クーア、カロ、準備しなさい」


 ニフリートの長い耳がぴくっと敏感に何かを感じ反応し、言い終えると墓に背を向ける。

 カロは黙ってクーアに手を差し伸べ、クーアは手にしていた青雪石を懐に入れてからその手を取って立ち上がる。その顔は、涙の跡はなく勇敢な男の顔であった。


 エルフの殆どは住居が近い森の近くに配備され、ミニエーラで造られた魔宝具(アダート)の弓を手に空を伺っている。

 何故空だけ警戒しているかといえば、地上はそれぞれの国で強固な結界が張られ簡単には出入りできないからだ。

 その結界は精霊王が自ら張っているの為、攻め入るとしたら空の僅かな歪み狙うしかなく、過去攻め入られたのはその僅かな歪みからだった。

 それに、キュアノスに入るには手順を踏んでミニエーラかポエニクスのどちらかしか入国出来ない魔法が掛かっており、無理に入ろうとすれば別の場所にへ弾き飛ばされる様にこの世界そのものがしていた。


 カロとクーアは、イシュカ城に一旦向かった。祈りの間の前ではアテネを中心にエルフの中でも屈強な男達が腰に構えた魔宝具(アダート)の大剣の柄に手を置き、鶴翼の陣形でその場を守っていた。そこにいるエルフは、表にいるエルフが胸だけのブレストプレートに青白い魔法の掛かったマントを羽織っているのに対し、メタリックな青いプレートアーマーで目元だけは覆わない全身を包み込んでいて物々しい。

 ミニエーラで造られた特殊な魔宝具(アダート)で身に付けても然程重みを感じないが、全身を覆えばそれだけで重く可動域も少なくなり動きが鈍くなり、俊敏性が高いエルフにとっては邪魔で、守りに徹する為にといってもよい。

 ヴァンはまだ戦える程の回復はしておらず英気を養う為にデニスにおぶられ祈りの間で眠り身体を休め、ニフリートとバクサは飛行船へと向かい、カロとクーアはブレストプレートを身に付けてから森に待機しているエルフ達に合流した。

 クーアが真っ先に会いに行ったのはオフホワイトのフード付きナイトケープを羽織ったエルフの女性で、アテネ、ニフリートにどことなく似ているが美しいウエーブの掛かった艶やかで腰まである髪に背は高いがメリハリのある体形で足の長く妖艶な雰囲気を纏っていた。


 「アルテミス、知ってると思うけど、こちらカロと黑。カロは...初対面だよね」


 カロはそう言われてアルテミスの方をちらっと見るが、全く見覚えがなくクーアに視線を戻して小さく頷く。アルテミスはにこっと微笑んでよろしくと気さくに手を差し伸べてきたので、カロは手を軽く握り返す。


 「アルテミスは、アテネの妹で、ニフリートお姉さん。近衛隊上位四者の警備班小隊長で弓の名手で戦略家でもあるんだよ...気をつけてね」


 「あら、クーア?何に気をつけるのかしら?」


 カロの耳元でクーアはこそっと囁いた最後の言葉を、アルテミスにはしっかりと聞こえていたらしく穏やかな笑顔はそのままなのだが冷ややかな視線をクーアに向けている。その感じはアテネと似て、敵に回さない方がいいなと漠然とカロは思いながら手を離した。

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