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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
アンの追憶
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夢予眼とスルトと真実7

 アウラの結婚は、決して早い訳ではない。子供の頃から婚約者がいる者は大抵、成人の儀を終えて結婚する事が多い。ただ、子供が出来るのは稀で、そもそもエルフ自体が子供がそんなにできる体質ではない。

 だからこそ、エルフは肉体と精神が成熟したとして成人の儀を執り行い、結婚を許す。結婚後、一年位は子供ができないなんてざらだ。

 そもそも、恋人がいてもアウラが結婚をする様な話は全く出ていなく、本当に急な、話であった。普通の親であれば、怒鳴られて不思議はない。形式を重んじるのもまた、エルフである。

 アウラは至ってアンより真面目であったし、仲間の中ではリーダー的存在で軽率な事をする感じではない。

 なら、何故かと言えば、神託があったのだ。お婆婆にアンや周りの者には内緒で会いにきて欲しいと、お婆婆の身の回りの世話をしている呪い(まじない)の弟子がこっそり伝えて来たのだ。

 何事かと驚いてアウラはお婆婆の元へ訪れ、こう告げられた。


 ──これより5年か6年後かもしれないが、この世界に避けようもない禍いが訪れる。

 その頃にはもう、わしは寿命でいないんじゃ。次の担い手は、もちろん、アンじゃ。

 そして、アンの次に魔力の強いアウラ、お前がオルフェ家と協力して禍いからキュアノスとウンディーネ様を守るのじゃ。

 多分、オルフェ家の2強とお前はそこで命を絶たれる...わしは言っても意味がないかもしれんが...すまない。

 だが、お前が産んだ子とその子の父親はその禍いで命を落とす事は、ない。

 だから一日でも長く愛する者達一緒にいたいのであれば、早く子を成せ。


 そう告げられた時には、アウラは目の前が真っ暗になった。これからと言う時に、愛している者達と別れて、死ぬなんて信じがたかった。それでも神託は絶対で、兄と離れ離れで今でも会えずにいるのは、神託があったからこそ。

 こればかりは、自分の人生を憎まずにはいられなかった。

 ふと母、アンを思い出す。アンの事を思えば、自分勝手なのも分かるが、やはり割り切れない。いっそ、アンへ相談しようとも思ったが、でも何故、お婆婆はアンに黙って告げたのかだ。

 思考がぐるぐると回って気持ち悪くなり、その場に倒れ込む。一者(ひとり)になりたくて、家の近くの川の側に咲くルッカが群生している場所で、昔からアンと二者(ふたり)で時折一緒に来ていたお気に入りの場所だ。


 「アウラ!!」


 そう焦り叫んで駆け寄って来たのは、アパルだ。付き合い出してお気に入りの場所だと最初に教えたのが、アパルだった。

 ただ何故、アパルが駆け付けて来れたかといえば、お婆婆の家に行くとアウラはこっそりアパルだけには教えていたのだ。

 何となく感ではあるが心配で、お婆婆の家からずっと後を付けていた。お婆婆の家から出て来た時にはもう何か悩んでいる様子で、顔が兎に角暗い顔していた。

 まさか病気なのかと訳が分からず、半泣きしながらアウラをその手に抱き抱えると名前を何度も何度も読んで揺すった。


 「ア...アパル?」


 「アウラ!!う、うぅ...よかった、よかったよぉー」


 目が冷めて状況が飲み込めないアウラはきょとんとしたまま、アパルはほっとした様にぎゅっと抱き締め、子供の様に泣きじゃくった。


 そうしてアパルが落ち着いてから、アウラは神託の話を胸に突っかかっていたものを吐き出す様に、ゆっくりとだが話した。

 アパルはエルフの中でさほど冴えない顔だが、実直で優しい男だったから、即座に結婚を申し込んだ。

 けれど、成人の儀が終わるまでは結婚は許されていない。

 なら、お婆婆の言う通り、子供を成そうとなった。一日でも早く自分達の子供に会いたい、一緒に暮らしていたいと、お互いに話せば話す程に、強く強く思ったのだ。

 そして、二者(ふたり)の愛は大きく膨れ上がり、絆は深く深く結び付いていった。

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