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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
アンの追憶
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夢予眼とスルトと真実1

 一つの物語を語り終わって、アンは顔を俯かせると目を細め疲れた様に溜息を漏らす。


 「ばーちゃん...無理しなくても...少し休んで...話の続きは、今度にしよう」


 クーアはアンの身体を気遣ってと言うのもあるが、話を聞き終わったらアンとの別れが来るようで怖くてわざと先伸ばししようとそう言った。


 「...いいや...これから此処もどうなるか分からんのじゃ...今、じゃろ?...お前もいい加減、心の準備をしろ、いいか?」


 眉にぐっと皺を寄せて何処か納得いかない顔をクーアはしているが、心の底では分かっていて黙って頷く。子供をあやす様に優しく囁くアンの目は、穏やかで優しい。それを見て聞けば、そうせざるおえなかった。


 「はぁ...やれやれ。クーア、すまんが思った以上に疲れたわ。ここからは...悪いが...横になって話させてくれ」


 背中を支えていたクーアはアンを横たえる為に手を貸し寝かしつつ、自分の膝にアンの頭を乗せる。


 「...クーアの足は肉付きが悪くて骨張って...寝心地が悪いわい...ふっ...アウラーを思い出すな...懐かしい」


 アウラーの事を思い出したアンは、ほっこりと微笑む。その顔を見ていたクーアは、悲しいのにじんわりと胸が温かくなるのを感じて目頭が熱くてぐっと堪えるように目を瞑る。


 「さて...続きを話すか」


 過去に思いを馳せる様に、アンもゆっくりと目を閉じた。




 . . . . .


 アウラーが亡くなり、墓の前。葬儀はアンが髪飾りに使っているモチーフになった白い花を青空に盛大に撒き散らし、ライアーハープで美しくも故人を想う物悲しさもある曲を奏でられる中、大勢のエルフに看取られなが行われた。

 二者(ふたり)が出会ったあの丘の老木からアンの家に近い木へと接ぎ木し、その場所で樹木葬を行った為、今もこの木の下にアウラーは眠っている。

 この木はエルフが誕生すると同時に親がその子の為に植える木で、アンの木であるからそこにしたのと、いつでもアウラーに会える様な気がしてそうしたのだった。

 その木の下でアンはアウラーが眠る場所に、一人立って見つめていた。涙は溢れていないが、瞼は少し赤く腫れている。


 「アンさん!此処におったんやね。ちょっと相談があるんよ」


 背後からアウラーと来た青年が、相変わらず元気いっぱいに声を掛けてきた。アンは心ここに在らずで、その声で意識が戻り驚きでビクッと小さく肩を跳ねさせ、小さくドキドキする胸を片手を添えて抑えてからその青年の方へと振り向く。


 「...どうかした?」


 「...あ、うん...えーと...これ、まず読んでもらえへん?今は、最後の方だけでええから」


 青年が差し出した古びた日記帳を受け取るとアンはパラパラとページを捲って最後の方を読み始めた。

 その日記はアウラーのものだとすぐ分かって、嬉しさもあるが悲しくもあった。書いた当人は、もうこの世にはいないから。

 暫く読み耽って、あるページでアンは顔を歪ませる。


 「え、待って。男の子だったら...フリークへ連れて帰りたいって書いてあるんだけど...」


 青年は気まずそうな顔をして、小さく頷くとこめかみの所を指先でぽりぽり掻く。


 「...せやねん。おいも知らんかったん...ただ、むかーし、もしもや...自分に子供ができたら色んな世界を見せてやりたいとは...言っててん...そう、一緒に色んな国を見て回れたら最高やなって」


 アンはアウラーが昔、色んな国を自分と一緒に旅して行けたら楽しいだろうと何気なく話していたのを思い出す。

 だが、まだ言うても自分の子は幼子、お互いの為にも側に居させたい。もちろん、エルフの掟もある。この先、男子であれば自分と同じ族長になる可能性も高い。そういう思いがあって、アンは無闇に口にはできなかった。


 「...おいらの国、フリークでは、アウラーさんは英雄やってん。正直、故郷を離れるのは反対されたんや。フリークの民やからこそ、死ぬなら故郷の地に骨を埋めるべきやー言う人はぎょーさんおった...何せ、シルフ様の片腕でフリークの民のリーダーやってん。業績もぎょーさん...おいらが乗ってきた飛行機...魔力がちょっと弱ーても乗れるようにしたんや...アンさんに初めて会った日の飛行機は、あれ初飛行で...でもって、アウラーさんしか乗れんかった...人間の中でアウラーさんは一番の魔法の使い手やってん。やから期待されてたし、それに応えてもくれた。何よりあの性格やから、みんなに好かれてん。狼獣人(ルプス)と交渉して、交流できるようになって互いに隣人として助け合う関係を気付き上げて、あの飛行機もや、そういうのがあって技術が向上してん...もちろん、おいがこうやって生きてられんも狼獣人(ルプス)と妹さんが結婚したからやし...ああ...話がなごーなった。纏めるとや、アウラーさんは居てもらわんと困る人やってん。それでも、アンさんとこに行きたいって...泣かれてな...もう、止められへんやろ?...だから...なんて...つごーよい言われるんも分かってんねん。でも、アウラーさんの忘れ形見の子がおいらには必要やねん...希望...みたいなな......もちろん...早急にとは言わん...けど、おいは人間よりも長く生きられるが...ただの人間はそうできん...申し訳ないとは思う...思うが...できるだけ返事は、早めに貰いたい思う...すんません...」


 アンは、ただただ黙って聞いていた。青年の想い、フリークの想いは想像できたし、道理としては理解できる。だからと言って、はいそうですかと同意も出来ない。

 感情が、ぐちゃぐちゃであるのは確か。最愛の人とやっと会えたのに一晩にして別れを告げなければならなかったし、今までアウラーとの子だから一層の愛情を向け常に側にいて育ててきた。もう、双子は自分の半身と言っても過言ではない。だからこそ、答えが出ない。


 「...少し...もう少しだけ...時間が欲しい」


 青年の澄んだ意志の強い目を真正面から見据えることができず、アンは背中を向けてそう呟く様に言った。


 「もちろんや......せや、その日記は...アンさん、あなたが持つべきやー思うねん...うん...うん!大事にしてや!この日記の事はおいとアンさんだけの秘密や...きっとこれをアウラーさんが直接託したんも、ここへ一緒に来るのをおいに選んだんも、アウラーさんがおいを信頼してくれたんやー思うねん。だから...どんな結果でもや、おいにドーンと任せて欲しいんや。おいかて、アウラーさんから小さい頃からアンさんの話聞いて、ずっと憧れてん。やから、まぁ...さっきの話を重たー考えんでもいい!アンさんが決めたことやったらおい、それを受け入れるわ!うん!それがええ!じゃ、おい、双子ちゃんと遊んでくるわ!」


 初めは青年には似つかわしい暗い顔をしていたのに、話しているうちに何かが吹っ切れたのかいつもの元気な笑顔で元気いっぱいに声を張り上げ、そう言い残すとアンの家の方へと駆け出していった。

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