共同戦線5
カロとクーアは祈りの間の入口まで案内されて、黑とアンが中で待っているとニフリートに言われて中へと入っていた。もちろん、そこでニフリート達とは別れた。
クーアは入って直ぐ、スピカとウンディーネのクリスタルの側で横になっているアンを見つけると焦った様子で駆け寄る。
「ばーちゃん!!ばーちゃん!!」
眠っているアンの両手をクーアは掬い上げる様に包み込んで握り締めると泣きそうな顔で覗き込み、そう叫ぶ様に呼び掛ける。それに反応してぴくっと瞼が動いてアンは重たそうな瞼をゆっくりと上げてクーアを見ると、少し呆れた様な嬉しい様なそんな笑みで見返す。
「...騒々しい、耳が痛いわ。少しは成長したかと期待したが...まだまだじゃな...全く...でもまぁ...無事で何よりじゃ...よぉー帰って来た」
顔色が良くなく力無く話すアンだったが、クーアを見つめているうちに赤みがほんのり色付き優しい顔になって、クーアに握られていた手をするっと抜くとクーアの手の上に持って行きポンポンっと軽く握ってから、弱々しく少し震えた片手を伸ばすと小さい子あやす様にクーアの髪を優しく優しく撫でた。
「ばーちゃん...」
髪を撫でるアンの手を片方の手でクーアはそっと包み込み、何か言おうとするのをグッと堪えて飲み込んで、涙目のままにこっと笑う。
「そうだ...ばーちゃん、ヴァンに会ったよ」
クーアは首に下げていた青雪石のティアドロップ型のネックレスを、もう片方の手で摘んでアンに見せる。
「...そうか...アウラーの...子孫に会ったんじゃな...そうか、そうか...懐かしい」
アンは誰かを思い浮かべて懐かしんでいる様で本当に穏やかな顔で、クーアは胸が急に締め付けられる様な変な錯覚をして目が潤んだ。ネックスを外して髪を触っているアンの手を取ると、アンにネックレスを渡してその上から手を握る。
「...ねぇ...ばーちゃん...こんな時だけど...こんな...こんな時だからこそ、ばーちゃんの昔の話を...聞かせてくれないかな?」
クーアは漠然とだがアンとの別れが近い事を感じていて、もっとアンの思い出を記憶しておきたいと思ったのだ。
それが余計に悲しい気持ちで溢れて眉を寄せたが、無理に笑顔を作って涙が溢れそうになるのを必死に堪えた。
「こんな年寄りの話...」
アンはクーアの苦しそうな笑みを見て仕舞えば、ずっと避けていた話を思い出してもう覚悟を決めようと一旦言葉を切った。
「...そうじゃな...アウラ...お前の母の事もあるしの...もう話してもええじゃろ...今が、その時なんじゃろうな...すまんが、起きるのを手伝ってくれんか」
クーアは涙を袖で拭ってから小さく頷いて、アンの背中を支えながら上半身を起こす。
二者の雰囲気に入り込めずに遠くから眺めていたカロは、ふっと視界に影が落ちて初めて黑が自分の頭上の上を飛んでいるのに気がつき、視線を黑へ移動させる。
そんな長い時間離れていたはずではないのに、もう何年も会っていない感じがしてすごく懐かしくて嬉しくて、クーアの雰囲気に飲まれたのかもらい泣きしそうになったカロは顔をくしゃっと歪めた。




