共同戦線1
「おっし!じゃーまずは、キュアノス向かうで!準備せぇ!!」
風神集は、ヴァンの合図に一斉に声をあげて早々に部屋を出て行った。カロ達は何故、急にキュアノスなのか意味が分からずに、ただ目の前の光景を眺めているしかなかった。
「なんや、鳩が豆鉄砲くらったよーな顔して」
部屋にはヴァンしか残っておらず、ヴァンは椅子に座り直して腕を組んでカロ達を見つめながらそう言って、意地悪そうな笑みを向けた。
「...何故、今、キュアノスに向かう必要があるの?」
クーアは雰囲気が暗く怪訝な顔をして、睨む様な視線をヴァンに送っている。
「なら聞くが、お前さん達はなして、ミニエーラへ行った?」
「そ、それは...」
「フリークの空賊に、ウンディーネ様が居ない時を見計って入り込まれたんやろ?」
「...そ、そうだけど...そもそもは、ウンディーネ様からの指示で...」
「...なーんも知らんのかいな...ウンディーネ様の目的は、狼獣人の武器を手に入れること、わいらの戦力、や」
「え?え?...それじゃぁ、ウンディーネ様は......事の顛末を知ってたってことじゃないか!」
クーアは信じられないという顔をして、ヴァンに食ってかかる。
「...ちょ、落ち着け、クーア。別に、ウンディーネ様が悪いんやない。アンさんの予知や。わいらはその予知で、未来のほんの一部を知ってただけや...まぁ、アンさんがなんで...お前には教えんかったんかは...分かるきーするけどな」
「そ...僕は...」
「お前、きーついてたんやろ。知らせ来てるから知ってるんやで。この旅に行くの、渋ったそうやな。クーア、お前...アンさんが死ぬかもしれんて、勘づいとったんちゃうんか?」
クーアはビクッと身体を強張らせ、反論できずに微かに泣きそうな顔で、視線を泳がせて下を向いた。
「まぁ...けどや...アンさんはまだ生きとるんや...予知はまぁ...今の段階では少しずつズレを生じとる。だからと言って、アンさんの予知が外れたなんて、きーたことないしな。教会...空賊が攻めて来るんも、時間の問題やー思うねん」
「でも、何故、フリークの空賊は、ここを狙わずにキュアノスを狙うんだ?」
クーアも黙ってしまうし、他の面々も気まずそうな顔で言葉を控えている。場の空気的に、カロしか言えなかったのである。
「わいら自警団だけで、どー考えたって勝てないんはあちらさんも分かってんねん。原動力が少ないはほんまやねんから、ほっといてもジリ貧して自滅するってな。まぁ、相手にされてへん。わいらも、カロ達が加わっても、向こうにはシルフ様もおるんや...正直厳しいかいなーと。わいらの国をどうにかしたいんは、ここにいるみーんな思っとる、けどな...仲間をみすみす死なす訳にも......やっぱな...いかんやろ?だから、ウンディーネ様から打診された時、勝算あるならって...キュアノスの方助けたい、思うてん。散々、仲間を奪われて敵対して...もう、できるなら...はよー、こんなん終わりにしたいねん。だから、ウンディーネ様の案、乗ってん。三国が協力し合い有力な人材を集めて、わいらの敵を今度こそ殲滅しよーってな...まぁ、試したんは悪いけど...こっからは...生きるか死ぬか...そういう戦いになる...覚悟が必要...思うてな」
そう言ったヴァンは真剣そのもので、瞳には強い意識を感じた。カロ達は覚悟がまだ足りていなかったと反省して、少しの間顔を下に向けた。
そして、顔を見合わせた時にはもう、迷いはない覚悟ができた、そういう顔をしていた。




