闇に落ちた街4
飛行船はグングンと上昇して、広がる雲海をすぽっと抜けた。
そこには、真っ青な空と巨大な空中都市が浮いていた。下部は大きなプロペラなどの機械部品が剥き出しで、その上に島が乗っかったようなどこかアンバランスさを感じる。
島は下部とは違い近代化されておらず、どこか外国の長閑な田舎な風景を思い浮かばせた。
外壁が濃厚なハチミツ色の石造り、窓枠やドアはセージグリーン色に塗装されていて、イギリスのコッツウォルズ地方の家を連想させる。その家々が、中央の一際大きな家を基準にして円を描く様な並びに建っている。
中央の大きな家は、もこもこに刈り込まれた茅葺き屋根が特徴的な、可愛らしい建物だ。
そして、何より空中都市というのに、全体的に美しい萌葱色の森林が広がり、みずみずしい滝と湖もある自然豊かな島なのだ。
飛行船は下部の機械部へと近づいていく。
飛行船が近づくと自動的に閉ざされていた空間が口を開ける様に開く。吸い込まれ様に飛行船はその中へと入っていった。
中はのっぺりとした鉄板のようなもので覆われているが、この飛行船が一機余裕で入るような大きな格納スペースとなっていた。
飛行船が停止するとヴァンに道案内されてカロ達は船を降り、その場にあった扉が鉄格子で左右に開閉するレトロなエレベーターに乗って上の生活スペースへと向かった。
中央の家へと通され、可愛らしい艶のある丸みのある木材でできた大きなテーブルに、カロ達一同、ヴァン、バクサ、黒い眼帯を左目にしたスキンヘッドの大男、船には乗っていなかったが、ヴァンと少し雰囲気が似ていて胸元辺りまである綺麗な白髪、桜色の瞳の下に小さな涙黒子が右側にある見目麗しい小さめの少女がヴァンの肩に寄りかかる様に座っている。色白で線が細い体つきだが、少し顔色が悪いようにも見え病弱な雰囲気を感じさせる。
「よーこそ、わいらの隠れ家へ。ここにいるんが、幹部?ゆーか、活動の時に指揮、命令を担当する人間や。まぁ、別にえらいわけやないから、気軽に接してな。あぁ、そや、自己紹介まだのんもいるやんなぁ。まず、スキンヘッドがデニズ、わいの隣にいるんは妹のフルールや。あーちょいとわいの妹、体調崩しててなぁ、今はこんなやけど、堪忍なぁ」
フルールはヴァンからゆっくりとした動作で少し離れ、軽く頭を下げる。
「...こほこほ...ヴァン兄さんの補佐しとります。お見苦しいとこ見せて、すんまへん」
「そんなこと。...気にしないで、無理しないで」
フルールの正面に座っていたカロは、何処かおろおろした態度でそうフルールへ言った。
カロの言葉が嬉しかったのか、フルールは嬉しそうに微笑み、小さく頷くとまた、ヴァンの肩に寄りかかった。フルールの頬は少し赤みを取り戻した様にも見える。
「...カロ、顔がにやけてるよ。クロ君に見られたら、怒られるよ」
カロの隣に座っていたクーアが、ぼそぼそと小声で、カロへ耳打ちしてきた。
カロは驚いたような顔をして、クーアを横目で見た。
「そ、そんなこと。な、何、言ってんだよ」
カロはすぐさま否定する様に、小声でしかも早口で、クーアにそう言ったが、何処か挙動不審さがあるのは隠せていなかったのだった。




