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君と私と竜と白と黒  作者: 雨月 そら
偽りと真実と
34/102

偽りが崩れる時4  

 ニフリートが立ち去った部屋は静まり返り、黑はアンの顔を見つめた。

 今の所は安定しているのか、少し顔色もいい。

 暫く静寂の時が流れ、アンに変化があった。瞼がぴくっと動いたのだ。それからそれほど経たぬうちに、アンは目を開いた。その瞳は色のない真っ白な瞳。


 「アン!」


 「.........そ、その声は......()()()様...?」


 「...その名で呼ぶのは、アン、君くらいだよ」


 「...そ、そうですか...わしは...」


 「アン!!無理は禁物だよ。寝てなさい」


 よろめきながら起きあがろうとするアンを、黑は声で制する。


 「...そ、そうですか...」


 「身体の方はどう?痛い所はない?」


 「そうですね...今の所は。ただ、疲労感はありますか」


 「...そう。なら、寝てなさい」


 「...スルト様、そういえば、()()()()様は、お目覚めになりましたか?」


 「...シンモラは、()()()目覚めていない。このままでは、世界は崩壊してしまう」


 「...神魂...()()()のままですか」


 「そう。()()()での目覚めは、いつなのか。今の仮初めの身体が、いつまで持つか...」


 「...そういえば、スピカは?」


 「......原因が分からないが、ウンディーネと一緒に、結晶体の中で眠ってる」


 「...そうですか...それだと、結界は?」


 「それは、問題なく作動してる」


 「なら、取り敢えずは大丈夫ですね」


 「...多分。ロキは、カロ達を連れ去ったから、まだこちらへ攻め入っては来ないとは思う。今は、ニフリートがそれに向けて動いているはず」


 「...そうですか。なら、安心しました。後は、クーアと最後の別れができれば、わしは思い残すことはないです」


 黑は言葉に詰まった。じっと、失明して視線の合わないアンを見つめた。


 「...そんなこと、言うな」


 そう言った、黑の声は悲しみが帯びていた。


 「...スルト様、我々は、いつしか死を迎えるんですよ。でも、わしは、クーアが戻ってくるまでは頑張りますよ。約束ですから」


 「...そうだね。それにしても、いつも通りに敬語はなしでいいのに、アンは律儀だね」


 「...そうは、いかないですよ。皆が忘れ去ったとしても、この世界を()()()()なのですから。皆の手間、ああ喋っていただけで、敬意は常にありましたよ」


 「...アンは会った時と、そういう所は変わらないね」


 「こうみえて、私は律儀なんです」


 「...そうだね...変わらない。安心するよ。...スピカが、あのエルフの少女と契約して、世界が修正を施した時も、アンだけは変わらなかったからね」


 「...ええ。不思議とわしだけは、修正対象にはならなかったんですよね」


 「...それは多分、夢予眼(プレシエンツァ)のお陰かもしれないね。あれは、神族(テオス)からのギフトだかね」


 「...そうなんですね。それで......ん...ふぅ」


 辛そうな表情をするアン。


 「疲れたんじゃない。まだ時間はあるし、少し休みなよ」


 「...そうですね。お言葉に甘えて、少し休みますね」


 ゆっくりと瞼を閉じるアンを、異変が起きないかじっと見ていた黑だが、穏やかな小さな寝息をし出したのを見届けると視線を外した。

 それから、黑は上の方を向く。


 (カロ達は、今頃どうしているだろうか...)


 そう思いながら、カロ達がいる方向へ視線を向けたのだった。

 その時、黑の機械の身体から小さな破片が溢れ落ちた。偽りで象られた身体も、もうすぐ崩れる予兆のように。

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